
◆YBCルヴァン杯▽1次リーグ第5節 浦和2―1川崎(24日・埼玉スタジアム)
【浦和担当・星野浩司】 ピッチ上に“通訳”がいた。浦和MF平野佑一は身ぶり手ぶりを交えながら、外国籍選手と言葉をかわす。「試合中は大きい声援をいただけるので聞こえないけど、ハーフタイムや休みがある時に外国人選手としゃべって、他の選手に伝えてる。つなぎ役は意識してます」。得意の英語をフルに生かし、プレーにつなげた。
浦和の前線は、1トップにギニア代表FWホセ・カンテ、左MFにオランダ出身のブライアン・リンセン、右MFはスウェーデン出身のダヴィド・モーベルグ。そして、トップ下には17歳のMF早川隼平(浦和ユース)が入った。国籍も年齢も考え方も異なる中、試合中のコミュニケーションは簡単ではない。ポジショニングやシステム、パスのタイミング。平野が、幼少期にインターナショナルスクールで培った英語で“橋渡し役”を担った。
例えば、カンテ、モーベルグ、早川の3人の関係性だ。後方から絡むことが多い右ボランチの平野は「右でデビッドがドリブルする時は周りに行かなくていいけど、相手のプレスがかかっている時は近くにいてほしい、と(モーベルグから)伝えられた。隼平にも『デビッドにボールが入った時、俺が遠くにいる時は、絶対にデビッドの近くに行ってあげて』と伝えた」。鋭いドリブル突破を持つモーベルグの特長をより生かすため、その考えを全体に共有した。
外国籍選手の心理を理解したプレーも光った。平野は中盤から前線へ縦パスを何度も送り、速い攻撃のスイッチを入れた。「外国人の選手は『もたもたしないで早く(パスを)刺せよ』みたいな雰囲気をすごい感じる。刺してあげて取られたら、なんか言い返せるのかみたいな感じで僕もしゃべれる。パスを出せないことには文句しか言われない。今日は刺しまくることを意識していた」。モーベルグが右サイドに張れば、早めにパスを送って1対1の状況を作り「久しぶりにあいつのクネクネしたドリブルを見れて、すごくうれしかった」と笑顔を見せた。
得点にもつながった。0―1の後半6分、平野が相手DFの裏へ縦パス。リンセンが競り合ったこぼれ球を早川、モーベルグとつなぎパスを受けたカンテが同点ゴールを奪った。「外国人選手が前にいたので、ちょこちょこでつないで行くより、一発バ~ン(と縦パスを送り)、セカンドで拾ったり。ドリブルは両サイドできるから。そういうのは意識した」と話した。
リーグ戦、3度目の優勝を飾ったACL。ボランチの主力は岩尾憲と伊藤敦樹が君臨する。サブが多かった平野だが、メンタルは大きくブレなかった。
「チームが勝っている時は変える必要はない。仮にチームが負けててメンバーを変えなかったとしても、選んでいるのは監督さん。そこに文句を言っても、監督さんも人間だし、好き好みがあるので、そこに左右されると自分の人生がダークになるなって思うので。けっこう原点にいつもかえります。サッカーを楽しむこと。一瞬悩むけど、切り替えは速いです」
20日のリーグ・福岡戦で後半途中出場から縦パスで決定機を作るなど、持ち味を発揮している。スコルジャ監督も「平野はクリエイティブであり、サッカーを読む目も持っている非常に興味深い選手。(福岡戦の)終了間際の馬渡(和彰)へのパスはトップクラスだった」と高く評価する。
この日は福岡戦からスタメン11人を総入れ替え。川崎に逆転勝利でB組首位に立った。「チームの底上げというか、チーム力を見せれた」。存在感を増す平野が、J1制覇にむけてレギュラーを脅かす。