「相手が就寝中かどうかもわかる」 居場所から滞在時間、バッテリー残量まで公開しあう若者の心理

「相手が就寝中かどうかもわかる」 居場所から滞在時間、バッテリー残量まで公開しあう若者の心理

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  • 更新日:2022/06/25
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時間を有効に使えるアプリに若者たちは注目する(gettyimages)

好きな人から、LINEの返事がぷつりと途絶えた。

「どうしたんだろう」「何か言っちゃったかな」

【画像】ゼンリーでまる見えになった記者の「足取り」LINEを開いては閉じ。つかない既読を確かめる。ときには“追撃”メッセージを送ってしまったり。そうやきもきした経験は、誰しも一度や二度はあるだろう。

だが、今どきのSNSを使えば、必要以上に不安にならなくて済むという。

「相手がいる場所や状況がリアルタイムでわかるんです」

日本大学芸術学部に通う女性(18)は、そのSNSのことをそう説明する。

見せてくれたのは、「Zenly(ゼンリー)」というスマホアプリ。画面にはシンプルな地図が表示され、吹き出しのような「ピン」が現在地を示す。

居場所の把握だけならグーグルマップのような地図アプリで十分だが、このアプリが若者たちに支持されるポイントは、女性が言うようにリアルタイムの「可視化」だ。使っているユーザー自身の情報だけでなく、フォローしているユーザーの居場所やその場所での滞在時間、移動スピード、さらにはスマホの充電状況まで、あらゆる情報が“リアル”で把握できるというから驚きだ。

女性は、さらっと言う。

「LINEの返事がこないときは、ゼンリーを開きます。相手が就寝中かどうかもわかるので、寝てるんだったら私も寝るか、って。気楽です」

■彼とだけ「共有」したい

待ち合わせ場所まであとどのくらいで着くのか予測したり、暗い夜道を歩く相手を見守ることだってできる。だが、あまりに共有される情報が多いため、不特定多数とはつながらない。

「彼とだけ使っています。互いに過剰に見ないというのが暗黙の了解です」

相手の状況が想像できるようになり、必要以上にLINEを開くこともなくなったという。

同学部2年の別の女性(20)もゼンリーを活用する。以前は、「ちょっと仲の良い」友達も含め50人ほどとつながっていたが、今では中高の友達12人だけと静かに共有しあっている。

「こんなにいらないなと思って、高校を卒業したときにアプリを一度消しました。今は、一人で出かけたときに近くにいたら合流できるくらいの仲の良い友人とだけつながっています」

友達のバイト先に用事があるときは、せっかくなら友人が働いているときに行きたい。そんなときは、ゼンリーを確認する。相手のシフトをわざわざ聞く必要がないため、気軽に立ち寄れて気楽だという。

若者たちが「気楽」と表現するこうしたつながり。だが、好きな相手が「何してるかな」と黒電話の前でたたずんだり、ポケベルで連絡し合えるだけで嬉しくてたまらなかった大人世代にしたら、ここまでつながってしまうことには、驚き以上に訝しむかもしれない。

「ずっとつながっているのは良くないよ」

とは、ゼンリーの仕組みを聞いた男性(52)の言葉。世の中には、知らないほうがいいことや、会えない時間が育むものがある、と主張する。昭和をたくましく生きた世代なら、そう考える人のほうが多いのではないか。

■「状況わかる」が効率的

だが、こうしたつながりは、時間の考え方が変わった、とも言える。

「インターネットには様々な情報があふれていますが、一方で自分の時間は限られている。好きなことに時間を費やすには、取捨選択が不可欠です」

そう説明するのは、アプリ分析会社「App Annie Japan」代表の上村洋範さんだ。相手の行動がわからずにやきもきするより、ある程度状況が掴めたほうが効率的。YouTubeやTikTokでショート動画が流行(はや)っているのも、タイムパフォーマンスを意識する心理があるという。

ゼンリーが生まれた背景も、ユーザーが時間を有効に使えるように、などの狙いがある。

ゼンリー社の広報担当者は、こう言う。

「スマホを使う時間を増やすのではなく、減らすことがゼンリーの目的です。自分の行動を自然に共有できるので、あえてSNSで発信する必要はありません。より多くの時間をリアルな世界での活動や友人との交流に使ってほしいと思っています」

(編集部・福井しほ)

※記事後編<<Z世代に広がる「察する」文化 SNS「共有」感覚に大人世代とギャップが生まれる理由>>に続く

※AERA 2022年6月27日号より抜粋

福井しほ

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