サウジ国営石油が18億円出資 テラドローンCEOとの間に生まれた共感

サウジ国営石油が18億円出資 テラドローンCEOとの間に生まれた共感

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2023/01/25

昨年5月にアップルを抜いて時価総額が一時、世界1位にもなったサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコ。同社のベンチャーキャピタルである「Wa‘ed(ワエド)」が、日本のスタートアップ「テラドローン」に18.5億円を出資した。

テラドローンはその資金を投じて子会社を設立し、現地の石油貯蔵施設のドローン点検を開始する。

サウジアラビアは 現在、経済改革計画「サウジビジョン2030」を掲げ、脱石油依存型経済を目指しているが、次期経済成長の柱であり、雇用創出につながる産業として注目しているのが、このドローンだ。

その計画の一環として、サウジアラムコは世界50社のドローン事業者を選定し、約1年半に及ぶデューデリジェンス(DD=企業調査)を実施してきた。最終的にわずか1社の枠を勝ち取ったのが日本のテラドローンだったのだ。

豊富な石油資源を持ち、政治的には独裁色の強いサウジアラビアとの外交は一筋縄ではいかない難しさがある。昨年7月には米国のジョー・バイデン大統領が石油増産を目的に訪問したものの、確約を得られず「手ぶら」での帰国となった。

そんななかでテラドローンは資金調達にまでこぎつけた。同社のCEOである徳重徹(とくしげ・とおる)は「相当な覚悟を持って交渉に挑んだ」と話す。どのようにサウジアラビア側とコミュニケーションをとり、交渉を成功させたのか。

「明治マインド」でプレゼン

今回のドローン企業選出のプロジェクトは、2021年10月に始まった。選ばれた50社がプレゼンを行い、それを通過した3社がDDに進むという流れだ。

テラドローンは、徳重をはじめ、欧州子会社で組織統括を担う29歳と35歳の若手社員がプレゼンにあたった。

しかし、プレゼンの席に座って早々、Wa‘edの投資担当者から浴びせられたのは「最近の日本企業はダメだ。昔は世界で闘える大企業があったが、いまは落ちぶれている」といったダメ出しの言葉だった。

これに対し、徳重は怯まなかった。

「馬鹿にされたら僕もカッとなっちゃって。『こっちはソニーやホンダのような企業をもう1回つくってやろうという気概で事業に臨んできたんだぞ』と言い返したんです。この姿勢がむしろ気に入られて、Wa‘edの担当者がその場に副社長を呼んできました。それでさらに議論が盛り上がりました」

--{両者の間に生まれた共感}--

テラドローンが最初のプレゼンを成功させた裏には、徳重の根底にある「明治マインド」が寄与したという。

「僕は明治時代をベンチマークしているんです。好きな偉人の1人が『京浜工業地帯の父』と称される浅野総一郎。彼は、安田銀行(後の富士銀行、現みずほフィナンシャルグループ)の創業者である安田善次郎の協力を得ながら、現在の川崎コンビナートをつくった。それもゼロから。そういう、国を創っていく明治という時代を生きた人たちが好きで、彼らのマインドが僕の基礎になっているんです」

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もう一度、ソニーやホンダのような世界的企業をつくりたいと願う徳重。そして、石油経済から脱却し、新たな産業とともに国を生まれ変わらせようとしているサウジアラムコ。チャレンジングな精神を持つ両者の間で、共感が生まれたのだという。

このようにして第一ステップのプレゼンをクリアしたが、「その後に行われたDDもシビアだった」と徳重は言う。

思いで共感しただけでは、もちろん選ばれることはない。膨大な事業計画書を作成しては、Wa‘ed側からの指摘に回答するという質疑応答が、約4カ月間繰り返された。

ドローンの知識や知見、財務状況、海外実績についての調査が長く続いた。長い時間をかけることで「やりきる力」を試された側面もあるのだろう。

「僕は複数回にわたりサウジアラビアを訪れて担当者にアプローチしました。経営者自らが、1年半という期間コミットする姿勢も評価されたのでは」と徳重は振り返る。

「日本基準のPMFでは見誤る」

2016年に創業し、オランダやベルギー、インドネシアで事業を展開してきたテラドローン。徳重は海外展開の難しさを次のように語る。

「何よりもPMF(プロダクト・マーケット・フィット=プロダクトがユーザーのニーズを捉え最適な市場で提供される状態)が難しい。よく言われる市場規模は、あまりあてにはなりません。

ドローン点検に関して言えば、日本でやっていることを持ち込んでも、現地ではハシゴを使って点検をしたりしていて、効率化しようという考え自体がない場合もある。マインドセットを変えるところからスタートしなければいけないことも多々あります。

また、特に新興国では、社員にしても顧客にしてもウソをつくことがあり、何が本音か見極めなければいけない。日本基準でPMFを考えると、間違いなく見誤ります」

テラドローンでは海外企業のM&Aも行ってきたが、出資前に現地で社員を1カ月間派遣して、上層部の仲違いがないかなどまで調べるという。一見、次々に海外へ進出する攻めのスタートアップという印象を受けるが、攻守のバランスもきちんと備えている。

ここ最近、日本ではアフターコロナを見据えたスタートアップの海外展開も増えている。数々の困難を乗り越えてきたテラドローンのエピソードは、その好例として参考となるのではないだろうか。

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