もしかして「冬季うつ病」? 「寝ても寝ても眠い」「甘いものを欲する」通常のうつ病との違い

もしかして「冬季うつ病」? 「寝ても寝ても眠い」「甘いものを欲する」通常のうつ病との違い

  • AERA dot.
  • 更新日:2022/11/26
No image

※写真はイメージです(Getty Images)

寒さが厳しくなってくるこの時季、気分が落ち込む、疲れやすい、十分寝ているのにまだ眠い、甘いものを無性に食べたくなる、人と会うのがおっくう……といった症状に悩まされていないだろうか。もしかしたら「冬季うつ病」かもしれない。特徴的な症状やセルフケア、治療について専門家に聞いた。

【チェックリスト】もしかして「冬季うつ」?*   *   *

SE(システムエンジニア)の鈴木真希子さん(仮名・28歳)は、2年前の11月ごろから出勤しようとするとめまいがするようになった。頭痛や吐き気を感じることもある。週末は15~16時間も眠り続けてベッドから起き上がれず、友人から誘われても出かけるのがおっくうで断ることが増えた。食べても食べても満たされず、家の中に食べるものがなくなると、夜中にコンビニに駆け込むことも。出勤できない日も多くなっていった。仕事で大きなストレスを感じているわけではなく、会社にはできれば行きたい。上司のすすめで精神科を受診したところ、冬季うつ病と診断された。

冬季うつ病と通常のうつ病との違いについて、「冬季うつ外来」を実施している朝がおクリニック(東京都日野市)院長の工藤吉尚医師は、「過眠と過食」と話す。

「気分の落ち込みなど、うつ病の主な症状にはほとんど違いはありませんが、違いが出やすいのが食事と睡眠です。通常のうつ病は、不眠や食欲の低下などが現れやすいのですが、冬季うつ病では逆に寝過ぎや食べ過ぎになるのが特徴的です。そのほか、一度発症すると毎年繰り返しやすいのが特徴で、20~40代の女性に多いという報告もあります」

冬季うつ病の主な症状には、次のようなものがある。

・気持ちが落ち込む
・今まで楽しんできたことが楽しめない
・ぐったりして疲れやすい
・活動量が低下
・眠気が強く睡眠時間が長くなる
・甘いものが欲しくなる

冬季うつ病は「季節性感情障害」(季節とともに症状が出たり消えたりするうつ病)の一つで、秋の終わり、または冬のはじめに発症し、春と夏の間に消失する場合に冬季うつ病と呼ばれる。1984年に精神科医のローゼンタールらにより「冬季うつ病」として初めて報告された。病気の発症時期として季節性があるのがポイントで、明らかな心理的原因となる出来事がないこと、少なくとも2年間冬季に症状が出ていることが診断の条件だ。

主な原因と考えられているのが、日照不足だ。

「うつ症状は脳内物質の一つであるセロトニンが不足すると、出現しやすくなります。セロトニンは、日光を浴びると分泌されやすくなるため、日照時間が短い冬にうつ症状が現れやすくなるのです」(工藤医師)

冬季うつは、高緯度地域すなわち北国に多いとされている。しかし低緯度地域(南国)でも天候が不安定になりやすい場所では発症率が高くなる。また、日本で実施された調査でも、秋田市や札幌市など日照時間が短い地域ほど、冬季うつ病になる危険性が高い人の割合が多いことが報告されている。

さらに女性は男性の4倍冬季うつ病にかかりやすいと言われ、特に20~40代の女性に多いという報告があり、注意が必要だ。

「思春期や出産前後、更年期、老年期など、女性ホルモンのバランスが崩れやすく、心が不安定になりやすいライフステージにいる人は、気をつけたほうがいいでしょう」(工藤医師)

また工藤医師は「コロナ禍の生活習慣の影響で、冬季うつのような症状を訴える人が増え、高校生や大学生からの相談も多くなっている」と指摘する。

「リモートワークやオンライン授業が普及したことで室内での作業が続き、太陽に当たる機会がさらに減少していることが影響している可能性があります」

■照明を明るくするだけでも予防策に

自分が冬季うつかどうかを知るには、気分や睡眠が季節によってどれだけ大きく変動するかがわかる「Seasonal Pattern Assessment Questionnaire (SPAQ)」というチェックリストが目安になる。

合計点が7点以下であれば季節変動が「正常範囲内」、8~11点であれば「冬季うつの前段階」、12点以上は「冬季うつの可能性がある」とされている。

冬季うつの前段階または、可能性がある場合、日常生活ではどのような点に気をつければいいのか。工藤医師に五つのポイントを挙げてもらった。

(1)太陽の光を浴びる
日照時間の短い時期はできるだけ屋外に出て、日光に当たること。仕事などの関係でそれが難しい場合は、自宅や仕事場の照明を明るいものに取り換えることも予防策になる。

(2)トリプトファンを含む食材を意識する
過食は、セロトニン不足を補おうとする行為だと考えられる。このため、セロトニンの生成を促すトリプトファンを含む食材を意識することが大事だ。

<トリプトファンを含む食材>
肉類、魚介類(ブリ、イワシなど)、豆腐、のり、バナナ、牛乳、チーズなど

<トリプトファンの吸収を助ける食材>
ビタミンB6(マグロ、ニンニク、鮭、ゴマ、抹茶など)やビタミンB12(青魚、カツオ節、イカ、レバーなど)

うつ症状が軽快すれば過食もおさまるので、無理に抑制したり、自己嫌悪感を持ったりする必要はない。

また、

(3)ウォーキングなどの運動をする
気分が落ち込んでいたり、イライラに悩まされていたりするときには、ウォーキングなどの運動が効果的だ。活発な運動によって、気持ちをコントロールする神経伝達物質の一つ「ドーパミン」が分泌される。日光のもとで早歩きすると、さらに効果的に。

(4)自分の感情を話せる人を見つけておく
一人で悩んでいると、気持ちの落ち込みが余計に増大するため、気持ちを誰かに話してみることが大切。自分の気持ちを話せる相手がいなくても、誰かとおしゃべりするだけでも効果的。

(5)睡眠スケジュールを安定させる
冬季うつ病の発生には「体内時計」の乱れも深く関係していると言われている。日照時間は体内時計を調整する作用があるため、日照時間が短くなる冬は、「時差ぼけ」のような状態に近くなる。(1)~(4)を意識した生活を送っても、睡眠スケジュールが不規則な生活だと何もかもが乱れてしまうことに。おおよその就寝時間・起床時間を決めて睡眠スケジュールを安定させよう。

こうした対策をしても症状が改善しない場合や日常生活に大きな支障がある場合、治療が必要となる。

治療は、通常のうつ病と同様に「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」や「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」といった抗うつ薬が中心となる。

また、冬季うつ病患者の6~7割に効果があると言われているのが「高照度光療法」だ。毎日特定の時間帯に数千~1万ルクスの強い人工光を1時間程度浴びる治療で、冬季の日照不足を補う。

そのほかネガティブな考えをポジティブな考えに置き換える「認知行動療法」も冬季うつ病の回復や再発予防に効果があるという報告がある。

「冬季うつ病は季節性とはいえ、長引くと1年の半分近くは調子が悪い状態が続き、睡眠が乱れたり、体重が増えたりするほか、仕事ではコミュニケーションがうまくいかず、生産性が落ちるなど生きづらさを感じます。寒くなってから気分が上がらない、寝ても寝ても眠いといった症状が2週間以上続くようであれば、精神科や心療内科への受診を検討してみてください」(工藤医師)

(文/中寺暁子)

中寺暁子

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加