怖かった、という記憶は確かに残っている。カブスの鈴木誠也外野手(28)はメッツの千賀滉大投手(30)とのメジャー初対戦を翌日に控え、あわや頭部死球への危機一髪のボールをかわした過去を明かした。

「あまり打った記憶はないですね。頭の上に放られたのしか覚えていない。だから会ったら常々、死球だけはやめてください、といっている。あんな速い球がここ(顏や頭)にきたら、もう……」
5月23日の試合後、翌日に控えた千賀との対戦について聞かれると、少し笑みをたたえながら、そう答えた。2019年6月7日のマツダスタジアム、0-4の六回1死、2ストライクからの1球だった。154キロの直球が抜けて、顏付近に。かろうじて避ける誠也に千賀は「ごめんなさい!」と口が動いたようにテレビでは映った。
2021年の東京五輪では侍ジャパンのメンバーとして、金メダルを獲得した。5月24日は4年ぶりの対戦。四球、左越え二塁打、捕邪飛と3打席で2打数1安打1打点だった。
千賀は5四球を与えるなど制球に苦しんだマウンド。5回6安打3失点と粘るも3敗目(4勝)を喫した。鈴木との対戦シーンについて問われると次のように振り返った。
「きょうは正直、本当にボールがうまく操れていなかったので、誠也との対決だ、という楽しみな部分より、とにかく試合を壊さないようにというふうに考えていて、そこまで楽しむ余裕はなかった」
メジャー1年目。千賀に限らず、誰もが日本と違う環境に順応するために時間がかかる。長距離移動と米国内で最大3時間の時差。土地ごとに変化する気候にも対応しなければならない。その過程で千賀もまた、毎日を大切な経験として過ごしている。
「自分が疲れているのか、疲れていないのかも正直、分かっていないこともある。試合が終わって、長距離を移動して、次にまた試合というのを繰り返している。(コンディショニングが)難しい部分もありますけど、それも経験と思いながら、とにかくいろいろなことを言い訳にしないように。しっかり自分で戦っていける準備をする」
両チームの次回対戦は8月7日から、メッツの本拠地シティーフィールドでの3連戦。所属の地区は違うものの、シーズン終盤でポストシーズン進出がかかる時期だ。お互いが必勝を期す緊張感の高まる中での再戦が今から楽しみだ。
(文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当)