「半沢直樹」シリーズ待望の新作! 『アルルカンと道化師』が前日譚になった理由とは?

「半沢直樹」シリーズ待望の新作! 『アルルカンと道化師』が前日譚になった理由とは?

  • マイナビニュース
  • 更新日:2020/09/16
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●「等身大の銀行員の話に戻したかった」

池井戸潤氏、ドラマ『半沢直樹』成功の要因は「俳優陣の演技力」 続編でさらに脱帽

7年ぶりのドラマ化で大きな話題になっているTBS系日曜劇場『半沢直樹』。池井戸潤氏による『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』を題材にした新シリーズは、主人公・半沢直樹が巨大な敵に挑む姿が、多くの人々の共感を得ている。ところが、「半沢直樹」原作シリーズ待望の最新作『アルルカンと道化師』は、2004年に刊行されたシリーズ第一作『オレたちバブル入行組』の前日譚となる話だ。なぜ新作は半沢直樹の原点となる地点に立ち戻ったのか――。池井戸氏に話を聞いた。

現在、世間の大きな注目を集めているドラマ『半沢直樹』では、堺雅人演じる主人公・半沢直樹が、東京中央銀行から出向した東京セントラル証券での活躍と、返り咲いた銀行の花形と言われている営業第二部次長として、巨大な敵と立ち向かう姿が描かれている。

そんななか、池井戸氏は新作として、半沢が大阪西支店の融資課長として奮闘する『オレたちバブル入行組』の前日譚を描いた。「『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』とで話が大きくなりすぎてしまったので、本来の「半沢直樹」像である等身大の銀行員の話に戻したかったんです。『銀翼のイカロス』では、半沢は本店の第二営業部の次長という立場になっているんですが、そのまま続編を書くと、否が応にもさらに話が大きくなってしまうので」と説明する。

「アルルカンと道化師」では、大阪西支店の融資課長である半沢が、美術系出版社の老舗に持ち掛けられた大手企業による買収案件に隠された策略に抵抗していく姿が描かれる。

物語のキーとなるのがコンテンポラリー・アートだ。池井戸氏はこの題材について、「ある編集者が画集をくださって、アンドレ・ドランの『アルルカンとピエロ』という絵が目に留まって。以前石丸幹二さんと山田孝之さん主演の『ペテン師と詐欺師』というコメディ・ミュージカルに行ったことがあり、タイトルの付け方がいいなと思っていたんですが、この絵を見たとき、『同じようなタイトルのミステリーが書けそうだ』と直感的に感じたんです」という閃きがあったという。

池井戸氏の作品は、これまでにも何作も映画化やドラマ化がされてきたが、物語を書く際、映像化というのは意識しているのだろうか――。「映像化されるかもしれないという気持ちはありますが、それを意識していると自由に書けないので、基本的には気にしていません」と明瞭に答える。

一方で、作品の注目度が集まれば集まるほど、自身のなかでのチェック項目は増えていくという。「映像化されるかどうか、というよりも、自分で納得できるかどうかが重要。『これなら世に出しても大丈夫だ』と思えるところまで引き上げられたら成功ですよね。その先、作品が売れるかどうかは分からない。なにより自分のなかで納得することが一番大切なんです」。

●当初は渡真利忍を主人公にしたスピンオフとして執筆

池井戸氏と言えば、大ベストセラー作家である。出版する作品への注目度は高い。小説家としてデビュー以来、スタンスは変わっていないというが「チェック項目は非常に増えた」と変化を述べる。

「小学生から80代のご老人まで広い読者の方に読んでいただいているので、とにかく読みやすさが大切だと考えています。ルビをふるのはもちろん、分かりやすく、ストーリーがサッと頭に入ってくる構成が必要ではないかと。それでいてしっかり読みどころがなくてはならない。そのために自分に課しているチェック項目は非常に多いです」。

どんなに書き進めても、自身が納得いかなければボツにする。

「実はこの作品も、半沢の親友である(ドラマでは及川光博が演じる)渡真利忍を主人公にしたスピンオフとして書いていたんです。150枚ぐらい書いたのですが、どうもしっくりこなかったので、残念ながらボツにしました。半沢を主人公にして、大幅に書き直したのが今回の作品なんです」と裏話を披露する。

いまとは違ったやや青臭い半沢が、自身の正義のために突き進む姿は、非常に清々しい。一方で、『銀翼のイカロス』以降の半沢の姿も見たいのがファンの願いだろう。「もちろん書いていくつもりはあります。でもその気持ちと、なにを描くのかは別問題。いまは、その都度自分のなかで興味が持てそうなテーマを探している段階ですね」と未来に思いを馳せる。

まずは『アルルカンと道化師』。池井戸氏は「ミステリー仕立ての物語になっていますが、これまでのシリーズ同様、巨大な敵と戦ってやり込めるお約束もあります」と見どころを語ってくれた。

■池井戸潤
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。‘98年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー、2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞、2011年『下町ロケット』で直木賞を受賞。主な著書に「半沢直樹」シリーズ、「下町ロケット」シリーズ、「花咲舞」シリーズ、『空飛ぶタイヤ』『ルーズヴェルト・ゲーム』『七つの会議』『陸王』『民王』『アキラとあきら』『ノーサイド・ゲーム』などがある。最新作は9月17日刊行予定の単行本『半沢直樹 アルルカンと道化師』。

■「半沢直樹」シリーズ
池井戸潤による企業を舞台にした痛快エンタテインメント小説。主人公の半沢直樹が銀行内外の敵と戦い、数々の不正を暴く。『オレたちバブル入行組』(2004)、『オレたち花のバブル組』(2008)、『ロスジェネの逆襲』(2012)、『銀翼のイカロス』(2014)のシリーズ4冊は、メインタイトルを『半沢直樹』と改題の上、講談社文庫より刊行された。そして今年9月17日にシリーズ最新作『半沢直樹 アルルカンと道化師』を刊行。最新作はシリーズ第1作『オレたちバブル入行組』の前日譚となる。

磯部正和

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