厚生年金と国民年金の年金月額はいくら?

結婚しないで生きていくこと、が珍しいことではなくなっています。
内閣府の「令和4年版 少子化社会対策白書」によると、婚姻件数は1970年代前半の100万組超をピークに低下傾向に転じ、2020年は53万組を下回って婚姻率とともに過去最低を更新しました。
家族のかたちにとらわれず、個人が自由な生き方を選んでよいのだ、という価値観が浸透しつつあるようです。
しかし配偶者を持たない「おひとりさま」の生き方は、前提として経済的自立が必要です。
今回は40歳代、50歳代の単身世帯にフォーカスして、生涯をひとりで生きていくためのお金の準備状況を見てみましょう。
【円グラフ】40歳代と50歳代の貯蓄額を円グラフ見る。厚生年金や国民年金の年金月額はどれくらい?
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
40歳代・50歳代「おひとりさま」貯蓄額の平均と中央値
内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」によると、50歳時点における未婚割合は年々増加。
2015年時点で「男性24.8%・女性14.9%」だった未婚割合は、2020年時点で「男性28.3%・女性17.8%」と男女ともに約3%増加しています。
冒頭でも触れたとおり、おひとりさまにとって「経済的自立」はマスト。
老後に向けて準備を進めておきたい40歳代・50歳代おひとりさまの貯蓄状況はいかほどか、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」より見ていきましょう。
40歳代「おひとりさま」貯蓄額の平均と中央値

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」をもとにLIMO編集部作成
40歳代「おひとりさま」貯蓄額:平均657万円・中央値53万円
平均値:657万円
中央値:53万円
50歳代「おひとりさま」貯蓄額の平均と中央値

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」をもとにLIMO編集部作成
50歳代「おひとりさま」貯蓄額:平均1048万円・中央値53万円
平均値:1048万円
中央値:53万円
40歳代・50歳代ともに、平均値と中央値で大きな乖離が見られます。
平均値は、極端に大きい(小さい)数字の影響を受けてしまうため、ここでは、より実態に近いと考えられる「中央値」を参考値としておきましょう。
しかし、40歳代と50歳代ともに中央値は53万円。
当然ながら個人差があり、貯蓄額1000万円超の世帯が20%程度いる一方で、貯蓄ゼロのおひとりさま世帯は、40歳代で約36%、50歳代で約40%です。
定年退職時に受け取る退職金を老後資金に充当する予定の人もいるでしょう。しかし、一馬力で生きていくおひとりさまであれば、年代を問わず、ある程度まとまった資金を備えておきたいものです。
40歳代・50歳代「おひとりさま」毎月の支出額
40歳代・50歳代「おひとりさま」の平均的な月々の支出額も見てみましょう。
総務省の「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果」より、40歳代・50歳代単身世帯の平均支出は以下のとおりです。

出所:総務省「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果」
40歳代男性:17万75円
40歳代女性:16万5329円
50歳代男性:18万2088円
50歳代女性:17万6193円
男女ともに、40歳代から50歳代にかけてやや支出額が増えるものの、以降は年代を重ねるごとに支出額は減少していきます。
次章で確認する公的年金の平均月額と照らし合わせながら、老後に向けてどのように支出額を削っていけば良いのかも考えていきましょう。
「国民年金と厚生年金」受給額の平均月額
厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金・厚生年金の平均年金月額は以下のとおりでした。
国民年金の平均月額:5万6368円

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
【国民年金の平均月額(男女計):5万6368円】
(男性)平均年金月額:5万9013円
(女性)平均年金月額:5万4346円
厚生年金の平均月額:14万3965円

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
【厚生年金の平均月額(男女計):14万3965円】
〈男性〉平均年金月額:16万3380円
〈女性〉平均年金月額:10万4686円
※上記、厚生年金の月額には国民年金(老齢基礎年金)の金額を含む
ご確認いただいたとおり、国民年金と厚生年金では、大きな差が見られます。
自営業者やフリーランスなど国民年金に加入し、老後の年金が国民年金(老齢基礎年金)のみとなる人は、老後に向けて十分な備えが必要でしょう。
厚生年金の人は、まず「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」でご自身の年金見込額をチェックしてみてください。
厚生年金は、現役時代の年収や年金加入期間により決定する報酬比例部分が国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして支給される仕組みとなるため、非常に個人差がみられます。
あくまで現時点で確認できる見込みの年金額ですが、老後に向けてどれくらいの備えが必要かを考える上で重要な材料となります。
「リスク」とは何かを再考し、老後に向けて備えを
今回は40~50歳代の単身世帯の貯蓄事情や平均的な支出についてのデータを眺めてきました。
貯蓄額が二極化しており、同じおひとりさまであっても経済的に余裕のある人とない人の差が際立つ結果となりました。
あくまで平均ではありますが、老後に受け取れる年金額も支出額を賄うには十分ではなく、不足分は自助努力で準備することが必要です。
筆者はファイナンシャルアドバイザーとして資産運用のご相談を承っているのですが、この世代はリスクに敏感で元本保証にこだわる方が多いように感じます。
iDeCoやNISAなど国が税制優遇しながら資産運用を後押しする制度を整える以前に社会に出たため、若いうちから資産運用の情報に触れている下の世代と比べ、リスクとの付き合い方が慎重になっているようです。
元本保証の資産と言えば貯金ですが、長期のデフレ傾向が終わり、本格的な物価上昇が始まったとされる昨今、低金利の貯金だけで資産を持つことの方が実はリスクが高いのではないでしょうか。
資産運用の基本は「リスク分散」。この狙いは「世の中がどう変わるか分からないからこそ、様々な資産を持っておく」ということです。
おひとりさまの人生は、リスクを自分ひとりで引き受けます。せめて経済基盤だけでも、リスク分散を図っておくことが安心につながるのではないでしょうか。
参考資料
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年以降)」
内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書 3婚姻・出産の状況」
上田 輔