
神戸ストークスでプレーする23歳の金田龍弥。越谷との第2戦では3Pを3本成功させた【写真:B.LEAGUE】
前日メンバー外の金田龍弥、越谷との第2戦で3Pを3本成功
2023-24シーズンのバスケットボールBリーグにおいて、B2西地区に配属となった神戸ストークス(本拠地移転により、今季「西宮ストークス」からチーム名変更)は、7シーズンぶりとなるB1復帰に向けた戦いに身を置いている。東地区の2位につけ、悲願のB1昇格を目指す越谷アルファーズと18日、19日に行われた2連戦は、ディフェンシブな戦いが続く中、1勝1敗で終えることとなった。
19日の第2戦で、神戸は主力の外国籍選手であるジョーダン・キャロラインの欠場によりメンバー変更を強いられ、前日の第1戦ではメンバー外となっていた若手の金田龍弥がベンチ入りした。
金田は大阪学院大学出身の23歳。大学2年だった2020-21シーズンから2シーズンにわたって、西宮(現・神戸)に特別指定選手として加入し、大学4年の冬に当たる2022-23シーズンにプロ契約を結んだ。今季は大学を卒業して迎える、いわゆる「ルーキーシーズン」であるものの、すでにストークスでは4季目のプレーを迎えている選手だ。
神戸を指揮する森山知広ヘッドコーチ(HC)は、1戦目の段階で金田に対してある声かけをしていたと、試合後の記者会見で明かした。
「昨日、ロスター外になった金田とロッカールームで2人きりになるタイミングがあって、『チャンスが来るから、ゲームに対するイメージをしっかりと持っておいて、試合に出たら思い切ってやろう』と伝えていました」
金田を起用するタイミングを「前半から探っていた」という森山HCは、第3クォーターに入ってついに金田をコートに立たせる。投入直後から、越谷の点取り屋であるLJ・ピークとマッチアップした金田は、まずディフェンスで相手の正面を取り続け、越谷のオフェンスから連動性を奪っていく。速攻に至った場面では素早くコーナーへと陣取り、3ポイントシュートを迷わず選択して次々に沈めていった。
11分34秒と、決して長くないプレータイムの中ではあったが、金田は3本の3ポイント成功で9得点を挙げた。3ポイントの成功数は、この試合におけるチーム最多のものだった。攻守ともに存在感を発揮した金田は、試合を振り返って次のように話す。
「前日については、チームに足りない部分や『自分だったらこうする』という部分をイメージしながら試合を観ていました。思っていたプレーを出せて、上手くいったと感じていますし、ピーク選手に対しては、自分がコートに立つ以上マークしないといけない相手なので、『多少ファウルがかさんででも、相手が嫌がるディフェンスをしよう』と心がけていました。シュートの積極性については、普段から伝えられていることでもあるので、試合の中では迷わず打つと決めていたからこそ、3本の成功という形に表せたと思っています」
負傷者続出の状況に森山HC「僕らに余裕はない」
神戸は今季開幕から攻守の中心として期待されたアイザイア・アームウッドの欠場が続き、10月21日の山形ワイヴァンズ戦で初出場となったものの、わずか1分16秒のプレーで負傷し、そのまま離脱するという苦境に立たされながらの戦いが続く。この間、チームは日本でのプレー経験も豊富なナイジェル・スパイクスと契約し、そのスパイクスも献身的なプレーでチームに貢献している。
一方で、昨季からの主力であるトレイ・ポーターが前節の岩手ビッグブルズとの2連戦を欠場するなど、万全の布陣からはほど遠い状況での戦いとなることもしばしばだ。開幕から4分の1にあたる15試合を9勝6敗、B2西地区2位の滋賀レイクス、3位の熊本ヴォルターズと勝敗で並ぶというまずまずの成績で終えることとなったが、森山HCは「僕らに余裕はない」ときっぱり述べ、厳しい台所事情を隠さない。
「今日で言えばJC(キャロライン)がいなかったし、岩手戦でもJCとトレイ(ポーター)がいなかったという状況です。僕はずっとB2でコーチをしてきていますが、この2~3年ほどで急激にB2のレベルが上がっています。そうした中で、外国籍選手が欠けた中で試合をするのはかなり大変だという印象です。その中で、今はディフェンスが安定してきているので『多少スローペースな試合にしてでも、勝ちきる』という目標を作って我慢しているという状況です。ただ、ゆくゆくはここから戦力が整ったタイミングで、ベースとしてディフェンスの堅実さを持った状況で戦うことができる……と考えれば、先を見越すのなら良いことなのかもしれません。ただ、目の前の試合に対してはめちゃくちゃしんどいです」
この日の試合でも、終盤にポーターが足を痛めて一時的にベンチに下がるなど、森山HC曰く「ちょっと血の気が引く」という場面にも遭遇した。ただ、そうしたタフな状況を過ごしつつも、ディフェンス面での向上、あるいは金田のようにシーズンを通じて新たな切り札が現れることが、B1昇格に向けて大きなピースとなっていくことも、また事実だろう。
越谷との第2戦でチームを救った金田に対して、森山HCは「思い切ったプレーを出してくれているうちは、今後も使っていきたい」と振り返った一方、金田もまた今後の活躍に向けて意気込んでいる。
「今日は活躍することができて勝てたわけですが、1試合だけの結果では成長にはつながらないとも感じているだけに、『これを継続してやることが大事』とも考えています。ここで慢心するのではなく、来週からまた切り替えて頑張っていきたいです」
ここ数シーズン、B1へ昇格したチームを見れば、相手の突破力に優れた選手たちへのディフェンスで注目を集めた鶴巻啓太(茨城ロボッツ)や小針幸也(長崎ヴェルカ)、あるいは思い切りの良いオフェンスを次々に見せていった岡田泰希(仙台89ERS)や角田太輝(佐賀バルーナーズ)らのように、シーズン中に若い日本人選手がブレイクすることが昇格のきっかけになるケースが往々にしてある。ベテラン選手も多く在籍する神戸において、チーム内の競争を打ち破り、金田がここから注目度を一気に上げることができるか。主力選手のコンディション不良に悩みながら戦い続ける神戸にとっては、一つの転機になるようなゲームだったかもしれない。
(荒 大 / Masaru Ara)
荒 大