“東北の代打の神様”楽天・銀次が川島慶三から受けた刺激

“東北の代打の神様”楽天・銀次が川島慶三から受けた刺激

  • 文春オンライン
  • 更新日:2022/06/23

アナウンサーからすれば、交流戦の実況は、事前準備に時間を要するが、その苦労は普段あまり見られない選手を実況できる高揚感として返って来る。普段パ・リーグを担当している立場からすると、セ・リーグの人気選手を目の前で見られる貴重な機会。そんな交流戦において今年改めて感じたのは、東北のファンの温かさである。

仙台で行われたジャイアンツ戦。ウィーラー選手や八百板選手が打席に立つと、イーグルスファンからも惜しみない拍手が送られた。レフトのスタメンは1戦目と2戦目がウィーラー選手、3戦目が八百板選手。原監督の粋な計らいだろうか。レフトスタンドのイーグルスファンは二人の元気な姿を間近で見られた。

また東北そして宮城県在住者として、やっぱり東北にゆかりのある選手に(できればイーグルス戦以外で)頑張って欲しいと考えるファンも多いはずだ。個人的には2015年夏の甲子園準優勝・仙台育英メンバーの一人、郡司裕也選手が代打で出てきた時は嬉しかった。今年のドラゴンズ戦は名古屋だったので、是非来年は仙台でプレーする姿を見てみたい。

リリーフエースに成長したスワローズの今野龍太投手や、交流戦での神走塁が話題になったタイガース熊谷敬宥選手の活躍も嬉しいし、同一リーグでも、ライオンズ佐藤隼輔投手や本田圭佑投手、マリーンズ平沢大河選手が出てきたりすると、実況していて思わず力が入ってしまう。もちろん、佐々木朗希投手は言わずもがな。東北には名選手が多い。

最近のイーグルスは東北ゆかりの選手がずいぶんと減ってしまい少し寂しい気持ちもある。東北ゆかりの選手にはやっぱり「東北楽天」のユニフォームを着て活躍する姿が一番似合うはずだからだ。

「もう一度、東北・宮城・仙台を盛り上げていきたい」

2013年の日本一を知る唯一の東北出身者、銀次選手。

ここ2年間は故障の影響もあり、出場100試合未満と不本意なシーズンが続いている。今年の沖縄キャンプで取材した際、今年にかける強い思いをこう話していた。

「東北出身者の一人として、しっかり活躍して、もう一度、東北・宮城・仙台を盛り上げていきたいです」

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銀次

今シーズンの代打成績は6月21日現在14打数8安打(.571)。まさに“東北の代打の神様”。銀次選手がベンチにいるのは本当に心強い。

でもやはり野球選手たるもの、1軍でレギュラーを掴んでナンボの世界。その取材時に「一から鍛えて、レギュラーで活躍することで東北を盛り上げていきたい」と力強い言葉を添えてくれた事を、私は忘れていない。

スタメン出場の機会も徐々に増えてきた今月上旬、スタメンと代打の違いについてこんな話をしてくれた。

「(スタメンと代打は)全然違います。スタメンで出た時は4打席、5打席ある中で状態を合わせていくのが、代打は1スイングで決めないといけない。決められなかった場合に次の試合まで引きずらないことも重要かなと思います」

どんな場面でも実力を発揮するのは、銀次選手の経験が為せる技ではないだろうか。

なんとも言えない対比を生み出している川島選手との2ショット

17年目34歳。気付けばチームの中でも圧倒的に後輩の方が多くなった中、あるベテラン選手が加わったことが大きな刺激になったようだ。

ムードメーカーの川島慶三選手だ。キャンプでも銀次選手と川島選手が話し込むシーンを何度も見かけた。

「川島さんが『感覚は銀ちゃんと一緒だね』と。僕も川島さんの言ってることが分かったので、一緒だなという感覚はありました。とにかく怖いくらい元気な人です(笑)」

たしかに、ヒーローインタビューで楽天10万ポイント贈呈のボードを笑顔で抱きしめた選手は、川島選手以外に見た記憶がない。

「(川島選手の加入は)めちゃくちゃ大きいです。若い選手も負けないくらい声を出してくれたら、もっといい方向に向かうと思います」

東北人は大人しく、九州人は陽気だ、なんてよく言われる。

岩手出身の銀次選手と、長崎出身の川島選手。たしかに銀次選手もあまり口数は多くない方だ。それだけに、川島選手との2ショットがなんとも言えない対比を生み出していて面白かった。

しかし「優勝したい」「もう一度レギュラーを獲りたい」という強い思いが二人の共通点としてあったはずだ。明るく陽気な川島選手を見て、銀次選手の心にさらに火が付いたに違いない。

以前、銀次選手がこんな話をしてくれたことがある。

「やはり“東北への思い”は誰にも負けないものがあります。自分にはある夢があって。東北からプロ野球選手がもっとたくさん出たらいいなという思いが常にあるんです」

東北で生まれ育ち、日本で、世界で、活躍する選手がたくさんいる。

でもやっぱり、東北の球団で銀次選手が活躍することが、東北の球児にとって一番の刺激になるはずだ。昨日、最後のプロ野球開催となった岩手県営野球場での試合。石井監督の粋な計らいにより、スタメン出場4の0ながらお立ち台に上った。打席に立つたびに盛岡のファンの声援を受け続ける銀次選手を見て、あたらめてそう強く感じた。

口数は決して多くない。でも内に熱い思いを秘め、プレーで魅せる。

背中で語るタイプって、やっぱりカッコイイです! 銀次さん!

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(林田 悟志)

林田 悟志

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