ドローンによる農薬散布の課題“ドリフト問題”に挑む花王の界面制御技術

ドローンによる農薬散布の課題“ドリフト問題”に挑む花王の界面制御技術

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/10/14
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2021年7月に花王が中国でドローン用農薬展着剤の販売を開始したというニュースが発表された。

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花王が農薬展着剤を販売と聞いて驚いた方もいるかもしれない。

花王は洗剤などの界面活性剤の開発で培った“界面制御技術”を活かし、農薬の付着をよくする目的で使用される「アジュバント(機能性展着剤)」を販売しており、日本のアジュバント市場ではトップシェアを誇っているという。

そんな花王が今回発表したドローン用のアジュバント「KAO ADJUVANT A-200」は、近年盛んにおこなわれているドローンによる農薬散布の課題解決だけでなく、減農薬も実現できる商品として注目されている。
ドローンによる農薬散布が抱える課題

ドローンによる農薬散布は、従来のトラクターで散布するような方法と比較して散布時間が10分の1、使用する水の量が100分の1になるという。手間の面でも、環境面でも有用だが、水の量が少ないがゆえの2つの課題があるという。

1つ目は水の使用量が少ない反面、細かい霧のような水で散布するため、その水がどんどん乾いてしまい、蒸発により液滴が小さくなることで、風に飛ばされやすくなり非対象物に農薬が付着してしまう、いわゆる“ドリフト問題”と呼ばれる課題がある。

もう1つの課題として、水分量が少ない状態だと、農薬を含んだ液体が葉を覆うことができず、ムラができてしまうという問題もある。

この2つの課題を解決するべく、花王は“界面制御技術”で以下2つの新技術を開発した。

1つ目は散布液に“界面活性剤の膜”を作ることによって、液滴が直接外気に触れることを防ぐことで、蒸発を阻止するという「蒸発抑制技術」だ。

以下の動画をご覧いただきたい。左が無添加、右が蒸発抑制技術を取り入れたアジュバントを添加したものだ。アジュバントを添付している液滴は乾燥が防止され、水滴が蒸発するスピードが遅いのが分かる。

これにより、液滴が作物に届く前に乾燥してしまうことを防ぐことができるというのだ。

2つ目は「展着性(濡れ性)向上技術」だ。これは葉に液体が落ちてからの広がりを手助けする技術だ。

以下の動画は無添加の液滴とアジュバントを添加した液滴で、展着性を比較したものだ。アジュバントを添加した液滴は瞬時に葉の上で濡れ広がるのがわかるだろう。

この技術は、今回発売されたもの以外でも、2019年に発売された花王が開発したアジュバント「ドライバー」(ドライバーは販売元である丸和バイオケミカルの登録商標)にも使用されているといい、従来技術に用いられていた「表面張力」を抑えることだけでなく、葉の表面と薬液の間に働く「界面張力」も最小限になるように制御することで、より自発的に濡れ広がるようにしたものだという。

これら2つの技術が加えられた「KAO ADJUVANT A-200」を添付すると、無添加時と比較して、作物の被膜率が約9倍向上することが確認されているという。
減農薬にもつながる技術でESGへの貢献も

さらに、KAO ADJUVANT A-200は作物への効果だけでなく、少量の農薬でしっかりと作物を覆うことができるため、減農薬効果もあるという。

中国で行われた実証実験では、農薬を70%減らした状態でもアジュバントを添加することで農薬単独使用と同じ防除効果が認められた。

この減農薬効果は、実証実験の段階で中国国内でも高く評価されているそうだ。

先行して中国で販売されたドローン用アジュバントだが、日本国内での販売も計画しており、2021年10月現在は関係省庁に農薬登録の申請準備を行っているという。

同社は、ドローンでの農薬散布時の課題を解決するだけでなく、農薬による水や土壌などへの環境汚染を防ぎ、減農薬にもつながるこの製品でESG(Environment、Social、Governance)にも貢献していきたいとしている。

農業の分野でも、洗浄剤開発で培った界面制御技術を活かした製品を世に送り出した花王。今後どのような分野で同社の活躍が見られるのか楽しみだ。

和根﨑友梨子

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