「いじめ探偵」が教える、わが子を守るための対策

「いじめ探偵」が教える、わが子を守るための対策

  • 週刊女性PRIME
  • 更新日:2021/06/10
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LINEをはじめSNSを介したいじめは、スクリーンショットをとるなどして証拠を残すこと(写真はイメージ)

文部科学省が2020年に発表した統計によると、全国の小中高校などで認知されたいじめは61万2496件で、6年連続の増加。'13年度に集計が始まって以来、過去最多となった。

【写真】特に小学校で激増! いじめ認知件数の推移

「ここ数年、いじめが低年齢化する傾向にあります。かつては考えられなかったような巧妙なケースも目立ちます」

そう語るのは、いじめの調査や被害者支援を行うNPO法人『ユース・ガーディアン』代表の阿部泰尚さん。本職である探偵業と並行しつつ、これまでに6000件を超えるいじめの相談を受け、解決に導いてきた。そうした経緯から阿部さんを「いじめ探偵」と呼ぶ人もいる。

“情報操作型”のいじめが増加

前出の調査で、いじめの増えた割合が前年比で最も大きかったのは、小学校だ。

「私たちが受けている相談では、“あの子と一緒にいると嫌われる”“裏で悪口を言っていたよ”などと理不尽な噂を流して友人関係を壊し、被害者を孤立させるタイプのいじめが増えていますね。こうした情報操作型のいじめは、かつては小学校高学年や中学生の間でよくみられるものでしたが、最近は低学年でも目立つようになっています」

学校や学級内での立ち位置や力関係といった「スクールカースト」を利用する、支配型のいじめも小学校のうちから起きている。

「情報操作型や支配型のいじめを見ていると、加害者の親たちも、子どもと同様に親同士の間でいじめを行っていることも少なくない。さらにはママ友間での序列など、親の力関係が子ども同士にも影響を及ぼすことがあります」

また、SNSやソーシャルゲームを通した、親の目が届きにくい場所で起こるいじめも増加傾向にある。

「前出の統計によれば、5年前と比べ2・3倍に増えています。なかでも、24時間経過すると自動的に消える『インスタグラム』のストーリー機能を使って、証拠が残りづらいいじめが増えているのが特徴。露骨な表現ではなく隠語を使って、仲間内で攻撃するケースも少なくありません」

多様化するいじめに親はどう立ち向かい、どのようにしてわが子を守ればいいのだろうか? いじめの傾向や特徴をつかみ、阿部さんと対策を考えていこう。

いじめ対策の基本は「証拠を残す」

いじめの内容を問わず、まず取り組んでほしい対策がある。証拠を残すことだ。

「子どもからいじめの報告を受けたら、スマホの録音機能やレコーダーなどを持たせて、加害者や学校との会話をすべて録音するようにしてください。そして起こった出来事を4つのWでまとめましょう。when・いつ、where・どこで、who・誰が、what・何をしたのか。これらの客観的事実を整理しておくことが大切です」

LINEやインスタグラムなど、SNSを介したいじめのケースでも証拠を残しておくことが重要だ。

「必ずスクリーンショットやデータのバックアップをとっておきましょう」

前述した情報操作型・支配型のいじめの場合、阿部さんは登場人物を整理することから始める。

「よくテレビドラマに、登場人物の関係性を示した相関図がありますよね。あれと同じようなものを作るのです。いじめの加害者、傍観者、親や教師など、被害者との関係性を明確にしたうえで、いじめを証言してくれそうな協力者を探すわけです。

いじめを受けていると、加害者同士が結託しているように見えるかもしれませんが、その多くは一枚岩ではありません。本当はやめたがっている人物、グループから離れたがっている人物もいるので相関図から分析し、目星をつけてアプローチしていきます」

今年3月、『文春オンライン』が報じた旭川中2女子凍死事件は世間に衝撃を与えた。脅迫されて裸の写真を撮らされ拡散される、自慰行為を強要されるなどの性暴力を含むいじめが背景にあったと指摘されている。

亡くなった女子生徒はソーシャルゲーム『荒野行動』を通して一部の加害者と知り合ったとされている。

「過去にソーシャルゲーム内で起こったいじめ相談を受けたときには、実際に私がゲームの世界へ入り、加害者へ直接コンタクトを取って、いじめをやめさせました」

ゲーム上だけの関係であれば、相手をブロックして管理者に通報するなどして関係性を断てばいいが、実生活でも知り合いの人物であれば対応は異なる。

「ゲームをする際のアカウントを変えるなど自己防衛をしたうえで、学校や教育委員会への相談をおすすめします」

ここで気をつけておきたいのが、被害者と加害者で学校が異なる場合。旭川市の事件では、女子生徒の通う学校側が「わいせつ画像の拡散は校内で起きたことではないので、学校として責任は負えない」と述べたと報じられている。

「責任を負えないというのは法律上、誤りで許されない行為です。いじめ防止対策推進法(以下、いじめ防対法)では“いじめが起きた場所は学校の内外を問わない”と定めています。保護者からいじめの申告があった時点で、学校は調査する義務が生じているのです。でも実際は、校外で起きたことを理由にいじめを認めようとせず、隠蔽に走る学校が後を絶ちません」

学校に訴えても動かなければ、最寄りの教育委員会に働きかけることもできる。

厄介なのは、私立校でいじめが起きた場合だ。公立校と違って各教育委員会の管轄ではなく、いじめ対応の責任者も、学校法人の理事長が担うこともあれば、各都道府県知事ということもあり、学校ごとに異なるからだ。

「さらに私立校は、公立校以上にマイナスイメージがつくことを嫌います。組織的な隠蔽を図り、事実を隠す傾向に走りやすい。私の経験でも、学校と役所との連携が取れておらず、対応してくれないケースがほとんどでした」

こうなると素人ではお手上げ。阿部さんや、いじめ問題に詳しい弁護士などのプロに相談したほうがいいだろう。

「性的いじめ」は中学生から本格化

最近、阿部さんは「いじめ防対法の範疇を超えた相談が増えた」と感じている。

「いじめ防対法の対象は、小学校から高等学校までに在籍している児童・生徒。幼稚園や保育園に通っている子どもたちには適用されません。しかし現実には、そこでもやはりいじめが起きています」

そんなに小さな子どもたちの間でいじめが起きていること自体、驚いてしまうが、もっと衝撃的なのはその内容。

「先日受けたのは、性器をいじられケガをしてしまったという相談でした。大人のまねをしたなど悪意を感じないケースがほとんどですが、幼児の間で起こる性的いじめは証拠集めが非常に難しく、立証も困難になります」

阿部さんによれば、性的いじめは幼児や小学生にもみられるものの、本格的に増え始めるのは中学生から。大人であれば刑法犯になるような行為が頻発しているという。

阿部さんのもとへ、いじめに伴い集団レイプされた女子中学生本人から「死に方がわからない」と電話がかかってきたことがある。

女子生徒は自ら「レイプされた」とは言わなかった。だが、実際に会ってみると、指には噛んだような自傷行為の痕があり、誰かともみ合ったときにできたと疑われるすり傷もあった。そのため阿部さんはレイプ被害と確信。本人の気持ちに寄り添いながら起こったことを聞き出し、女子生徒の両親へ報告した。

「性被害に遭った生徒の心身のダメージは大きいです。それだけでなく、高い確率で動画を撮影されています」

前述した旭川市の事件でも、自慰行為の強要や、わいせつ動画の拡散行為があったといわれている。

「1度、拡散されてしまった動画を完全に消し去ることは難しい」と阿部さんは言う。

「性的いじめはセンシティブな内容であり、あくまで被害者の気持ちを優先させなければいけない事案。本人と、その家族の意思や要望を聞きながら慎重に調査を進めます。裁判に持ち込むといっても、多くの証言が求められることとなり被害者の負担が大きく大事にならないよう処理されることも少なくありません」

いじめで子どもの心身に重大な被害が生じた疑いや、長期にわたって欠席を余儀なくされている疑いがあると、いじめ防対法では「重大事態」と定義される。そうした場合に文科省は、学校側に「第三者委員会」を設置して調査するよう求めている。

だが、第三者委員会でもトラブルが続出。阿部さんは著書の中で京都の公立校で起きたいじめを例に挙げている。

被害生徒は休み時間に、加害生徒に無理やり教室から連れ出され、右手関節ねんざや右ひじ関節脱臼などのケガを負った。しかし学校側はいじめと認めず、被害生徒の保護者は話し合いを求めていた。

事件から1年8か月後、京都府教育委から保護者に連絡があった。いじめの経緯を書いて送ってくれというのだ。指示どおりにすると、第三者委の設置を申し立てたことにされていた。保護者は府教委から何の説明も受けておらず、第三者委を設置したいか確認もされていない。被害生徒への聞き取りもない。

「問題は、多くのケースでいじめ防対法を曲解し、第三者委員会は勝手に調査を進めていいと解釈していることにあります。その結果、独自にメンバーが決められたり、加害者と近い関係にある委員が選出されたりしているのです」

これでは十分な調査ができるはずもない。いじめの真相解明から遠のくばかりだ。

子どものいじめに大人は何をすべき?

わが子がいじめを受けているおそれがあるとき、学校側へどう伝えるべきだろうか?

「子どもに聞いた話のすべてを伝えようとすると、学校側もパニックを起こしてしまうため、まずは電話をして、対面で話ができるようにアポを取りつけましょう」

学校へ出向く前に、ネットで地域のいじめ条例を確認しておこう。また、各学校で策定され、公開されている『いじめ防止基本方針』もチェックを。プリントアウトして持っていくと、より効果的だ。

実際に話す際には、感情的にならないよう注意。学校側がモンスター・ペアレントと認定しかねないからだ。協力を仰ぐべき相手にクレーマー扱いされてしまえば、解決は遠ざかってしまう。最初こそ冷静に、事実を淡々と伝える姿勢を心がけたい。

「相談後、時間がたっても学校側がいじめ調査書類を出してこない場合、迷わず開示請求をしてください」

最後に、いじめ対策をするうえでいちばん大切なことを阿部さんに聞いてみた。

「予防教育の徹底です。先生たちが自らいじめをキャッチできる能力は、残念ながらものすごく低い。そのため、いじめを目の当たりにした子どもたち自身がどう対処すればいいのか、その根本的な仕組みを教えることが重要だと思っています。小さな芽のうちに摘むことができる社会をつくること。そして大人たちは、いじめについてもっと関心を持ち、より深く理解することを心がけてほしいと思います」

阿部泰尚さんNPO法人『ユース・ガーディアン』代表。探偵として子どものいじめ調査を数多く手がけ、解決へ導いてきた。『いじめを本気でなくすには』ほか著書多数

《取材・文/高橋ももこ》

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