松本まりか「愛人」を熱唱。“令和の愛人女優”が似合う36歳になるまで

松本まりか「愛人」を熱唱。“令和の愛人女優”が似合う36歳になるまで

  • 女子SPA!
  • 更新日:2020/09/15

「愛人」が「雰囲気、合う」と言われてしまう松本まりか(36)。

9月12日(土)に松本まりかは音楽番組「THE MUSIC DAY」(日本テレビ)に出てテレサ・テンの「愛人」を披露した。傍らで聞いていた指原莉乃は「雰囲気合ってましたね」、SHELLYは「色っぽかったー」と称賛していたが、松本自身はインスタに「自分の人生で人様の前で歌うなんて、思ってもみなかった」と歌に対する苦手意識を綴(つづ)っている。確かにその歌い方は、初めてテレビで歌う緊張が手にとるように感じられるものだった。守ってあげたい!

特徴的なハスキーボイスがますますかすれ気味でか弱く、いまにも消えてしまいそうで、片手を胸にそっと抑えているところも懸命に映る。見ていてものすごくはらはらするけれど、この堂々と歌っていないところがまた魅惑的だった。今をときめく女優だからこその歌番組出演。Twitterのトレンドにもたちまちイン。

◆令和の愛人女優を宣言したかのような

松本まりか、絶好調。一時期、“愛人”といえば、壇蜜、橋本マナミの顔が浮かんだものだが、ふたりとも結婚してイメージ刷新した今、空いた座席は松本まりかのもの。プライムタイムの歌番組で、カラオケにおけるオンナの勝負曲のひとつ「愛人」を選曲したことは、令和の愛人女優を宣言したと言っていいのではないだろうか。それが高らかな宣言でなく、あくまでも控えめであるところが「愛人」が「雰囲気、合う」と言われてしまう松本まりかの魅力でもある。

インスタの料理動画では、おくれ毛、鼻をかむ姿、エクボ、ウィスパーボイス……ひとつひとつが儚(はかな)いのになぜか強烈な色っぽさ。この人が料理作って待っている家に行きたくなる。そして行ったら最後、すがられる、そんなめくるめく妄想がわいてくる。

デビューは2000年、地道にドラマ、映画、舞台と活動し、注目されたのは2018年。連ドラ『ホリディラブ』(テレビ朝日系)の不倫妻役で注目された。子供もいるのに夫以外の男性に溺れていくオンナの本能を体当たりで演じて、かわいいだけではないところを印象づけた。

人間、節目というものがあり、かわいさや初心さを武器にできる第1形態から、違う武器を手にする第2形態に進化する時期が必ずくる。松本まりかはアラフォーの手前でその通過儀礼にみごとに成功したのである。

◆今年はドラマ『竜の道』『妖怪シェアハウス』同時出演

2020年はとりわけ当たり年。週刊「プレイボーイ」のグラビアから歌番組まで露出多め。目下、連ドラを2本掛け持ちしている。『竜の道』(フジテレビ系 9月15日で最終回)では主人公(高橋一生)の恋人にして仇(かたき)の娘でもある役を演じ、『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)ではお岩さん役。

前者は父親が企業の社長でお金に困らず高慢なところもあるが、家庭の事情から孤独を感じている役で、強さの裏の弱さの演技が鮮やかで、この華奢なカラダも心も守ってあげたいとほだされてしまいそう。後者はお岩さん。問答無用に、夫に浮気され毒を盛られて殺される悲劇の女の象徴的存在である。そして、どちらの役も、ヒロインの相談相手のお姉さん的存在も引き受けている。

◆2006年の朝ドラ『純情きらり』甘めな声で辛めな役をやり良いバランス

松本まりかの第1形態は、現在再放送中(28日まで大相撲で休止)の朝ドラ『純情きらり』(06年 NHK総合)で見ることができる。主人公(宮崎あおい)の友人役という、これも俳優のひとつの登竜門で、デビュー6年目の彼女はいいポジションにいた。

兄が出征するときに「君死にたもうことなかれ」と書いた手ぬぐいを掲げて軍に咎(とが)められるが、のちに戦争が進行してくると国のために働こうとするという、なかなか考えさせられる役割をきりっと演じていた。

良くも悪くも声が特徴的過ぎることはデビューからずっと認識されていて、この頃、私は彼女にインタビューしているのだが、やはり声にコンプレックスがあると語っていた。その甘めな声が辛めな役をやることで良いバランスがとれていた。

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2006年発売「松本まりか My Graduation」 [DVD]インディーズ・メーカー

◆劇団☆新感線やジャニーズはじめ舞台での芝居も経験

この年の9月、彼女は劇団☆新感線による、若手と出会う企画“NEXUS”という『Cat in the Red Boots』に重要な役で出ている。主演は生田斗真で、童話『長靴をはいた猫』をベースに、生田演じる主人公と、松本演じる人間に化けた猫が冒険の旅をする、笑いもふんだんなファンタジックな物語。

生田斗真が新感線参加2度めで頭角を現しはじめたときで、松本はその登り盛りの生田に食らいついていくポテンシャルを見せ、いいコンビネーションをつくりあげていた。猫(が化けた人間)役ということもあってしなやかでキュートでちょっと強気な雰囲気を醸(かも)していたが、ただかわいいだけでない、俳優としてのたくましさがあった。新感線の、いのうえひでのり演出はただかわいいだけでは務まらない。そのいのうえの要求にきちっと応えられる力が備わっていると感じたものだ。

城山羊の会『水仙の花narcissus』皆様ありがとうございました。終わって魂抜けてました。…逆ね。魂燃えました。着火。至極最高。何より面白かった。何をするより面白かった。とにかくありがとう。他に沢山あるから、これだけ。またいつか。 pic.twitter.com/bFI9wTVkX3
— 松本まりか (@marika_2000)
December 18, 2015
from Twitter

だからこそ、エンターテインメントを作ることに徹底的にこだわる堂本光一の『Endless SHOCK』(07年)にも抜擢されたのであろう(引き続き生田斗真と共演になる)。その後は、映像の仕事と平行して、モダンスイマーズ、財団・江本純子、城山羊の会、ナイロン100℃、ブス会*など中、小劇場の公演に出演。この作品のチョイスはなかなか通である。本人の好みなのか事務所の方針かはわからないが、これらクセのある劇団で芝居をしてきたことも確実に身になっていることだろう。

◆表現力と身体能力をコツコツと積み上げてきたからこその今

じつは、『Cat in the Red Boots』で松本は歌を歌っているのである! もしこのときそれが高評価だったら2020年に「自分の人生で人様の前で歌うなんて、思ってもみなかった」などと綴っていなかったかもしれない。

個性的な声を歌では生かすことが当時はまだ残念ながらできなかったからこそ、今がある。器用になんでも引き受けるよりも、俳優として的確に演じる表現力と身体能力をコツコツと積み上げてきたからこその今。

◆弱さをチラ見せする松本まりかこそが最後に微笑む

“愛人”感には「薄幸」「報われない」「日陰」「待つ」というような言葉を喚起させる一方で「しゃしゃり出過ぎないデキる女」という側面がある。正妻、あるいはヒロインに華をもたせたように見せながら、報われなくてもいいの、という殊勝なところを見せながら、その実、大変な責任は正妻、あるいはヒロインにおまかせして、ナンバー2の仕事はしっかり遂行しつつ、その自由をしっかり謳歌する。それをあざといとも言うし、有能であるとも言う。

その際、研いだ爪はあくまでも隠しておかなくてはいけない。どんなに頑張って力を磨いていてたくましいとしても、晴れ舞台で緊張してうまく歌えない、料理する前に鼻をかんでぐすぐすさせる、そんな弱さをチラ見せする松本まりかこそが最後に微笑むのだ。

<文/木俣冬>

【木俣 冬】

フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など

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