“在日コリアン”をネタにするお笑いコンビ「ピリピリするテーマも漫才なら...」

“在日コリアン”をネタにするお笑いコンビ「ピリピリするテーマも漫才なら...」

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2020/08/02

在日韓国人3世と4世の2人が、自身の生い立ちや日韓問題に切り込む漫才を繰り広げている。ワタナベエンターテイメント所属「コリアンチョップスクワッド」のちす(23)とゆぎょん(22)だ。

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お笑いコンビ「コリアンチョップスクワッド」のちす(左)とゆぎょん

3年前にコンビを結成した東京朝鮮高出身の2人は、昨年からこの芸に行き着いた。自らのルーツに光を当てる漫才が観客を笑いの渦に包み込む日を心待ちにしつつ、在日コミュニティーと非在日との架け橋になることを夢見る。

「僕たちが実体験していることを『笑い』を通じてもっと知ってもらいたい」と意気込みは強い。

◆バイト先での体験談やGSOMIA破棄まで。漫才のテーマは幅広く

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アルバイト先で通名か本名かどちらを名乗るか迷う話。生い立ちを細かく尋ねるカスタマーセンターとのやり取り……。実体験を織り交ぜた漫才は、2人の自虐的な語り口とコミカルな演出で笑いを誘う。

日本と韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)が破棄されます――と架空のラジオ番組で話題になり、日本の安倍さんと韓国のMJさんから悩みが寄せられるという時事ネタも漫才にした。それぞれの投稿を読み上げた上で、「安倍さんとMJさんには次世代にも続くすばらしい日韓関係をプレゼントします」とオチに持って行った。観客席からは拍手がわき起こった。

◆どこまで笑いにできるかは、いつも迷う

持ちネタは現在10個ほど。ネタ作りで日頃からニュースを見たり、身の回りの出来事を観察したりを心掛ける。ただ、どこまで笑いにできるかは、いつも迷うことだ。

朝鮮学校の無償化問題など政治的関心が高いテーマから、「在日」だからという理由でスーパーの会員カードを作れなかった家族の苦労話まで。話題は事欠かないが、漫才で表現すると考えると試行錯誤が続く。それでも2人はこう言う。

「ピリピリしちゃうことでも、漫才なら笑いなら、伝わるんじゃないかな」

◆幼なじみでコンビ結成。ワタナベエンターテイメントのスクールに入学

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「マイク一本で人を笑わせるのってかっこいいじゃないですか」と漫才の魅力を語るゆぎょん

都内の在日韓国人が集うコミュニティーで育ち、幼い頃からご近所同士の間柄だ。ツッコミ担当のちすが1学年先輩に当たるが、漫才に誘ったのはボケ担当のゆぎょん。

「中学時代にテレビで観たトータルテンボスさんやNON STYLEさんにハマリましたね。同級生とトリオを組んだりしてました」(ゆぎょん)

お笑いについての話し相手は、いつも先輩のちすだった。プロから教わり飛躍したいと、17年4月にワタナベエンターテインメントが開校するスクールに入学した。

◆「自分にしかないキャラを作れ」に感銘

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「アルバイト先の焼肉店で副店長に昇格しました」と語るちす

「自分にしかないキャラを作れ」

スクール講師から常々言われたことだ。アドバイスが転機となり、語学を生かした漫才を始めた。「韓国語で森のくまさんを歌ってみた」「もしも韓国人と合コンしたら」など披露し、手応えを感じた。「韓国人」と自己紹介すると、若い女性客を中心にファンも増えた。

2人は「K-POPなど韓流ブームの流れに乗った感じでしたね」と振り返る。その一方、受け入れられやすい明るい話題だけを漫才にすることに違和感があった。

「『韓国人』と紹介していましたが、僕ら今まで韓国に行ったことないんです。学校で教わったから韓国語を話せるだけで、普段は日本語を話して生活しています。日本で『在日韓国人』として暮らしてきたありのままを漫才にすることこそが、自分にしかないキャラになるのかなと思い直したんです」(ちす)

19年から現在のスタイルに変えた後、「在日韓国人」と自己紹介するようになった。

「若い人が多く漫才に来てくれたかんじだったけど、在日をテーマの漫才にしたら客層も変わり、年齢層も高めなかんじです。『ちょっと構えて見ちゃうなぁー』と言われたり、自分らの親世代からは『やめた方がいい』『テレビに出れるの?』と心配されたりすることもあります。前例がないことをやっている以上何が正解か、不正解なのか全く分かりませんけど、自分たちで切り開きたいです」(ゆぎょん)

◆「アンチ(ファン)も歓迎。知ってもらうことが大事」

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冷え込む日韓関係を改善する上で、自分たちの漫才が橋渡しになることを願っている。韓国でも漫才を披露したいと意欲的だ。

好きな漫画の「BECK」に登場するバンド名(モンゴリアンチョップスクワッド)が、コンビ名の由来だ。主人公たちのように苦難や挫折を乗り越え、いつか人々の胸を打つ漫才ができることを信じている。

「アンチ(ファン)も歓迎です。知ってもらうことが大事だから」

貪欲に芸を磨く日々は、これからも続く。<取材・文・撮影/カイロ連>

【カイロ連】

新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren

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