日本代表、大迫不在時の解決策。浅野拓磨の2つのプレーに注目

日本代表、大迫不在時の解決策。浅野拓磨の2つのプレーに注目

  • Sportiva
  • 更新日:2021/06/10

U-24日本代表とのチャリティマッチから中3日、すでにW杯アジア2次予選突破を決めた森保ジャパンがタジキスタンと対戦。2次予選初となる失点を喫して一度は同点に追いつかれたが、最終的には力の差を見せつけて4-1で勝利を収めた。

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タジキスタン戦に1トップでスタメン出場した浅野拓磨

大勝したモンゴルやミャンマーほどではないにせよ、日本にとってはタジキスタンも勝って当然の相手。それだけに、この試合は結果よりも内容に重きをおいてチェックする必要がある。

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前日に森保一監督が予告したとおり、この試合のスタメンはU-24日本代表戦から8人を変更。レギュラーの南野拓実と、レギュラークラスの原口元気と橋本拳人を除くと、フィールドプレーヤー10人のうち7人が控え組という編成だった。

U-24日本代表戦では、控え組が中心となった後半に主導権を失った。それだけに、彼ら経験の浅い選手たちが、いかに前回の反省点を踏まえて高いレベルで戦術を機能させ、そのうえで個の特長を発揮できるかに注目が集まった。

そのなか、この試合で1トップを務めた浅野拓磨がどのようなプレーを見せるかは、最大の注目ポイントだった。この日は不動の1トップとして君臨する大迫勇也が、負傷によりメンバー外。これまでも大迫不在時に誰がこのポジションを務めるかは、チームとしてまだ確固たる解決策を見出せていない事情がある。

過去の例を見てもわかるように、前線で縦パスを収められるかどうかは、森保ジャパンの攻撃が機能するかにほぼ直結する。前線でポイントをつくれれば、相手の守備を中央に寄せられ、それによってサイドに空いたスペースを有効に使えるメリットも生まれる。

それこそが、ポストプレーに秀でた大迫が重用される最大の理由であり、それは昨年から1トップ下のファーストチョイスとなった鎌田大地にも言えることだ。その他、南野、堂安律、伊東純也、久保建英といった2列目の戦力も、ライン間で縦パスを受けるのを得意とする。

一方、この試合のスタメンを飾った浅野、古橋亨梧、原口は、それほどポストプレーに長けているわけではない。浅野と古橋はスピードを生かした裏抜けを最大の武器とし、万能型の原口については、スタミナを生かした守備貢献やドリブルの推進力など、他の選手にはないダイナミックさが特長でもある。

つまり南野以外、4-2-3-1の「3-1」に異なるタイプのアタッカーを並べた時、どのような変化が起きるかが、この試合を見ていくうえでは重要なカギとなった。

森保ジャパンにおいて、これまで浅野が先発出場したのは2019年11月19日のベネズエラ戦のみ。ただ、その時は鈴木武蔵との2トップだったため、1トップでの出場は今回が初めてだった。

過去には、鈴木武蔵や永井謙佑といった、浅野と同じスピードを武器とするタイプが1トップを務めたこともあった。しかしそれらの試合では、彼らの特長を生かすべく、チームとして相手DFの背後を狙うフィードが目立ち、くさびの縦パス本数が極端に減少。たとえば6-0で完勝したホームでのモンゴル戦(2019年10月10日)では、永井が1トップに起用され、1度もポストプレーをせずに終わった例もある。

その試合では、両サイドからのクロスを多用して多くのゴールを生み出すことに成功したが、果たして、このタジキスタン戦ではどのような攻撃を見せたのか。

2-1のスコアで終えた前半、日本は17本の縦パスを見せたが、やはり浅野がくさびの縦パスを収めたシーンは1度もなかった。

浅野の見せ場は、6分の古橋による先制ゴールにつながったプレーで、山根視来のパスからDFラインの背後に抜け出してシュートを放ったシーン。14分に古橋がタッチライン際から蹴ったボールを右から抜け出てシュートに持ち込んだシーン。そして、カウンターからドリブルで前進した南野のパスを左サイドのスペースで受け、カットインしてからシュートした41分のシーンだった。

ただし、裏抜け以外で見逃せないプレーもあった。19分に昌子源が入れた縦パスを南野がフリックし、近距離でそれを受けた浅野がトラップミスをしたシーンと、46分に同じく昌子が原口に縦パスを入れ、原口がフリックで浅野に渡したシーンだ。

この2つのシーンでは、直接浅野が縦パスを受けずとも、別の選手を一度経由してからボールをもらったという点で、共通していた。そして、南野に代わって鎌田が、原口に代わって坂元達裕が起用された後半になると、前半に見せたその2つのプレーが、より精度を高めるかたちで披露されている。

57分、橋本拳人が入れたくさびの縦パスを浅野がダイレクトで川辺駿に落とし、川辺が3人目の動きで飛び出した鎌田に縦パスを配給。受けた鎌田はシュートせずに浅野に預けたが、残念ながら浅野がトラップミスしてしまい、フィニッシュには至らず。しかし、この試合で初めて縦パスから複数人が連動しながらシュートに至った見事な攻撃シーンだった。

また、その直後の59分には、橋本の縦パスを浅野がフリックで鎌田に預け、鎌田からリターンパスをもらった浅野がシュート。惜しくもGKにセーブされたが、この連係も浅野のポストプレーが関与したシュートチャンスのひとつだった。

もちろん、後半から浅野が直接縦パスを受けられるようになった要因のひとつは、タジキスタンのセントラルMFの2人(13番、17番)に疲れが見え始め、スライドが遅れ気味になったことが関係している。

日本の両サイドバックの攻め上がりを、4-4-2の両サイドMF(11番、7番)がついていく守備方法だったため、日本の縦パスのコースを切るためには、2トップ(21番、10番)の立ち位置と、その後方に位置する13番と17番のスライドが肝だった。

前半はそれがかなりの精度でできていたのだが、さすがに後半になると2人の守備にズレが生じ始めていた。

いずれにしても、浅野が1トップで起用された場合は、裏抜けを狙った縦に速い攻撃と、ダイレクトで縦パスを処理するポストプレーから複数人が連動するという、2種類の攻撃パターンを実践していたことがわかる。

その他、後半は2度ほど縦パスを受けて収めようとしたプレーもあったが、大迫のようにボールをしっかり収め、時間と空間をつくってから展開したのは、橋本の縦パスを受けてから右の坂元に展開した62分のシーンのみ。そのシーンも十分に"タメ"をつくったわけではなく、基本的には大迫のポストプレーとは異なっていた。

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そういう意味では、トラップやパスの精度はまだ改善の余地はあるものの、浅野なりの1トップのかたちは出せていたと見ていいだろう。

結局、この試合で日本が見せた縦パスは計30本(後半13本)。個人別で見ると、最も縦パスを記録したのは、9本の昌子だった。また、サイドからのクロスについては、前半10本、後半9本の計19本を記録(個人では山根の6本が最多)。しかし、成功は前後半各1本と、19本中17本が失敗に終わった点は課題と言える。

そもそも、ほとんどボールを支配していた日本だったが(63.2%)、シュートは前後半各6本(計12本)と、決して多くなかった。これは浅野のポストプレー、あるいはクロスの精度にも言えるのだが、個々のプレー精度が大きく影響していたと言わざるを得ない。

それがレギュラー組と控え組の違いと言ってしまえばそれまでだが、アジア最終予選では確実に相手のレベルが上がることを考えると、個人としてもチームとしても改善していく必要はあるだろう。

6月シリーズの残り2試合は、チーム戦術のなかで、個人のプレー精度をどこまで高められるかも、注目すべきポイントになる。

中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi

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