『RRR』のTV初放送を見逃すな! S・S・ラージャマウリ監督作品の“凄い画”の原点とは?

『RRR』のTV初放送を見逃すな! S・S・ラージャマウリ監督作品の“凄い画”の原点とは?

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  • 更新日:2023/09/19
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『RRR』©️2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

インドだけに留まらず、日本が、世界中が湧き上がった超大作映画『RRR』のWOWOWでのTV初放送が決定! それに伴い「インドのヒットメーカー ラージャマウリ監督特集」(以下:「ラージャマウリ監督特集」)として、『マガディーラ 勇者転生』『マッキー』『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ 王の凱旋』といった過去作品も放送・配信される。

そんな『RRR』を手掛けた監督、S・S・ラージャマウリとは……。今やインド映画界、テルグ語映画界(トリウッド)という枠組みを超えて、世界的に有名になった監督だ。

第95回アカデミー賞において『RRR』の作中曲で、タレント発掘番組『ビッグ・ボス・テルグ』シーズン3の優勝者ラーフル・シプリガンジが歌う「ナートゥ・ナートゥ」が最優秀歌曲賞を受賞したことも記憶に新しいが、それは突然の快挙というわけではない。実はその以前から、すでにアメリカやヨーロッパ、アジアにおいてインド映画自体の流通規模というのが2010年代後半から徐々に上がってきていたのだ。

2013年には『チェンナイ・エクスプレス 〜愛と勇気のヒーロー参上〜』や『チェイス!』2014年には『バンバン!』といった世界市場を視野に入れた作品も続々と制作されるようになり、世界中がインド映画に注目。ヴァイアコム(パラマウント、MTVなどの親会社)やディズニーといった大手企業も続々とインド映画市場に進出するようになった。

そこに『バーフバリ』シリーズがそれぞれ全米興収ランキングに入り、その話題性も絶大だったこともあり、ラージャマウリのブランドは確立されていった。つまり世界におけるインド映画市場の基盤と流れを作ったひとりでもあるラージャマウリの作品がアカデミー最優秀歌曲賞を受賞したというのは、今までの功績も考慮すると、当然ともいえる。なんなら作品賞などの主要部門でノミネートされてもいいほどだ。

例えばアメリカにおけるインドの大作映画の上映規模というのは、スクリーン数が600~800というのが相場。現在日本でも公開中の『PATHAAN/パターン』の場合は約700スクリーン、『ブラフマーストラ』も約800スクリーンでの上映であった。それに対して『RRR』の場合は、約1200スクリーンで上映されており、アメリカのインド映画上映館数としては、快挙といえ、このスクリーン数を見ただけでもラージャマウリブランドの凄さがわかるはず。日本のように地道にロングラン上映を繰り返して……というよりは、短期間に上映されて、のちに配信サービスに移行されたのだが、それでも全米で初週興収3位という記録を打ち立てたほど。ちなみに全米初週興収を超えるのに日本は100日以上かかっているというのだから、アメリカでも圧倒的な人気があることは明確だ。『RRR』を実際に観たマスコミやセレブたちの間でも「#RRRForOscars」という投稿が話題となった。

しかし『バーフバリ』のイメージだけではそれほどの成績をあげることはできなかっただろう。しかし『RRR』も大ヒットを記録したということは、それだけ期待値を超えたものがあったからに違いない。世界中でインド映画の興収を更新し続けているラージャマウリブランド。そもそも何がそこまで世界を魅了しているのだろうか……。

魅力を細かく挙げていったらきりがないかもしれないが、確実に言えることは、インパクト絶大な圧倒的“画力”だといえるだろう。ラージャマウリ作品はどれをとっても“画力”に満ち溢れている。本来であれば、アクション映画に使うべきワードではないのかもしれないが、フォトジェニックともいえる。どのシーンを切り取っても、それが画になるのだ。すでに販売されているブロマイドなどは商品化しやすかっただろう。それは『RRR』に限らず、『バーフバリ』シリーズはもちろん、『マッキー』や『マガディーラ 勇者転生』、などの作品を観ても感じるはずだ。

インド映画と一括りに言っても、地域や言語、文化が全く異なるのだから、インド映画監督も娯楽作品中心に制作するシッダールト・アーナンド、ローヒト・シェッティもいれば、娯楽とドラマの間で揺らぐカラン・ジョーハル、ストーリーを大切に描いていくパン・ナリン、インドの社会問題を反映した社会派なアヌバウ・シンハー、尖った作品を連発してくるアヌラーグ・カシャプなど、監督によって個性は様々。

ちなみにWOWOWでは、「『RRR』がやってくる!インド映画傑作選」として、『エンドロールのつづき』『ムトゥ 踊るマハラジャ』『ガリーボーイ』『マダム・イン・ニューヨーク』『きっと、うまくいく』『ハーティー 森の神』の6作品も放送・配信される予定となっている。

例えば『ガリーボーイ』は、インドにおけるヒップホップの在り方、イメージを変え、アングラジャンルだったヒップホップをメジャーシーンに持ち上げたことでも知られており、何より監督のゾーヤー・アクタルは、まだまだ女性が活躍していなかった頃からインド映画界で活躍し、保守的な概念を突き崩してきた監督であるし、『マダム・イン・ニューヨーク』のガウリ・シンデーも国際的な視点をもった女性監督である。

そのなかでもラージャマウリの場合は、生粋の娯楽映画作家といえる。ストーリーは王道なのだが、その見せ方というのが、エキサイティングでダイナミック……つまりは“画力”だ。その画力の原点はどこにあるのかを紐解いていくと、ひとつは家庭環境にあるのではないだろうか。

ラージャマウリの父親は『マニカルニカ ジャーンシーの女王』や『バジュランギおじさんと、小さな迷子』などの脚本家、映画監督としても有名なK・V・ヴィジャエーンドラ・プラサード。いわゆる“映画家系”なのだ。ラージャマウリ作品にも多く関わっており、『バーフバリ』シリーズは、プラサードがラージャマウリに語っていた“シヴァガミ”や“カッタッパ”といった、キャラクターの断片的な物語をひとつにまとめて映画化したものとなっているほか、『マッキー』や『マガディーラ 勇者転生』といった多くのラージャマウリ作品においての原案者となっている。

その点でラージャマウリの作家性は、確実に父の影響が大きく、常に欠かせない部分ではあるし、ストーリーテリングという側面においては父親と同じく王道路線を突っ走っているのだが、画力という部分では、ラージャマウリ独自の個性とセンスが大きく表れている。

ラージャマウリ本人が言っているわけではないが、おそらくインド映画界のなかでも映画オタクである。インド国内作品だけに限らず、とにかく多くの作品を観ているに違いない。

まずひとつにブルース・リーの作品の影響は強いだろう。『RRR』からどことなく香港映画の香りを感じとった人も多いはず。これはラージャマウリだけに限ったことではないのだが、インドではブルース・リー作品や『少林寺』シリーズなどが吹き替えで上映されており、90年代になるとケーブルテレビを通じて、多くの中国映画が観られる環境となった。

そのためインド映画のアクションシーンやストーリー構成の部分では、どうしても中国映画の影響を受けているものが多かった。ちなみにホラー映画にコメディ色が入ってくるのも中国映画の影響が強いからであり、ラージャマウリの長編監督デビュー作でもあり、NTR Jr.と初タッグを組んだ『Student No: 1(原題)』のギャグシーンも、中国映画の昭和喜劇のようなコテコテなものが強く反映されているように感じられる。

『RRR』の場合は、アミターブ・バッチャン主演作品で、インドでも語り継がれる伝説の作品『炎』へのオマージュも含まれているのだが、それに加えて、メル・ギブソン、クエンティン・タランティーノ作品の影響も強く受けている。史実とフィクションの融合という点でも『イングロリアス・バスターズ』からインスピレーションを受けているそうだ。また、変わったところでいうと、ドリームワークスのアニメ映画『カンフー・パンダ』シリーズからも強い影響を受けており、カンフー・パンダことポーがビームのキャラクター構造の下敷きとなっている部分もある。

これはラージャマウリ本人も認めていることではあるのだが、コミックやグラフィックノベル、ディズニー作品の影響も強く受けている。確かにそう言われてみると、『バーフバリ』シリーズは、『300』や『ホーリー・テラー』といったフランク・ミラーの影響を大きく受けている。余談ではあるが、日本でも7月に公開された『K.G.F』も、同じくフランク・ミラー感があった。

近年になってこそ、配信サービスやデジタル化によって、世界のコンテンツとリアルタイムにアクセスできる環境となった現在では、映画だけではなく、音楽やデザインの面においても、他国の作品に影響を受ける若い世代は多くなってきていて、その影響というのが様々な作品から感じとることができるのだが、ラージャマウリの場合は、それよりも前からということもあって、そこには映画家系だったからこそ、多くの作品に触れることができたという環境による利点は大きく働いているといえる。

ちなみに現在、インドではホラー映画ブームが巻き起こっているが、それも『死霊館』シリーズや『インシディアス』シリーズといった、ジェームズ・ワンやブラムハウスに大きく影響されたものとなっている。ほかにもヨーロッパ映画かと錯覚するほどおしゃれな作品も増えてきていたりと、新たなインド映画ムーブメントはすぐそこに来ている。

少し脱線してしまったが、ラージャマウリという監督は、とにかく視野が広く、インスピレーションを受けたものを自分のなかで美味しく料理するのが激的に上手い監督である。

ラージャマウリの作品は、人間が何を目にしたら驚くだろうかということを計算し尽くされた「どうしてこんな凄い画が!」と思えるようなシーンの連続で常にクライマックス。「飽きる」という言葉を忘れさせてしまうほどに体感時間の短いエンタメ娯楽作を連続で浴びられる「ラージャマウリ監督特集」に是非、注目してもらいたい!!

■放送・配信情報
『RRR』(字幕版)
9月30日(土)20:00〜ほか
WOWOWシネマにて放送
WOWOWオンデマンドにて同時配信

『RRR』(吹替版)
10月1日(日)23:00〜ほか
WOWOWシネマにて放送
WOWOWオンデマンドにて同時配信

「『RRR』がやってくる!インドのヒットメーカー ラージャマウリ監督」
9月27日(水)~30日(土)
WOWOWシネマにて放送
WOWOWオンデマンドにて同時配信
『マッキー』
『マガディーラ 勇者転生<完全版>』
『バーフバリ 伝説誕生<完全版>』
『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』
※『マッキー』のみアーカイブ配信もあり

「『RRR』がやってくる!インド映画傑作選」
9月29日(金)〜30日(土)
WOWOWシネマにて放送
WOWOWオンデマンドにてアーカイブ配信
『エンドロールのつづき』
『ムトゥ 踊るマハラジャ』
『ガリーボーイ』
『マダム・イン・ニューヨーク』
『きっと、うまくいく』
『ハーティー 森の神』

■WOWOW『RRR』放送記念!激アツ盛り上げ企画
【#WOWOWでRRR】同時鑑賞会
『RRR』9月30日(土)20:00スタート[WOWOWシネマ][WOWOWオンデマンド]
『RRR』を観ながら「#WOWOWでRRR」のハッシュタグを付けてポスト(旧ツイート)し 、みんなで作品を盛り上げよう!!

【プレゼントキャンペーン】
X(旧Twitter)WOWOW映画アカウント@wowow_movieをフォロー&キャンペーン告知をリポスト(旧リツイート)した人の中から、抽選で10名様に『RRR』公式グッズが当たる。(ハッシュタグ「#WOWOWでRRR」付き感想&コメントで当選確率UP)
キャンペーン詳細:https://news.wowow.co.jp/741.html

■WOWOW加入者限定キャンペーン
『RRR』を観てクイズに回答し、さらにWOWOWオンデマンドで好きな映画を一本以上鑑賞した方にプレゼント(特にWOWOWオンデマンドで「インド映画傑作選」のアーカイブ作品を視聴すると当選確率UP)

プレゼント内容:計15名様
・S・S・ラージャマウリ監督&主演2人の直筆サイン入り劇場用ポスター:3名様
・『RRR』Tシャツ(Lサイズ):6名様
・『RRR』A4クリアファイルセット:6名様
応募受付期間:9月30日(土)20:00〜10月31日(火)23:59
詳細:https://www.wowow.co.jp/plusw/

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バフィー吉川

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