除草剤〝発がん性疑惑〟の科学的事情と海外の状況

除草剤〝発がん性疑惑〟の科学的事情と海外の状況

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  • 更新日:2022/05/14
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筆者は生協などによく講演を頼まれるのですが、除草剤グリホサートとネオニコチノイド系殺虫剤は、質問が相次ぐ2大農薬。「発がん性が……」「はちが死ぬ……」「諸外国はみんな禁止になっているのに、日本は残留基準値を上げた……」などと質問責め。残念なことに間違った情報も広がっています。

グリホサートは、田植え準備で行う田起こしの前や、畑で種まきをする前、雑草を枯らすために用いることが多い(taka4332/gettyimages)

そこで、二つの農薬について解説しましょう。今回は、「発がん性疑惑農薬」などと喧伝されるグリホサートをめぐる科学的事情と海外の状況を詳しくお伝えします。非常に複雑です。でも、これが科学なのです。

登録されてから30年以上経過した除草剤

グリホサートは、米国モンサント社が開発し、日本では1980年に農薬として登録された除草剤の成分名称です。非選択性、つまりあらゆる作物、雑草の区別なく枯らす作用を持ちます。「グリホサートはベトナム戦争で使われた枯葉剤だ」という情報がネットにはありますが、これは荒唐無稽。グリホサートは枯葉剤とはまったく異なる化学物質です。

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(出所)食品安全委員会評価書写真を拡大

グリホサートは「シキミ酸経路」という、微生物や植物は持っており哺乳類にはない生合成系に作用し除草効果を示します。世界各国の安全性評価機関が「適切に使用すれば安全」と認めてきました。

以前からよく使われてきましたが、96年にグリホサート耐性を持つ遺伝子組換え作物の栽培が始まり、使用量が急増しました。現在は、百数十カ国で登録認可され、世界でもっとも使用量の多い除草剤成分です。

グリホサートは成分名なので、農薬としての製品名はさまざま。日本でも100以上の製品が売られています。その中でも、ラウンドアップというブランドの製品がもっとも有名です。

日本では主に、果樹園の雑草を枯らしたり、水田で田植え準備のため、土を耕す「田起こし」の前や、畑で種蒔きをする前の雑草防除に用いられています。

ちなみに、グリホサートは日本では、〝農薬として使用することができない除草剤〟製品の成分としてもよく使われています。これらは、農作物等の栽培・管理や、公園、緑地等の管理には使えませんが、道路やグラウンド等では使ってよい製品です。ホームセンターなどによく売ってありますので、気づかぬまま家の前の道などにグリホサートを便利に使っている市民も実は少なくないでしょう。

しかし、このグリホサートが現在は、発がん性を疑われています。これには二つの大きなきっかけがありました。

実験結果を論文と映画で発表

2012年9月、フランスのセラリーニ(Gilles-Éric Séralini)という科学者が、ラウンドアップ耐性トウモロコシやラウンドアップを溶かした水で2年間飼育したラットで、死亡率や腫瘍が増加したと論文発表しました。論文は大きながんができたラットの写真を掲載するなどセンセーショナルなもので、セラリーニは論文と同時に映画制作を発表するなどしてメディアの脚光を浴びました。

これに対して、欧州食品安全機関(EFSA)は11月、「研究に深刻な欠陥があり、従来の安全性評価を見直す必要がない」と結論づけました。日本の食品安全委員会も、同様の見解を公表。ドイツ連邦リスク評価研究所 (BfR)、カナダ保健省、オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)なども同じ判断でした。

論文は最初に掲載した学術誌からは「科学的な水準に達していない」として取り下げられましたが、別のグレードの低い学術誌に掲載されています。

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最初に掲載された学術誌からは「科学的な水準に達していない」として取り下げ(Retracted)された

国際機関が「ヒトにおそらく発がん性がある」と発表

15年には、世界保健機関(WHO)の外部機関である国際がん研究機関(IARC)がグリホサートと殺虫剤マラチオン、ダイアジノンという三つの農薬について、グループ2Aの「ヒトに対しておそらく発がん性がある」に分類しました。

IARCは、動物にグリホサートを投与する実験でがんが発生するという研究結果が複数あること、グリホサートを散布する農業者で非ホジキンリンパ腫の発生率が高いなどの調査結果が複数あることなどを発がん性の科学的根拠として挙げています。およそ1000の研究結果を検討し、結論に至った、とのことです。

興味深いことに、マラチオン、ダイアジノンという二つの農薬も、日本で普通に売られているのにほとんど話題となりません。グリホサートのみが発がん性を盛んに喧伝されています。

諸外国の公的機関は否定

一方、欧州食品安全機関(EFSA)は同年、グリホサートについて「ヒトに対して発がん性のハザードを有する可能性は低い」と見解を公表。IARCが発がん性ありと判断した動物試験の結果も検証したうえでの結論でした。ヒトの非ホジキンリンパ腫についても、「エビデンスが非常に限定的であり、グリホサートとがんの因果関係は結論づけられない」としています。

さらに17年、欧州化学品庁(ECHA)はグリホサートについて「発がん物質に分類しない」と公表しました。これらにより、欧州連合(EU)では17年から22年12月まで5年間、グリホサートを農薬として使用することが認められています。

16年には国連食糧農業機関(FAO)とWHOが設置している合同残留農薬専門家会議(JMPR)も概要報告書を公表。「グリホサートは、食事由来のばく露で、ヒトに対して発がん性のリスクをもたらすとは考えにくい」と結論しました。

米国環境保護庁(EPA)も同年、「ヒトに対する発がん性があるとは考えにくい」と判断しています。さらに20年、グリホサートに関する規制の中間レビューにおいても、同様の見解を示しています。

日本の食品安全委員会も16年、発がん性、遺伝毒性はない、と評価書をまとめました。そのほか、ドイツやスイス、豪州、カナダなど諸外国の機関は軒並み、発がん性を否定しています。

なお、EUは、グリホサートの使用承認が22年12月に切れるため、その後の使用を認めるかどうか現在、EFSAとECHAが再評価を行なっています。EFSAでは、フランスなど4カ国で構成する作業部会が21年6月、報告書案を公表しました。「生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性の根拠はない」という内容です。

この作業グループの報告書案は、約7000の報告書、論文を精査し、1万2000ページにも及ぶものです。前回、17年に使用を5年間認める、という決定を下した時の報告書は、ドイツなどが構成する作業部会が約1000の報告書や論文を検討し、「発がん性はない」などの結論を下しました。これに対して、市民団体などから「開発者であるモンサントの圧力があり、不都合な論文が採用されなかった」などの批判が出たため、今回は検討対象の文献が膨れ上がったようです。国としてグリホサート追放へと強い姿勢を見せているフランスが作業部会に加わり、科学的に検討した結果が発がん性の否定でした。

現在はパブリックコメントが終わり、最終的な報告書案のまとめに入っているところです。予定では、22年の下半期に報告書が公表されることになっていましたが、5月10日に再度発表があり、パブリックコメント等が3000近くに上り精査、回答するため、最終的な報告書公表は23年7月になる見込みです。

見解が分かれる原因は主に三つ

IARCとEUや米国をはじめとする多数の公的機関で見解が分かれている理由としてとかく、企業の圧力が……などと語られますが、実際には科学的な理由があります。主に次の三つの事情です。
(1)ハザード評価かリスク評価か
(2)どのような質のデータを評価に用いるか
(3)体に取り込むルートを問わないか、残留農薬として食べて摂取するルートに限定するか

(1)ハザード評価かリスク評価か

リスクは、「ハザード」と呼ばれる物質の特性と、その物質をどの程度、体に取り込むかという「摂取量」という二つの要素により、大きさが変わってきます。そのため、よく次のような関数で表現されています。

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ハザードとして発がん性が認められたとしても、摂取量により、体への影響の大きさ、つまりリスクの大きさは変わってきます。

IARCはがんリスクの大小を判断しているわけではない

IARCは、さまざまな物質や食品等をグループ分けしていますが、その判断は、発がん性の証拠、すなわちエビデンスがどの程度、強固であるか、によるものです。

グループ1は、「ヒトに対して発がん性があるという十分な証拠がある」もの。グループ2Aは証拠が十分とは言えないもので、グループ2Bになるとさらに、根拠が弱くなります。

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(出所)国際がん研究機関(IARC)ウェブサイト写真を拡大

IARCがグリホサートについて検討したのは、発がん性を持つハザードになりうるかどうか、ということだけ。発がん性の強さや、摂取量も含めたヒトに対するリスクの大きさを評価して分類したわけではありません。

これに対して、各国の食の安全に関わる政府機関は、食べる場合の発がん性のタイプ(遺伝子を傷害する「遺伝毒性」があるかどうか。ある場合には農薬としては認められない)や発がん性の強さ、さらに摂取量も含めたリスクについて評価しています。その結果、「適正に使われていれば、食べる場合のリスクは無視できる」としています。

(2)どのような質のデータを評価に用いるか

さらに話をややこしくするのが、それぞれの機関がどんなデータをもとに発がん性を判断しているか、ということ。IARCは、公表された学術論文からデータを収集し判断します。一方、各国の政府機関は主に、GLP適合/経済協力開発機構(OECD)ガイドラインに準拠した動物試験の結果を中心に収集しています。論文としては非公表の企業等が実施した試験結果も含めて、判断しています。

この違いが、一般の人たちにはたいへんわかりにくいものなのです。

学術論文は再現性がないものが多い

かなり簡略化して説明すると、学術論文は研究者が主に、新しい知見を公表するものです。冒頭で紹介したセラリーニの「ラウンドアップ耐性トウモロコシを食べさせたら……」というような実験結果です。しかし、試験の設計の仕方や動物の数、研究施設・測定機器の管理、飼料の管理等は研究者に任されています。そのため、セラリーニの論文に限らず、質が低く再現性が得られない学術論文が多数あります。

一方、GLP適合/OECDガイドラインに準拠した動物試験というのは、詳細なルールがあらかじめ定められています。試験を実施するのは専門の教育・訓練を受けた人。かなりの設備や分析機器等を備えていなければならず、試験に供する動物の数も、1群50匹以上などと決められています。施設や測定機器、飼料など、すべて記録し、試験者以外によるチェックが求められ、行政も折々、試験を行う組織に対して査察を行います。つまり、第三者がデータの質を保証することになるのです。

その結果、施設や実験者等を変えて同じ試験を行っても、同じ試験結果が得られます。その代わり、試験実施には相当なコストがかかります。

農薬開発の場合、企業内で費用が比較的少なくてすむ予備的試験をさまざま行いながら開発を進めます。新規物質のアイデアが他社に知られては困るので、この結果は学術論文としては発表されないことがほとんどです。

最初は数千〜数万あった農薬の候補物質が、効果や毒性、環境影響などの観点から吟味され問題のあるものが排除されて行き、商品化できそうなものに絞られます。そのうえで、農薬メーカーは、GLP適合/OECDガイドラインに準拠した動物試験を自社で行なったり委託して実施したりして、結果を各国の政府機関に提出し、農薬としての審査を受けるのです。

学術論文になった動物試験とGLP適合/OECDガイドラインに準拠した動物試験のどちらがよいとか悪い、というものではありません。たとえば物質に発がん性があるかどうか、関心のある研究者がとりあえず調べようという時、いきなり、お金がかかり多数の動物個体を対象とするGLP適合/OECDガイドラインに準拠した動物試験を行うことはできません。

まずは、自身の研究室で小規模、それほどの費用を要しない試験を、用いる動物の個体数も絞って行う。そこで発がん性がみられたら学術論文として発表する、というのは当然です。しかし、試験の質が低く間違う場合もある、ということなのです。

学術論文にはパブリケーションバイアスもある

また、学術論文にはパブリケーションバイアス(出版バイアス)もあります。少数の動物を用いた試験の結果は、同じようにやっても結果がかなりばらつくものなのです。

たまたま「発がん性がある」という結果が出た試験結果だけは学術論文になり、「動物に投与したけれど、発がん性がなかった」というような当たり前の試験結果は、新規性がないとして往々にして学術論文にはなりません。このようなバイアスがあるのは、科学者ならだれもが知る事実です。

IARCは、がんに関する知見をいち早く見出し、ほかの機関によるがん研究を促し、世界におけるがんの脅威を小さくしてゆこうという組織です。したがって、新しい知見が出てくる学術論文を尊重するのは当然のこと。IARCの分類も参考にしながら、ほかの研究機関が発がん性のタイプや強さ、リスクを調べてゆきます。

一方で、各国の政府機関は、農薬としての製造や使用を認めるかどうかを判断するためにリスク評価を行うのですから、間違いも多い学術論文を主たる根拠とするわけには行きません。したがって、主に農薬メーカーが提出したGLP適合/OECDガイドラインに準拠した動物試験で得られた、第三者が質を担保した試験結果を判断の核に据え、学術論文の結果も研究の質を判断したうえで取り込む、という姿勢になります。

グリホサートについても、各国の政府機関はGLP適合/OECDガイドラインに準拠した動物試験と学術論文の両方を検討し、発がん性を否定しています。企業が、GLP適合/OECDガイドラインに準拠した動物試験を行った場合、企業の知的財産権の一部となり結果や内容は非公表とされていることが多く、政府機関は個別に開示を受けてリスク評価を行い、結論をまとめます。

しかし、この手続きが一部の市民団体からは「農薬企業が提出した非公表のデータからの判断は信用ならん」と見えてしまう、というわけです。

(3) 体に取り込むルートを問わないか、残留農薬として食べて摂取するルートに限定しているか

三つ目の、ヒトが取り込むルートの違いも、わかりにくい話です。リスクの評価をする際には、食べて消化管経由で取り込む経口ルートか、吸入ルートか、あるいは皮膚に付いて皮膚に影響するのかなど、ばく露のルートをきちんと区別して検討します。

それぞれ作用メカニズムが異なることが多く、とくに消化管経由の場合には消化によって物質が分解代謝されることも少なくないからです。逆に、消化管内で分解されることによって毒性が強くなる化学物質も中にはありますので、体に取り込むルートの検討は極めて重要です。

IARCの判断の大きな根拠は、前述したように農業者を対象とした調査で、非ホジキンリンパ腫との関連が認められることで、「ヒトで限定的なエビデンスがある」としました。食べるルートではなく、主に散布した時に吸い込んだり皮膚へ付いたりした結果です。そのほか、動物に大量に食べさせた時の毒性を判断し、それがヒトにおいても起こりうるかどうかを細胞実験や動物実験等から検討し、「ヒトにおそらく発がん性がある」としました。

一方、各国の食の安全に関わる政府機関は、ヒトが食べた場合のリスク評価を行い、「発がん性はない」と判断しています。FAO/WHO合同残留農薬専門家会合 (JMPR)においても、「グリホサートは マウスでは極めて高い用量で発がん性を有する可能性を排除できないものの、ラットでは発がん性を有さないこと、職業ばく露由来の疫学調査結果を考慮しても、食品を介した農薬の摂取においては、グリホサートはヒトに対し発がん性を示さない」と結論づけています。

日本の食品安全委員会も16年に評価書をまとめた際、動物に経口投与した試験などから、「発がん性、遺伝毒性はない」と判断しました。IARCが非ホジキンリンパ腫との関連でエビデンスとした米国の農業者に対する調査結果は審議の中で検討したものの、「グリホサートのばく露量の情報がなく再現性も不明である」として評価には用いませんでした。

「ヒトが食べる場合の発がんリスク」確認の公的機関はない

さて、三つの事情、理解していただけたでしょうか。非常に複雑、かつ、専門的で、一般の人たちにはわかりにくい内容です。

グリホサートについて明確に言えるのは、「人が食べる場合に発がん性があるか?」という点については「ある」と断言する公的機関はなく、多くの機関は否定し、IARCも判断していない、ということです。そして、口からの摂取ではなく吸入などによりばく露しているとみられる農業者については、非ホジキンリンパ腫のリスク上昇がみられる、という調査報告はたしかにありますが、研究の質に対する判断は割れています。

残念なことに、この複雑な三つの事情を説明しないまま、「発がん性疑惑農薬が大量に残留した食品を、私たちは食べさせられている」などと伝える書籍や報道があるのです。 (1)〜(3)を説明せず発がん性という言葉を持ち出すのは、フェアな言論・報道とは言えないように私には思えます。

日本人の摂取量は許容摂取量の0.1%より少ない

ちなみに、日本でのグリホサートの平均摂取量は、厚生労働省が調べています。全国8地域で、スーパーマーケットで売られている食品を購入し、調べたものです。

グリホサートは食品安全委員会のリスク評価によれば、体重55キログラムの人であれば全生涯にわたって毎日、55ミリグラム(=5万5000マイクログラム(μg))を食べても健康への悪影響がないとされていますが、20年度の調査では、平均1日摂取量は7.92 〜 17.08μgです。

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(注)グリホサートの許容1日摂取量(ADI)は 1 mg/kg体重/日。体重55 kgの人であれば、全生涯にわたって毎日、55mg(=55000μg)を食べても健康への悪影響がないとされている (出典)厚労省調査写真を拡大

米国での裁判は、表示をめぐる問題

なお、こうした科学的な評価とは別に、米国では裁判が起こされており、一部の国は使用を規制していますので、これらの情報も簡単にお伝えしましょう。

米国では、モンサント社を買収したバイエル社が販売する製品ラウンドアップをめぐり裁判が起こされています。ラウンドアップを使用した農家や家庭菜園で使った市民らが、がんになったとして裁判を起こし勝訴しています。しかし、21年の二つの裁判では逆に、バイエル社が勝ちました。同社は以前に負けた裁判についてもレビューするよう、連邦最高裁判所に上訴しています。

裁判では、発がん性があるかどうかの科学を検討しているわけではありません。主な争点は、がんになる可能性を購入者に示していたかどうかのようで、バイエル社はどの裁判でも「発がん性はない」ということを一貫して主張しています。

また、使用規制を課している国々もあります。フランスは19年12月には、遺伝毒性に関する情報が十分でないとして流通量の4分の3に相当するグリホサート製品の登録を取り消しました。また21年には、グリホサートを使わない農業者に対する税制優遇措置を始めています。

EUでは、オランダが個人使用を全面的に禁止。オーストリアやベルギー、イタリア、デンマークなども使用を制限しています。また、メキシコも段階的使用禁止に踏み切っています。

ただし、一部の報道にあるような「世界的に禁止の流れ」にあるとは言えません。普通に使われている国の方が圧倒的に多いのです。また、全面禁止の国は少なく、多くの国が一部の使用方法に規制を課しています。JMPRやEFSA等のリスク評価を見て、使用禁止を解除した国もあります。

日本では農薬再評価制度が始まる

グリホサートの発がん性問題は今後、EFSAが最終的にどのような報告書をまとめるかが、大きな焦点となりそうです。それにより、各国の規制も変わってくるかもしれません。

日本では、昨年度から農薬の再評価制度が始まりました。グリホサートも、最初に再評価に着手する農薬の一つとなっています。農薬メーカーが新たな知見も含むデータを国に提出しており今後、食べる場合の安全性については内閣府食品安全委員会と厚労省の審議会が、使用する農業者の安全については農水省が、栽培時の環境影響については農水省と環境省が検討します。

内閣府食品安全委員会は、農薬メーカーからの提出データだけでなく、必要に応じて新たなデータを要求したり、学術論文も収集してそれらを含めリスク評価をすることにしています。予断なく、試験条件や結果等のデータを科学的な信頼性を確認しながら、リスク評価してゆく予定です。

(本記事の内容は、所属する組織の見解を示すものではなく、ジャーナリスト個人としての意見に基づきます)

<参考文献>
Séralini GE et al, Republished study: long-term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize. Environ Sci Eur. 2014;26(1):14.
Final review of the Séralini et al. (2012a) publication on a 2-year rodent feeding study with glyphosate formulations and GM maize NK603 as published online on 19 September 2012 in Food and Chemical Toxicology. EFSA Journal 2012;10(11):2986.
食品安全委員会会議資料5-2・除草剤グリホサート耐性トウモロコシ NK603 系統の毒性発現に関する論文に対する見解(2012年11月12日)
国際がん研究機関・IARC Monograph on Glyphosate
欧州食品安全機関(EFSA).Glyphosate
アメリカ環境保護庁(EPA)・EPA Releases Draft Risk Assessments for Glyphosate For Release: December 18, 2017
アメリカ環境保護庁(EPA)・Interim Registration Review Decision and Responses to Public Comments for Glyphosate:In January 2020
FAO/WHO合同残留農薬専門家会合 (JMPR)・Results of joint FAO/WHO Meeting on Pesticide Residues (JMPR)
内閣府食品安全委員会食品安全関係情報詳細・欧州食品安全機関(EFSA)、欧州連合加盟国4カ国が実施したグリホサートの評価報告書案を受理し、EFSAと欧州化学品庁(ECHA)が更新評価のレビューを開始すると公表(2021年6月15日)
国際がん研究機関(IARC)・Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1–131
Nature ダイジェスト. 医学生物学論文の70%以上が、再現できない! 2013; 10(11)
厚労省・食品中の残留農薬等
中西希代子ら.マーケットバスケット方式によるグリホサートの一日摂取量の推定. 日本食品化学学会誌、2013; 20(1),37.
Reuters・Bayer wins second straight verdict in a Roundup cancer case 2021年12月10日)
The legal examiner・Roundup Lawsuits Update: Still Waiting To See If Supreme Court Will Get Involved(2022年4月19日)
食品安全委員会・食品安全セミナー「農薬の再評価」資料

松永和紀

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