筋トレでは「上げる」より「下ろす」動作を重視せよ

筋トレでは「上げる」より「下ろす」動作を重視せよ

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/06/23
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効率よく筋トレをするには、「下ろす動作」のほうが大事だとか。その理由と効果的なトレーニングのやり方をご紹介します(写真:foly/PIXTA)

ウィズコロナの過ごし方が注目され、少しずつ以前の日常を戻している今日この頃。「前より体が重い」「以前のように動けない」など、体力の衰えを実感している人も多いのではないでしょうか。

テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体をつくるメソッドを伝授する本シリーズ。今回は前回に引き続いて、「エキセントリック・トレーニング」についてお伝えします。

前回は、効率よく筋トレを行うには、重りを持ち上げる動きを強調する“コンセントリック・トレーニング”よりも、下ろす動きを強調する“エキセントリック・トレーニング”が重要ということをお伝えしました。

最小限の努力で最大の効果を引き出すエキセントリック・トレーニングですが、エキセントリックな筋肉の収縮は、日常生活の動作でも現れます。以下の3つの動作のなかで、エキセントリック運動にあたるのはどれでしょうか?

A 自転車をこぐ
B 水の中を歩く
C 下り坂を歩く

伸びながら力を発揮する動作はどれ?

答えは、「Cの下り坂を歩く」です。簡単すぎましたでしょうか?

自転車をこぐのも水中で歩くのもよい運動ですが、これらの動作はすべて基本的に筋肉が縮みながら力を発揮するコンセントリックな収縮であり、エキセントリックな収縮は現れません。

これに対して坂道を下る際には、前側にある脚の筋肉は体にかかる重力に対してブレーキをかけるために、伸びながら力を発揮するエキセントリックな収縮をします。

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おさらいになりますが、自分の体を含め、重りを持ち上げる際に筋肉はコンセントリックな収縮をし、重りを下ろす際に筋肉はエキセントリックな収縮をします。

通常の筋力トレーニングでも、重りを上げる時間を短くし、重りを下ろす時間を長くすることで、エキセントリック・トレーニングに切り替えることができます。

それ以外にも以下のような方法を用いると、エキセントリック・トレーニングが可能になります。

①負荷を軽くして重りを上げる

パートナーがいれば、重りを持ち上げる動作をパートナーにサポートしてもらい、下ろす動作だけを自力で行えばエキセントリック・トレーニングになります。ただ、専門的なサポートのためパーソナル・トレーナーが必要となり、一般の方たちにとっては現実的ではないかもしれません。

一人でも重りを上げる際の負荷を弱め、重りを下ろす際の負荷を強める方法はあります。

例えば、腕立て伏せで、床に伏せた状態から脚を床に着けたまま腕を伸ばせば、負荷を半分程度に減らすことができます。腕を伸ばして上体を反らしたあと、お尻を引き上げて体を真っすぐにし、今度は負荷を強めた状態で腕を曲げて体を下ろしていきます。詳しい動きはのちほどイラストで説明します。

そのほか、ウエイトトレーニングだと、両腕・両脚で重りを上げて、片腕・片脚で重りを下ろすという方法もあります。スクワットでは、両脚で立ち上がったあと、片脚を半歩下げて、前側の脚の力だけで体を沈めていきます。

「代償動作」や「反動」を使ってみる

②代償動作を用いて重りを上げる

代償動作とは、「その運動には本来必要のない動作」を指します。あえて代償動作を取り入れることで、コンセントリックな収縮を弱めることができます。

例えば、下半身の筋肉を鍛えるスクワットでは、あえて腕の振りという代償動作を利用しながら立ち上がります。こうすることで下半身の筋肉にかかる負荷を弱めるのです。そして、立ち上がったあとは、腕の動きは使わず、下半身の動きだけでゆっくりと体を下ろします。

ペットボトルやダンベルなどを用いる上肢の筋トレでは、脚の屈伸という代償動作を利用することで上肢にかかる負荷を減らします。その一例として、肩の三角筋を鍛えるサイド・レイズというトレーニング法をのちほどイラストでご紹介します。

③反動を用いて重りを上げる

反動とは、文字通り反対方向への動作です。

筋肉が瞬間的に強く伸ばされると、弾性エネルギーというエネルギーが筋肉にたまります。このエネルギーを利用すると、ラクに重りを上げることができます。また、筋肉が伸ばされる際には反射的に収縮する伸張反射という防御機能が働いて、筋肉は強く縮みます。反動を使って弾性エネルギーと伸張反射を利用することで、ラクして重りを持ち上げるのです。

素早く膝を曲げてからジャンプをすると高く跳べるのに、膝を曲げた状態をしばらくキープしてからジャンプをすると高く跳べないのは、弾性エネルギーと伸張反射が使えずに筋力だけで跳ぶからです。

例えば、腹筋運動をする際、床に仰向けになりながら少しだけ背中を丸めておき、(頭をぶつけない程度に)上体を床側に反らせて、一度強く腹筋を伸ばしてから、上体を起こせば、伸張反射と弾性エネルギーが使えるので、ラクに起き上がることができます。その後はゆっくりと上体を床に下ろして腹筋を伸ばしていきます。

エキセントリック・トレーニングを安全かつ効率よく行うためのポイントをまとめたので、参照ください。

1.フォーム

コンセントリックな収縮をする(重りを持ち上げる)局面ではフォームが崩れても構いませんが、エキセントリックな収縮をする(重りを下ろす局面)では、鍛えたい筋肉だけを使って重りを下ろします。下ろすときはフォームを崩さないようにしましょう。エキセントリック・トレーニングの意味が半減してしまいます。
なお、前回お話をしたように、重りを一旦床に落とすなどして、その反作用を用いてしまうとエキセントリックな収縮がおろそかになるので、重りを落とさない、床にぶつけないことも大切です。

2.呼吸

「上げ=吐く、下げ=吸う」が筋力トレーニングの原則ですが、重りをゆっくり下ろすエキセントリック・トレーニングをする場合、逆にして「上げ=吸う、下げ=吐く」にしたほうがやりやすいでしょう。

というのも、息を吐くことは口をすぼめるなどして時間を伸ばしやすいのですが、息を吸う際には気圧によって勝手に空気が肺に取り込まれるため、時間を伸ばしにくいからです。

初めは無理せず2秒からはじめる

3.動作スピード

先に紹介した①~③の方法では、コンセントリックな収縮にかける時間の目安は1秒かそれ以下、エキセントリックな収縮にかける時間は2~5秒 です。無理をせず2秒から始めて、筋力の向上に応じて少しずつ5秒まで時間を伸ばしていきましょう。

4.回数、セット数、休息時間

通常の筋トレでは1回の動作は3~4秒程度ですが、エキセントリック・トレーニングでは、4~6秒を要します。そのぶん筋肉にかかる負担が大きくなりますので、回数は通常の筋トレよりも少し少なめの4~8回にしましょう。4~8回反復したあと、約1分間の休息を挟んで3セット行うのが理想です。

筋肉は筋線維という髪の毛1本分ほどの細い線維の集まりで、1回の収縮には一部の筋線維しか参加しません。3セット行うことで、まんべんなく筋線維を使うことができます。

5.トレーニング頻度

通常の筋トレでは2日程度の休息を挟んで週に2~3回行うのですが、エキセントリック・トレーニングは筋肉に対するストレスが大きいため、3日の休息を挟んで週に2回にしましょう。

では、トレーニングのやり方について説明いたします。

腕や胸、肩を鍛える筋トレ2つを紹介

■エキセントリック・プッシュアップ(胸の大胸筋、肩の三角筋、二の腕の上腕三頭筋を鍛える)
①床にうつ伏せになって足首を直角に曲げ、両手を肩幅より広めに開いて胸の横におく。胸を張って肘は高く立てておく
②太ももを床に着けたまま、息を吐きながら1秒で肘を伸ばして上体を持ち上げる。(コンセントリックな収縮)
③一度太ももを引き上げて全身を真っすぐに伸ばしてから、息を吸いながら2~5秒かけて肘を曲げて上体を床に下ろしていく(エキセントリックな収縮)
※この動作を4~8回繰り返し、1分程度の休息を挟んで3セット行う。2~3日の休養を挟んで週に2回行う

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■エキセントリック・サイドレイズ(肩の三角筋と僧帽筋を鍛える)
①足を軽く開いて、つま先を正面に向けて膝を軽く曲げる。ペットボトルまたはダンベルを持って肘を軽く曲げる
②膝を曲げて上体を沈ませたら、1秒で膝を伸ばし、その勢いを利用して両腕を横に広げる(コンセントリックな収縮)
③膝を軽く曲げて立ち、息を吸いながら2~5秒かけて腕を体側に向けて閉じていく(エキセントリックな収縮)
※この動作を4~8回繰り返し、1分程度の休息を挟んで3セット行う。2~3日の休養を挟んで週に2回行う

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イラスト:竹口睦郁

(坂詰 真二:スポーツ&サイエンス代表、フィジカルトレーナー)

坂詰 真二

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