Ado×中田ヤスタカの『ワンピース』主題歌、ガチなコラボに感じた新境地

Ado×中田ヤスタカの『ワンピース』主題歌、ガチなコラボに感じた新境地

  • bizSPA!フレッシュ
  • 更新日:2022/08/06

8月6日公開の映画『ONE PIECE FILM RED』。人気の歌い手・Adoの主題歌「新時代」(作詞・作曲 中田ヤスタカ)が素晴らしい出来栄えです。

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※「新時代」のYouTubeより

一昨年の大ヒット「うっせぇわ」が社会現象となったAdoですが、今回はネタ的な要素は一切なし。ボーカリストとソングライターが高い次元で拮抗する緊張感あふれる一曲になっています。

Adoの歌唱力を信頼しているのがわかる

曲はフリーテンポの独唱から始まります。裏声と吐息を織り交ぜたトーンで、ゆったりとしていながらもたつきを感じさせません。タイミングのセンスと滑舌のよさのおかげで言葉尻が流れずに聞こえる。

大胆で鮮烈なアレンジメントからも、中田ヤスタカがAdoの歌唱力を信頼していることがわかります。

そこから楽曲は怒涛の展開を見せます。疾走感溢れる演奏に重厚なサウンド。単純な8ビートも突き詰めるとこれほどの説得力を持つ。リズムこそが根源であることを強く主張する作りになっています。各楽器の音数やフレーズも極めて抑制的。曲にとって効果的な音だけが残っている。

特に印象に残るリフレインは

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Ado 新曲「新時代」

特に歌に入る前のリフレインが印象に残ります。エレキギターとシンセサイザーをミックスしたような音で4分音符が下降していくだけのメロディ。GのコードからAのコードを経てEマイナーへと至る3小節の中で、長調から短調へのワープを明快に因数分解してみせる合理性。

楽器初心者でもコピーできるほど簡単なフレーズなのに音楽的には雄弁です。選びぬかれた音階がその道筋をはっきりと照らしているのですね。

足し算や掛け算ではなく引き算と割り算で音楽をとらえる。中田ヤスタカのサウンドが厳しくも心地よい理由だと思います。

語句の持つ響きを活かすAdoの歌

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アルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』ジャケット ©尾田栄一郎/ 2022「ワンピース」製作委員会

作曲者の意図を正確に把握したAdoの歌も圧巻です。おおげさな演劇性は鳴りを潜め、語句の持つ響きを活かすように歌っているのです。

<ジャマモノ やなもの なんて消して
この世とメタモルフォーゼしようぜ ミュージック
キミが起こす マジック>

ストレートな8ビートとシンコペーションのせめぎ合いがスリリングなメロディ。打楽器みたいに歯切れの良いボーカルがリズムの強弱を際立たせます。けれども、力は抑えめ。楽曲全体のトーンを設定するぐらいにとどめているのですね。

ここで抑えているからサビでの爆発が効いてくる。楽曲のタイトルでもある<新時代>に込めるパワーが意味を持つわけです。「うっせぇわ」、「ギラギラ」、「踊」にはピンとこなかった筆者ですが、失礼しました。Adoはすごい歌手です。

中田ヤスタカの新境地にも

加えて「新時代」が新鮮なのはお互いにとって新境地になっている点です。これまでの中田ヤスタカはPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅなどの無機質なボーカルとセットでした。

しかし、Adoの歌が彼のエモーショナルな部分を引き出したように感じます。意外にロックなのです。米津玄師との「NANIMONO」や湘南乃風との「一番歌」でも感じることのなかった濃密な攻撃性。中田ヤスタカにそういう力を感じたのは初めてのことでした。

Adoのボーカルも凄みを増しています。骨太なサウンドに対して声を淡々と配置していく抜け感がメリハリを生んでいる。言葉の伝わり方が段違いに良くなりました。お互いを上のステージへと押し上げる相乗効果が圧倒的なグルーヴ感につながっていると感じます。

これぞコラボレーション。納得の一曲でした。

<TEXT/音楽批評 石黒隆之>

【石黒隆之】

音楽批評。ipodに入ってる曲は長調ばかりの偏食家

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