来春始動「こども家庭庁」は選挙に向けた人気取りで終わるか。“こどもの命”と”少子化対策”、どちらを重視?=原彰宏

来春始動「こども家庭庁」は選挙に向けた人気取りで終わるか。“こどもの命”と”少子化対策”、どちらを重視?=原彰宏

  • マネーボイス
  • 更新日:2022/06/24
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来年4月の「こども家庭庁」発足に向け、政府は17日に「設立準備室」を設置しました。いじめや虐待、少子化などの課題を解決する司令塔となることが期待されています。しかし中身を見ると、どうしても問いたいテーマが出てきます。「こども家庭庁」は、こどもの命を守るためのものなのか。それとも、少子化対策のためのものなのでしょうか?(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

来年4月に設置「こども家庭庁」とは?

来年4月の「こども家庭庁」の発足に向け、政府は17日に「設立準備室」を設置しました。

準備室では予算や人員の確保などに加え、子どもの教育や保育の実務を担う地方自治体や民間企業とのネットワークづくりに取り組む方針です。

準備室は職員およそ80人体制で業務を開始し、今後、内閣府の子ども・子育て本部や厚生労働省の子ども家庭局の職員のほか、民間企業や地方自治体からも人材を起用して、合わせて300人ほどの規模とする予定で、全員が「こども家庭庁」の職員に移行するということです。

さらに、民間や地方自治体との人材交流も積極的に行うとしているとのことです。

いまこども政策を担当しているのは、内閣府の「子ども・子育て本部」と、厚生労働省の「こども家庭局」で、この組織をごそっと「こども家庭庁」に移動させるようで、これが職員規模300人になるようです。

同じ子ども政策をしている文部科学省と、厚生労働省の中でもこどもの医療に携わる部門は「こども家庭庁」に移管しないようです。

あれ、全面統合ではないのですね…。なんか、各省庁間の既得権益を守るせめぎあいの跡が、伺えそうですね。

「こども家庭庁設置法」や、去年12月に閣議決定された基本方針によれば、総理大臣直属の機関として内閣府の外局に「こども家庭庁」は設置され、子ども政策担当の内閣府特命担当大臣を置いて、各省庁などに子ども政策の改善を求めることができる「勧告権」を持たせるとしています。

「勧告権」とは、複数の行政機関にまたがる問題について、役所の縄張り意識や縦割り行政の弊害を越えて解決できるよう、他の行政機関(あるいはその長)に対して意見を提出できる権利のことです。

ただ実際にこどもの支援等を行うのは、依然、各省庁であったり地方自治体であったりする部分もあります。

勧告をするのは良いが、実際に動いてくれているのかどうかのチェックはどうするのか、実際にこどもたちに直接支援が行き届くのかどうかに対してどこが責任を持つのかは、はっきりさせてほしいです。

先程の文部科学省や厚生労働省医療部門の統合への抵抗が、組織の一本化を阻んでいる中での「勧告権」って、実際どう機能するのでしょうね。

子どものため?それとも、少子化対策のため?

庁内には有識者などをメンバーとする「こども家庭審議会」が設置され、子どもや子育てに関する重要事項や、子どもの権利や利益を擁護するための調査や審議が行われる予定になっています。

子どもの意見を政策に反映させるため、直接意見を聞き取ることも必要に応じて実施することになっているとのことです。また、今回の法律には、5年をめどに組織や体制のあり方を検討し、必要に応じて見直す規定も盛り込まれています。そのときどきの時代の求めに応じて、臨機応変に組織を変えることができるようになっていると説明しています。

ここで、どうしても問いたいテーマがあります。

「こども家庭庁」は、こどもの命を守るためのものなのか。それとも、少子化対策のためのものなのか。

「こども家庭庁設置法案」の概要

ここで「こども家庭庁設置法案」の概要を見てみましょう。

こども(心身の発達の過程にある者をいう。以下同じ。)が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向け、子育てにおける家庭の役割の重要性を踏まえつつ、こどもの年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、こども及びこどものある家庭の福祉の増進及び保健の向上その他のこどもの健やかな成長及びこどものある家庭における子育てに対する支援並びにこどもの権利利益の擁護に関する事務を行うとともに、当該任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とするこども家庭庁を、内閣府の外局として設置することとし、その所掌事務及び組織に関する事項を定める――

とあります。なんのこっちゃ~。霞ヶ関文学は読解困難ですね。さっぱりわかりません。

「子育てにおける家庭の役割の重要性」という部分だけが、無理やり押し込んだイメージがあり、偏見かもしれませんが「家庭」という言葉を省庁名に無理やり入れたことによるものかと思ってしまいます。

それで、こどもの利益だの権利だの言っていますが、いったい何をどうするところなのでしょう…。

やはり同じ「問い」が浮かびます。「こども家庭庁」は、こどもの命を守るためのものなのか。それとも、少子化対策のためのものなのか。

新しい省庁を作らないと「縦割り」は解消できないのか?

マスコミでの解説記事には、「こども家庭庁」を説明する前置きとして、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は去年1.30で、6年連続で前の年を下回っているという、日本を取り巻く子どもをめぐる状況を持ち出してきています。

この流れで、「こども家庭庁」創設の意義を、少子化に歯止めがかからない中、省庁の縦割りを排し、これまで組織の間でこぼれ落ちていた子どもに関する福祉行政を担う……としています。

「省庁の縦割りを排し」…。いつまで日本の組織で“弊害だ”と言われ続けてきたのに「縦割り」状態が続いているのでしょう。

これって変える気ないですよね。縦割りを排除するには、わざわざ新しい省庁を作らないとできないのでしょうか。

そういう意味では、「デジタル庁」は何をしているのでしょうね。

「幼保一元化」は見送り

今回の「こども家庭庁」においては、文部科学省が所管する“幼”稚園と、厚生労働省が所管する“保”育所を一本化する「幼保一元化」が見送られました。

文部科学省が、幼稚園の管轄権限をしっかりと握って離さなかったようです。省庁の縦割り打破の掛け声も、前述の通り、文部科学省と厚生労働省からの抵抗があったようです。

もう一度この「問い」を出してきます。

「こども家庭庁」は、こどもの命を守るためのものなのか。それとも、少子化対策のためのものなのか。

「こども家庭庁」が創設されれば、こどもの虐待やいじめは防ぐことができるのでしょうか…。

「こども家庭庁」の3部門

こども家庭庁の中は、「企画立案・総合調整部門」「成育部門」「支援部門」という3つの部門に分かれます。

それぞれの担務を書き並べてみます。

<企画立案・総合調整部門>

・子ども政策に関連する大綱を作成・推進
・個々の子どもや家庭状況、支援内容等のデータベース整備

こんなもの当たり前のことで、ことさら強調することなのでしょうかね…。

<成育部門>

・教育・保育内容の基準を文部科学省と共同で策定
・「日本版DBS」の導入検討
・「CDR:チャイルド・デス・レビュー」の検討

「日本版DBS」とは、簡単に言えば、子どもの性被害を防ぐため、子どもと関わる仕事をする人の犯罪歴をチェックするものです。

イギリスのDBS(Disclosure and Barring Service/Disclosure:開示、Barring:障壁・バリア)を参考にしたもので、子どもたちを性犯罪から守るため、保育教育現場に性犯罪者を立ち入らせないようにする仕組みになります。

菅総理大臣が「『日本版DBS』をこども庁の政策の柱に」と言及したことが話題になりました。過去の性犯罪歴は、警察記録を検索することになります。教師や保育士をチェクするだけでなく、部活コーチなどのボランティアやPTA役員など、子どもと関わるすべての人をチェックするようです。今は導入検討段階です。

この際、誰が警察と連携を取っていくのか、その指揮系統もさることながら、現場でうまくオペレートできるのか、まだまだ課題は残りそうです。

「CDR:Child Death Review」とは、「予防のための子どもの死亡検証制度」で、子どもが死亡した時に、複数の機関や専門家(医療機関、警察、消防、その他の行政関係者等)が、子どもの既往歴や家族背景、死に至る直接の経緯等に関する様々な情報を基に検証を行うことにより、効果的な予防策を導き出し予防可能な子どもの死亡を減らすことを目的とするものと説明されています。こちらも検討段階です。
※参考:都道府県チャイルド・デス・レビュー(CDR:予防のための子どもの死亡検証)体制整備モデル事業の手引き – 厚生労働省子ども家庭局 母子保健課 ※PDFファイル

<支援部門>

・虐待やいじめ対策
・「ヤングケアラー」の支援
・施設や里親のもとで育った若者らの支援

個人的には、この分野の拡充に注目しています。

こどもの貧困は大きな社会問題です。満足に学校に行けない子どもたち劣悪な環境で生活を強いられている子どもたちひとり親家庭の貧困ネグレクト、虐待…。

ヤングケアラーの子どもたちへの対応も大きな社会課題です。ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子どもをいいます。令和2年度に「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」が行われ、子ども本人(中学生・高校生)を対象としたヤングケアラーの全国調査が初めて行われた。世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生5.7%、全日制高校2年生4.1%であるなどの実態が明らかとなりました。児童養護施設には、約2万5,000人の子どもたちが暮らしています。入所理由の65%は「虐待」です。また児童養護施設では、原則18歳になると退所して自立した生活を送ります。退所後は頼れる大人がいなかったり、経済的な不安があったりするため、進学を選択しづらい現状があります。また、進学するための受験料や入学金、4月以降の生活費などの諸費用捻出のため、受験直前でもアルバイトを続ける例もあります。そのため、進学したくてもできない子どもが多数存在しています。

その他「こども家庭庁」では、重大ないじめがあった場合には、文部科学省に説明や資料の提出を求める勧告などを行うとあります。障害児の支援や施設や里親のもとで育った若者などに対しての支援も担うとしています。

「こどもの貧困」問題に対処できるか?

政府は「各省庁が行っている別々のこども対策を一元化し、国と自治体の連携を図り、抜け落ちていたこどもの貧困や虐待、いじめに対応していく」としています。

こどもの環境で早急に対応しなければならないのは、「こどもの貧困」問題です。

この「こども家庭庁」が、本気にこのような問題に向き合ってくれるものなのか、私たちは、真剣に見極めなければならないと思っています。

「こどもを社会の真ん中に」……この政府スローガンは立派なものです。くれぐれもこれが「選挙のため」に掲げた旗で終わらないようにして欲しいものです。

最後の「問い」です。「こども家庭庁」は、本気で全力で国を挙げて、こどもの命を守ってくれるのでしょうか?

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