ステージ上、客席ともに、約3年分の溜まりに溜まったエネルギーが爆発したかのライブだった――。

4月22日に開催された、声優とアイドルのハイブリッドユニット・i☆Risの全国ツアー「i☆Ris 8th Live Tour 2023~わっしょい!!!!!~」初日。約3年ぶりとなる、声出し解禁後初となるライブのチケットはソールドアウト。
会場に集まった観客たちは、開演前のメンバーによる“影ナレ”の時点でボルテージが高まっていた。発声練習の「わっしょ〜い!!」という掛け声の音量がすでにMAX。幕が上がる前から、OP SEとして和太鼓の音が鳴り響き、客席からの大きな歓声が上がっていた。
◆酸欠になるほどの大音量のコールが炸裂
この和太鼓の音から、ツアー開始前より告知されていた、神曲連発の音楽プロデューサー・前山田健一(ヒャダイン)による新曲『あっぱれ!馬鹿騒ぎ』での幕開けだろうというファンたちの期待に応え、ツアータイトルと和風な曲調に合わせた和装風衣装に身を包んだメンバー5人が登場。冒頭からテンションMAXでパフォーマンスを繰り広げた。

左からi☆Risの茜屋日海夏、若井友希、芹澤優、山北早紀、久保田未夢
曲の合間には客席から「わっしょい!!」という合いの手が入り、会場の一体感が増していく。2曲目の『幻想曲WONDERLAND』の冒頭でも、客席からイントロのコール大合唱が炸裂。
3曲目が終わったところのMCでは、リーダーの山北早紀が「久しぶりに声を出しすぎてみなさん酸欠になっているんじゃないか」と心配するほど、冒頭から大音量のコールが繰り広げられていた。
◆心待ちにした声出しライブ「泣いてなかった?」との追求も
そして、それぞれのメンバーたちが「どれだけこの日を待ち望んでいたか……」という気持ちをあらわにしたほか、若井友希は「『ワンダー(幻想曲WONDERLAND)』で泣きそうになったよ」とのこと。ファンだけでなく、メンバーたちもこの一体感を心待ちにしていたのだ。

「盛り上がる曲をたくさん持ってきたので、最強の声出しライブにしよう!」(山北)という煽りに応え、タオルや扇子を振り回したり、曲中のコールアンドレスポンスを繰り広げたりと、全曲にわたってライブは大盛りあがり。
「コアなファン向けのセトリだよね」(山北)「懐かしい曲が多いね」(芹澤)という、レアな楽曲を披露したと思えば、5人体制になってからの“大人i☆Ris”楽曲や、絶対に盛り上がる大定番曲まで、バリエーション豊かなセットリストだった。
大きなみどころのひとつは、過去のインタビューにて、芹澤優が最も大切にしている曲のひとつと答えた「§Rainbow(セクション・レインボー)」にて、「ゆうちゃん」コールを聞いた芹澤の目に涙が浮かんでいるようにも見えたこと。久保田未夢から「ゆうちゃん泣いてなかった?」と追求を受けるもスルーしていたのだが、果たして真相は……。
◆ブランクを感じさせないフルテンション
約3年のブランクがあるにもかかわらず、客席からのコールの熱量は冒頭からフルテンション。ほかのグループのライブでは、「どこでどのコールを入れるんだっけ……」といわんばかりのふわっとしたコールが聞こえてくることもあるのだが、この現場はそのブランクを感じさせない。それどころか、ただ騒ぐだけではなく、曲を邪魔することなく、コールを入れるべき箇所では盛り上がるという、“民度”の高さすら感じた。
そして、ライブ最終盤、茜屋の「最後までエネルギー残さないで、出しきって帰ってください!」との声に応え、会場の熱気は下がることを知らないままに初日の幕は閉じられた。
熱量、一体感ともに最高潮のツアーはまだまだ続いていくので、この熱気を体感したい人は、ぜひライブに足を運んでいただきたい。ライブの醍醐味がすべて詰まったイベントであるのは間違いない。
◆「コロナ禍以降のファンはびっくりしてしまうかも」
また、このライブにはメンバーたちも手応えを感じていたようで、ライブ後にもらったそれぞれのコメントを掲載する。
Q1:声出しが解禁になる前は、メンバーみなさんが「コロナ禍以降にファンになってくれた人たちは、ライブ客席の歓声と熱量にびっくりしてしまうかも」と心配していました。久々に客席から声が聞こえるライブを体感した感想を教えてください。
Q2:前山田健一さんによる、声出し解禁のツアーにふさわしい新曲について、コメントをお願いします。
◆山北早紀「名前を呼ばれるとやっぱり嬉しい」
A1:『幻想曲WONDERLAND』のみゆたん(久保田未夢)の「ここどこだろ〜?」というセリフに続く「埼玉ー!!」という合いの手を聞いて、「あ、世界が戻ってきた」と感じました。
自己紹介の合いの手の「さきさまー!!」も、やっぱり嬉しいですね。コロナ禍では拍手で対応してたのですが、声を出せると迫力が全然違う。冷静に考えて自分の名前をあれだけの人数に同時に呼んでもらえる機会って人生でないですからね(笑)。普段は“not声出し派”のみなさまも、ここだけは精一杯叫んでほしいです♡
MCに関して、声出しできないときは滑ってるのかウケてるのか反応が分かりづらかったのですが、声出し解禁によりウケても滑っても如実に反応がわかるようになりました(笑)。何よりもここ数年の「声出したいんだろうなー」っていうファンのみなさんがようやく解放されていい顔をしているのがステージからもわかるので本当によかったです!

山北早紀
A2:ツアー初日の数日前に曲の盛り上がり動画をUPしたばかりなのに、みんなもう完璧にコールしてたことに驚きました! みなさんの愛の力ですね。初日であれだったら、これからどうなってしまうのか。ツアーを回るのが楽しみです!
そしてヒャダインさんが作曲してくれた楽曲はすごい! 4分以内にあらゆる要素が濃縮されて複雑そうなのに、頭に残るから覚えやすい。ワチャワチャ感もたっぷりありつつ、Bメロの艶やかな感じも好き。歌詞も好き。いい。本当にいいと思うものを誉める時って語彙力なくなりますね(笑)。楽曲も最高だけど、ライブでみんなの声が入ってよりいいものになる。みんなの声入りのライブ音源のCDがほしいと思っちゃってます。
◆芹澤優「正直、泣いちゃってましたね」
A1:これからツアーに来ていただく方には少々ネタバレになってしまうのですが、「ゆーちゃん」と名前を呼んでもらえるあの曲がやっぱりうれしかったです。正直、泣いちゃってましたね。でもちゃんと歌い切りました!「強くなるのって難しい」と歌う私にみんなが大声で想いをぶつけて、大丈夫だって言ってくれる。
「だから行くしかないんです!」コロナも落ち着きをみせてやっと完成した5人の新しいi☆Risで、11年目も突き進もうと強く思えました。

芹澤優
A2:これが私たちのファンだ!!!って自慢したくなっちゃいましたね。
だって楽曲を解禁したのが直前だったのに、あんなにコールも完璧に揃ってて、天才かって思いました。愛すべきファンのみんなですね。
◆茜屋日海夏「ファンの皆さんに逆に驚かされました」
A1:1曲目からバッチリコールを覚えてきているファンの皆さんに逆に驚かされました(笑)。
そして、やはりファンのみなさんの声援がいかに力になっていたかを改めて実感したライブでした。自己紹介もコロナ禍の3年程はずっと拍手でやり取りしていたので、久しぶりに「ひみだよ!×3」「パープルだよー!」を聞いたとき、めっちゃめちゃ楽しかったです(笑)。

茜屋日海夏
A2:ヒャダインさんの楽曲はたくさん聴いてきた世代なので、まさか自分たちが歌わせてもらえるなんて…!と未だに信じられません(笑)。
初披露も我々とファンのみなさんともに完成度はかなり高かったと思います! コールアンドレスポンスにピッタリで、前向きな歌詞なのはもちろんのこと、今回の「わっしょい」にちなんだ古典的な言い回し。コロナ禍での出来事も無駄にせず、それをバネにさらに明るい未来を目指すような歌詞がとても沁みました。
◆若井友希「初披露なのにみんな前世で聴いてたの?」
A1:想像以上でした!!!! ぶっちゃけると、みなさん久しぶりの声出しの様子を見ながら、徐々にツアーを通して声出しライブに慣れていくんだろうなって思ってたんです。でも、ライブのオープニングSEの時点でみなさんの声がめっちゃ聴こえてきて、あんなに曲があるのに全部完璧にコールしてくれて、感激でした。みなさんの「やってやるぞ!」っていう勢いを感じて、それに対してこっちも「さらにパワーをお返ししてやるぞ!」って気持ちになれました。
『幻想曲WONDERLAND』の「あれ〜ここどこだろう〜?」の後の皆さんからの「埼玉ーーーー!!!!!」には、ああ、やっと聞けたな。って思えてちょっと泣きそうになりました!!

若井友希
A2:初披露なのにみんな前世で聴いてたの??? ってくらい完璧でした! しっかり予習してくれたんだなぁとうれしかったです! あの曲はBPMも早いしキーも高いので、すぐ会場のボルテージも私のボルテージもMAXにできる神曲だと思います!!
「わっしょい!」って言うだけで楽しい気持ちになれる最高な曲、ヒャダインさんさすがです!!!
◆久保田未夢「オタクの予習能力侮れないですね!」
A1:ひたすら楽しかったです。ああ、やっぱりライブはこうじゃないとな〜!って思いました。
『幻想曲WONDERLAND』の頭のセリフで、久々にみんなからの返事が聞こえてきて泣きそうになりました。応援の方法はさまざまありますが、私個人としては声出しライブがとっても好きです!!

久保田未夢
A2:みんなで何回か練習してきた??って思うくらい、初披露だったのに言ってほしい掛け声をみんながもう言ってくれて驚きました。
オタクの予習能力侮れないですね!最高です!!
【i☆Risプロフィール】

(上段左から時計回りに)茜屋日海夏、山北早紀、若井友希、芹澤優、久保田未夢
2012年7月、エイベックスと声優事務所81プロデュースがタッグを組んで開催した「アニソン・ヴォーカルオーディション」の合格者6名で結成。同年の11月にデビュー。’14年からテレビアニメ『プリパラ』でメンバー全員が声優としてメインキャラクターを演じ、主題歌も担当する。結成4年目の2016年、日本武道館でライブを成功させた。’21年3月にメンバーの澁谷梓希が卒業し、4月からは5人での活動を開始。i☆Risにとって8度目となるライブツアー「i☆Ris 8th Live Tour 2023~わっしょい!!!!!~」が開催中。’24年には劇場版アニメ『i☆Ris the Movie -Full Energy!!-』が公開予定。
取材・文/森ユースケ