9月米雇用統計発表後に年初来高値更新...「米ドル/円」113円台到達なるか

9月米雇用統計発表後に年初来高値更新...「米ドル/円」113円台到達なるか

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2021/10/14
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一時111円割れとなったものの、先週の米ドル/円は112円台での引けとなり、年初来の高値を更新しました。本記事では、FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が、先週の「米ドル/円」一段高の理由と、今後の展開について考察していきます。

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[ポイント]​

・米ドル/円も米金利も先週にかけて一段高となった。ともに、長く続いた小動きの反動の影響が大きかったのではないか。そうであれば、米ドル/円、米金利とも当面下落余地は限られ、一段高を模索する展開が続く可能性大。
・10月予想コア・レンジは110.5~112.5円、ワイド・レンジは110~113円。
・気になるのは米国株の動き。小動きを下放れ、下落しやすくなっている可能性あり。米国株が大きく下落する局面では、米ドル/円も下落しやすいため要注意。

先週の「米ドル/円」年初来高値を更新

先週の米ドル/円は一時111円割れとなったものの、週末には注目された米9月雇用統計発表の後に上昇、年初来高値を更新し、112円台での引けとなりました。これは、雇用統計の結果を受けて、11月FOMC(米連邦公開市場委員会)での金融緩和の縮小、いわゆる「テーパリング」開始決定見通しが再確認されたとして、米金利が上昇したことに連れた結果といえるでしょう(図表1参照)。

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[図表1]米ドル/円と日米金利差 (2021年7月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

雇用統計の発表直後は、NFP(非農業部門雇用者数)が前月に続き予想を大きく下回る結果、いわば「ネガティブ・サプライズ」だったことから、一旦は米ドル売り材料となりました。一方で、失業率が予想の5.1%に対して、それを大きく下回る4.8%といった具合に大幅に改善したことから、総合的に見ると、11月FOMCでのテーパリング開始決定を先送りするほどの材料ではないとの見方が優勢になったようです。

「失業率」と「米金融政策」の関係

著者は以前から、この失業率と米金融政策の関係に注目してきました。失業率と米国の政策金利であるFFレートに一定の相関関係があり、とくに失業率から失業率の過去10年平均(10年MA=移動平均線)を引いて求めた「修正失業率」にすると、両者の相関関係がより強まったためです(図表2参照)。

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[図表2]FFレートと米失業率の関係 (1990年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

これを使って、リーマン・ショック後のテーパリング開始について調べてみると、「修正失業率」がマイナスに転換、失業率が10年MAを下回って改善するなかで、テーパリング開始が決定されたのです。

さて、足元の失業率10年MAは5.8%。これに対して、8日に発表された9月失業率は4.8%でした。すでに失業率は10年MAを1%も下回るほど大幅な改善となっているわけですから、上述のリーマン・ショック後と比較すると、テーパリング開始の条件は十分クリアしている可能性が高いのではないでしょうか。

リーマン・ショック後のテーパリング開始とNFPの関係

今回改めて、リーマン・ショック後のテーパリング開始において、NFPとの関係性にも注目してみました。リーマン・ショック後のテーパリング開始は、2013年12月のFOMCで決定され、その後しばらくFOMCのたびに、債券購入額の縮小(テーパリングの決定)が続いています。そのなかでは、単月のNFPが予想を大きく下回る、いわゆる「ネガティブ・サプライズ」もありました。

とくに、当時の資料を見ると、2014年1月に発表された2013年12月のNFPは、20万人弱の増加といった予想に対して、結果は7万人の増加にとどまっています(図表3参照)。

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[図表3]NFPの予想と結果 (2013年4月~2014年4月) 出所:マネックス証券「経済指標カレンダー」

当時は「ネガティブ・サプライズ」の評価になった可能性がありますが、ただ、このNFPの結果を受けて行われた2014年1月のFOMCでは、前回の会合に続き、さらなる債券購入額の縮小が決定されました。

NFPは振れの大きな指標の一つであり、とくに最近はコロナ・ショックの反動局面が続いていることから、今回のように予想50万人の増加に対して、結果は19万人の増加にとどまるといった具合に、数十万人規模の誤差が生じることも珍しくありません。こういった性質の指標だけに、単月の結果が金融政策判断に与える影響にも自ずと限度があるのです。

8日の雇用統計発表を受けて、金融政策を反映する米2年債利回りは0.3%を大きく上回り、この間の高値を更新してきました。マーケットが、11月FOMCでのテーパリング開始決定見通し不変と判断した可能性を示しています。米金利上昇に連れて、米ドル/円は年初来高値を更新してきたために、テクニカルにはさらなる米ドル高を模索する可能性が高そうです。

ちなみに、このところの米ドル/円の週間値幅は1.5円前後が続いています。8日の雇用統計発表後、一旦NFPの「ネガティブ・サプライズ」で下落した米ドル/円でしたが、111円半ばでサポートされた形になったので、今週は下がってもせいぜい111円半ばまで。その上で1.5円前後に値幅を拡大するなら、予想レンジは111.5~113円といった具合に、今週中にも113円まで上昇する可能性があります。

そんな米ドル高・円安見通しにとっての「リスク・シナリオ」は、やはり米国株でしょう。先週の米国株は、いわゆる米国債デフォルト懸念が後退したことなどをきっかけに反発に転じましたが、NYダウで見ると、コロナ・ショック後、依然として株高がサポートされてきた120日MA割れ含みの状況が続いています(図表4参照)。

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[図表4]NYダウと120日MA (2018年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

そもそも、NYダウの120日MAからのかい離率で見ると、9月以降の株安は、それまでの保合いを下放れた動きのようにも見えます(図表5参照)。かりに、保合い下放れなら、教科書的には保合いの下限、3万5千米ドルを回復するまでは続落リスクに要注意です。米ドル高・円安シナリオに修正の必要が出てくる可能性があるなら、それは米国株安リスク次第だといえるでしょう。

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[図表5]NYダウの120日MAからのかい離率 (2020年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

吉田恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

吉田 恒

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