【インタビュー】Sound Horizon、Story BD『絵馬に願ひを!』が問いかける〈生むべきか生まざるべきか〉という命題

【インタビュー】Sound Horizon、Story BD『絵馬に願ひを!』が問いかける〈生むべきか生まざるべきか〉という命題

  • BARKS
  • 更新日:2021/01/13
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Sound Horizonが約5年振りの新作となる7.5th or 8.5th Story BD『絵馬に願ひを!』(Prologue Edition)を本日1月13日(水)にリリースした。“Story BD”という初めて目にする形態が発表時から大反響を呼んだ本作。現代日本によく似た世界を舞台にした7.5th or 8.5th Storyには、果たしてどのような趣向が凝らされているのか。

BARKSでは【サンホララボ】の精鋭研究員の一人、冨田明宏をインタビュアーに据えSound Horizon主宰のRevoへインタビューを行なった。そこには2020年の状況からまだ発表されていない世界線の話まで、壮大な構想が広がっていた。

◆関連映像・画像

■作品を子どもに例えるなら、10年前に妊娠の兆候はあったんです。
■「この子の存在を知ってもらいたい」という、もはや謎の使命感のようなものはあったのかなと思います。

――Sound Horizon(以下SH)がAround 15周年を迎えさまざまな形で動いた2020年は、新型コロナウイルスが猛威を振るった年でもありました。振り返って、Revoさんにとってどんな一年でしたか?

Revo:世の中的には本当に大変な一年だったと思います。ただし僕個人のことで言えば、比較的大きな変化はなかったと言えるかもしれません。日常生活の中では曲を作っている時間がほとんどなので、2020年は割と“ナチュラルに外出自粛モード”ではあったかな。でも春先頃は完全にレコーディングがストップしてしまいました。関係各所がとても混乱している様子もあって、「音楽による経済活動を、エンターテイメントを完全に止めるのか」というような議論もされましたが、少しずつ感染に対して安全面で配慮しながら制作を継続する方法を見出していくようになって。大人数で集まることを避け、マスクを着用し、除菌や換気をしたり、いつもならミュージシャンたちと握手で挨拶するところを残念ながらやめたりもしましたね。セクションによっては大人数でレコーディングが行えないことは非常に厳しいことではあるのですが、どうにか工夫して進めていました。

――まさに『絵馬に願ひを!』の制作に没頭していた一年だった?

Revo:そういうことになりますね。たくさん曲は作ることができました。

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▲『絵馬に願ひを!』(Prologue Edition)

――7.5th or 8.5th Story BD『絵馬に願ひを!』(Prologue Edition)ということになっていますが、正直に申し上げてプロローグですでにとんでもない大作になっちゃってるなと。

Revo:なっちゃってるんですよねぇ(笑)。もう確実になっちゃってます。今回Blu-rayになったことによって「メディアが変わるとこんな大ごとになるんだな」と。でも構想した時点では、『Märchen』のプロローグとして位置付けた『イドへ至る森へ至るイド』くらいのスケール感、CDで言えばマキシシングルのイメージで作っているから“プロローグ”なわけだけど……これが“フル・エディション”になったらCDだと複数枚組になってしまうだろうし、Blu-rayならなんとか一枚で納まる……かな?

――インタビューに同席されているポニーキャニオンのみなさんの表情に焦りの色が……!

Revo:いや、さすがにBlu-ray二枚組は僕が死んでしまうから(笑)。ただCDと比べて明らかに曲数は入るんですよ。だから『Moira』のときのようにはならないんじゃないかなって(笑)。

――なるほど(笑)。『絵馬に願ひを!』、すでに繰り返し楽しませていただきましたが、まだまだ回収できていない物語が潜んでいるようでした。いつ頃からこのような作品を作ろうと計画されていたのでしょうか?

Revo:実際は間で『Nein』をリリースしてはいるのですが、『Märchen』のタイミングですでに「もうCDでリリースするのは終わりだろうな」と思っていました。なので少なくとも10年は前になりますね。そこから次のメディアを模索していたところでLinked Horizon(以下LH)が始まり、幸いなことに「紅蓮の弓矢」がヒットして、「LHも頑張ろう」という状況が続き、『ブレイブリーデフォルトII』の音楽制作も決まっていて、気がつけばメジャーデビュー15周年になっていたという。

――改めて怒涛の10年間ですね。

Revo:「8th Storyが大変すぎるので先に9th Story CD『Nein』を作りました」という話はこれまでもしてきましたけど、『Nein』というのはやはりイレギュラーな作品で、従来のCDの形で出せる最後の作品というか、「9番目という位置づけなのに8番目の前哨戦だった」という感じではあるんですよ。番号で言うと遡っていることになる7.5th or 8.5th Story BDである『絵馬に願ひを!』の方が試みとしては最新のアプローチを取っている作品で、長年温めてきた構想にようやく着手できたということになります。

――そういうことだったんですね。

Revo:ただこれはあくまでも“プロローグ”なので、これを全貌だと思うなかれと。ストーリー的にも仕掛け的にも、まだまだ盛り込んでいないことがあります。これがフル・エディションになると、まだまだ思っていなかったようなことが起こるかもしれない……という感じですね。

――Revoさんの中で、CDで表現できることはやり切った?

Revo:同じメディアで作れるもの、やれることもあるのでしょうけど、でもそれは「じゃあそこからはみ出したものをいつまで無視し続けるんだ?」ということでもあるんですよ。作品を子どもに例えるなら、10年前に妊娠の兆候はあったんです。つわりのような症状があるなかで「でもまだだ、今じゃない。君にとって一番良いタイミングで生んであげるからね」と機を見ていたら、10年という月日が流れていました。でも「僕しか存在を知らないこの子のことを、いつまでなかったことにするんだ?」という葛藤もありました。もうそろそろ世に出してあげなくてはいけないんじゃないかと。Blu-rayで新作を生み出すことを無視してCDで新作を作り続けることもできたのですが、「この子の存在を知ってもらいたい」という、もはや謎の使命感のようなものはあったのかなと思います。

――恐らく『Märchen』のインタビューの際だったと思いますが、「次回作の構想は?」と伺ったらRevoさんが「気づいてしまった、思いついてしまったからには、やらざるをえないんだよね」と仰っていたことを、今思い出しました。その後の展開からそれは『Nein』のことだと思っていたのですが……。

Revo:そう。それがまさにこの作品のことであり、恐らく次回作になるであろう『Rinne』のことでもあったと思います。『絵馬に願ひを!』という作品を生み出せるのは僕しかいないのですが、こういう構造を持った作品を生み出そうと思う音楽家が表れても不思議ではないと思っていたんです。でも10年ほど世の中の様子を眺めてみた結果、「僕がやらなければ人類の歴史から生まれなかったものとして終わってしまうんだろうな」という感覚はあって。それならば僕がやるしかないんだろうと。実際にやってみたらものすごく大変だったんですけどね(笑)。その上「これがプロローグに過ぎないのか……」と、みんなゲンナリしていると思いますが(笑)。

――少なくともローラン(SHのファン)のみなさんはワクワクされていると思いますよ!

Revo:でも実際に制作に携わってくれているスタッフたちは相当にまいっているはずだから。「これでプロローグってマジかよ……」って。僕自身、大変だろうと思っていた想像を、遥かに超えてきた感じではあったからね。コロナ禍でのスケジューリングだったというのも大きいとは思うけど。でもこれをやらないと音楽史、もっと言えば人類史の中でこいつは存在しなかったんだろうなと。この方法論で生まれた作品は時代のオーパーツになると思うんです。この作品形態がマジョリティになるとは思っていないけど、でもこのオーパーツが歴史に残されるということは、後の考古学者たちからするとロマンがあるんじゃないかな。「こんなものを生み出してしまった、バグった音楽家が21世紀に存在していたんだな。黒い服を着て、手には指輪をはめていたらしい」って(笑)。僕はこの作品が存在する歴史の方にロマンを感じたので、僕がやるしかないという思いで制作をはじめました。あとはプロモーション次第という話になりますが、咲いたけど実を結ばぬまま時代の徒花になるのか、何か新しい流れを生み出す作品になるのかは、ポニーキャニオンさん、BARKSさん、そしてサンホララボの研究員である冨田さんにも関わってくるなと。

――とんでもないプレッシャーが私にも……(汗)。

Revo:明らかに世間的なニーズに対して逆行した作品であることは、僕も認識しているんです。音楽が配信やサブスクで需要される時代になり、自由に気軽に聴けるけど、音楽の値段が限りなくゼロに近づいていっている……つまり〈音楽の値打ち〉を意識しない時代になっていく中で、敷居の高い超ボリュームのものを高額で販売するのが、この作品におけるビジネスの構造です。また楽曲が単体で切り売りされることが当たり前の時代に、旧時代的とも言えるコンセプトアルバムの復権を謳うような作品でもあります。切り売りどころか、作品の根幹に特殊な仕掛けが絡んでいるので、BDでしか聴けないという潔さ。これを面白いと思って価値を見出してくれる人がどれだけいて、この作品を許容する社会の空気みたいなものは存在するのか。マジョリティになるとはやっぱり思えないんだけど。それでも音楽の、ひいてはエンタメの可能性・多様性という意味で、この作品が評価されないのは豊かさや面白みに欠けてしまうなと僕は思います。たとえ僕が作った作品ではなくても、『絵馬に願ひを!』のようなアプローチの作品が世の中にあるのだとしたら、僕は応援したいと思うからね。

――最近でこそYOASOBIのように物語×音楽を標榜するアーティストが評価されてきていますが、Revoさんはメジャーで15年以上“物語音楽”の世界を拡張し続け、映像作品やコンサートで視覚的にも体感的にも大きな熱狂を生み出してきましたが、今回の『絵馬に願ひを!』はそんなSHが世に問う新たな実験的作品とも言えそうです。

Revo:挑戦状をたたきつけるような意識は、ありますね。評価されなければ僕たちが悲しい思いをするだけなんだけど。世の中に必要のないものなら、自然と淘汰されるでしょう。僕たち以外にも音楽を作るグループはいくらでもいるしね。音楽産業もビジネスなので、結局のところ評価というのは利益のことでもあります。謎の上から目線みたいになっちゃうけど、それを承知で「この作品をどう受け止めますか?」「あなたに受け止める度量はありますか?」と問うような感覚はあるかな。「いらねーよ!」と言われたらやっぱりショボーンとしちゃうんだろうけど(苦笑)。

――少なくとも僕は、この作品をプレイヤーのトレイに置いて再生を押したときに、久し振りに味わうエンタメによるワクワク感と昂揚感がありました。「こんな体感ははじめてだ」というドキドキは、新しいアプローチのエンタメからしか享受できないものだなと。改めてになりますが、今回は日本における現代、厳密にはパラレルワールドが舞台となっています。音楽制作の面で取り組んでみていかがでしたか?

Revo:音楽制作で大変だったことって、実はあまりないんです。細かい苦労を上げるなら、100個くらい出せますが。本気では苦労と思ってないんだろうね(笑)。曲はなんとなくできちゃうんですよ。なんとなくできちゃうんですけど、なんとなくできるまでの下準備にはかなり時間をかけています。いい加減な準備ではじめて、制作している中で矛盾点が生まれ、物語が成立しなくなってすべてがガラガラと音を立てて崩れ落ちていくのが嫌なので、ある程度全体の構造や中身を突き詰めてから曲の制作ははじめたいんです。実際に今回であれば神社や神道について調べたり、現代の文化や地理と言ったものも調べていって、登場人物が何歳で、どんな土地にいるのかなど、バックボーンもしっかりと構築していきました。過去の作品だと舞台は中世ヨーロッパが多かったのですが、たとえばドイツやフランス、イベリア半島について、聴いて下さる方もそこまで知識がないと思うのでさらっと聞き流せていた部分もあるかもしれませんが、今回はパラレルワールドとは言え現代の日本が舞台です。聴いて下さるみなさんもかなりリアルに想像ができてしまう。そういうことを考えると、神社は何系の神社で、どういうご神体を祀っていて、登場人物たちはどこに住んでいて、どこの小学校からどこの中学校に進学して、家からその学校に行くまでにどのバスに乗って何分かかる……みたいなことまで、曲を作り始める前にある程度は構築しておきたかった。そこまで突き詰めておくと、曲は「あ、なんかできちゃった!」という感じになるんです。まあ僕が創作しているならというifの話ですが。実際はこの現代日本によく似た世界に行って、取材した膨大な内容を曲にまとめています。信じるかどうかは、あなた次第です(笑)。

――さすがです。

Revo:でもね、物語を作るという観点でいうと、僕はきっと凡人なんですよ。人並外れた才能があるわけでもなく、天才とかそういうのは本当におこがましい話で、たぶん凡人なんです。ただ普通の人はそういう作業をやらないだけで、僕は15年以上やってきたから普通の人よりはノウハウがあるだけだと思います。なので苦労を重ねて物語を作ってきましたが、音楽に関してはいわゆる天才的なある種の才能があるんでしょうね。いや、ある。と言い張っても良いか(笑)。だからやれているというか……音楽も凡人だったら永遠に作品が仕上がらないもんね(苦笑)。

――今回、現代の日本を舞台に選んだ理由は?

Revo:単純に、同じ時代・同じ場所が続くとつまらないなと。段々と僕の中でも許容する音楽は変わってきていて、ずっと和の要素や現代日本的な要素を持った音楽を作りたいと思っていたので。でもこの要素って他の地平線に入れ込むことってなかなか困難じゃないですか。世界観的に。なので、満を持してというか、許容される舞台の番がくるまで温存していました。ローランのみなさんの中には『Roman』や『Moira』や『Märchen』が好きで、たとえば『Roman II』のようにそれぞれの続編を作って欲しいと思っている人もいるかもしれないけど、僕の中では「それはもうすでにやったことだろ?」と。二度とやらないとは言わないけど、まったく新しい世界を描いた方が、僕自身のスキルアップにもなるし楽しいからね。

――今回は現代を扱っているからこそヒップホップ調の楽曲、つまりフロウとともに韻を踏むラップの要素もあるし、現代の若者言葉や、「悪くないだろう」のようなギャグもありますね。

Revo:ギャグは僕がぺこぱの物語性のあるスタイルが好きだから無理やり入れた感はありますけどね(一同笑)。彼らの「時を戻そう」で場面が繰り返し切り替わる要素って、ご都合主義的でありながら様式美になっていて、舞台演出を経験した人間であればきっと何か感じるものがあると思うんですよ。もちろんギャグとしても面白いし(笑)。ラップは前からやりたいと思ってました。ヒップホップ的ではない形で、過去の曲でも韻を踏みまくる歌を発表していたのですが。そこにエンタメとしての面白さを感じていたし、自分の言語感覚へのチャレンジでもあるんだよね。言葉遊びをやりつつ、物語音楽としての流れも成立させなくてはいけない。
明らかに普通の歌詞を書くよりも大変なんだけど、こういうチャレンジをするとより“やり切った感”があるので。毎回新しい音楽的チャレンジをしたいと思っているんですけど、世界観的にラップを嗜んでいても不思議ではない登場人物が出てきたので、今でしょと。ラップってすごくキャッチーだし、真面目にやっていてもファニーな要素が生まれてくるので、歌詞も遊びやすくて。いろいろな要素も含めて気に入っているし、あのパートは面白いものができたなと思っていますね。そうそう、あの曲でバイクが出てくるじゃないですか。

――出てきますね。

Revo:実はバイクを出した部分にも、個人的にはやり遂げた感があるんですよ。今までの作品の中で散々馬は走ってきたんですけど、ようやくSHの文明が馬からエンジンになったと(一同笑)。史実として、古代から近代まで馬で移動する時代が長すぎるわけですが、バイクや車のSEが入ったときに個人的には感慨深いものがありました。

――日本の伝統的な要素、和の部分に関してはいかがでしょうか?

Revo:そうですね……今回7.5th or 8.5thと謳っているので濁してはいるのですが……“第8の地平線”は和を意識した作品でもあります。末広がりの“八”でもあり、八百万の神々の“八”でもありますしね。そして数学的な観点では無限大(∞)の“8”でもある。さらに言うと、永遠に循環するイメージを伴う自らの尾を口に咥えたウロボロスの蛇でもあるんですよ。日本に古くから伝わる考え方だと、数え切れないもの、無限にあるものも“八”と呼んでいて、神聖な数字とされている。そのような考え方が8th Story CD『Rinne』という作品に繋がっていく……のかもしれないし、いかないかもしれない、解釈はあなた次第ですという(笑)。

――ありがとうございます(笑)。

Revo:ただ改めて、これを言い残しておきますが『絵馬に願ひを!』と『Rinne』についてはある種の親和性があると思います。かといって『Rinne』が和をテーマにした作品だと言い切れるようなものでもないんですけど。『Rinne』においてはそれがフックになってくるかもしれません。まあコンサートの予定もありますし、神様たちの選択の総意次第かもしれませんが。“ノエル(Noël)”をスカウトしてきた辺りから、地平線に対する認識改革の下準備は進めてきたと言えるかもしれません。今、彼の残したものを語るにはまだ早いかなと思いますが……。物語音楽の革命とも言えるフルコース『Rinne』の前に、箸休め的に『絵馬に願ひを!』を受けっとってもらえたら……まぁ、ちょっと重すぎる箸休めになりましたけどね(一同笑)。

――今回も重要な情報をありがとうございます。

◆インタビュー(2)へ

■SHとして最初に絵馬に託す願いは何なのか? それはやっぱり“命”についてなんです。

――和と現代ということで、日本人の信仰心や古事記などに描かれる日本神話と向き合ったとき、Revoさんはどのような印象を持たれましたか?

Revo:神話的なことでいうと、『Moira』で題材にしたギリシャ神話に似ているなという印象です。多神教には本当にとんでもない神様が多いなって(笑)。尊敬されるような神様って実はそこまで登場せず、好き勝手なことをしている困った神々たち……という印象かな。今回は『絵馬に願ひを!』ということで神様が願い事を叶えてくれる物語なのですが、そもそも日本の神様って願いをかなえてくれるような存在ではないんですよ。むしろ酷い目に合わせてくるのが神様で、そこが一神教の神様とは全然違う考え方になっているんですよね。一神教の神は宇宙のすべて、絶対的な存在ですが、それに対して多神教の神々は宇宙自体は作っていないし、混沌のような概念からポコポコと生まれてきていて、それぞれが何かを司っている。つまり自然の畏怖すべき力を神様に置き換え、分かりやすい形にしていったわけですよね。太陽神であればわかりやすく暖かさや農作物のような形で恵みをもたらしてくれますが、逆に日照りや干ばつを与えてくる存在、いわば表裏一体です。大いなる自然を畏怖し敬い「少しでも怒りを鎮めてください」という考え方、つまり〈神=恐れ敬うもの〉であるのが多神教である日本の神々の成り立ちだと言われています。その中から時代を経ていく中で“ご利益”といったものを神々が担保してくれるようになり、神々の荒ぶる部分が徐々にソフィスティケイト(洗練)されていったのが、人々がお賽銭を投げ入れ、絵馬に願いを託し、神に祈っている現代であると。

――神道以外の宗教や文化の影響を長い年月の中で受けてきて、今の形になっているのだとは思いますが、老若男女問わずまるで用途に応じて選ぶかのようにさまざまな神に願いを託しまくっている現代の日本人って、かなり特殊ではありますよね。

Revo:他宗教の影響も多分に受ける形で今に至るとは思いますが、こと“ご利益”という部分ばかりがクローズアップされているのが現代です。誤解を恐れずに言うならば、ビジネス的な感覚が入り込んでいるとも言えます。今回の『絵馬に願ひを!』はそんな現代的なご利益を表面的なテーマにしていますが、「神の恐ろしさ」もしっかりと入れ込んだ作品にしたつもりです。

――そこはSHらしさを強く感じた部分です。リスナーの選択によってどういう結末を迎えるのか、どのような形で願いが遂げられるのか。

Revo:興味深いですよね。

――今回の作品をプレイ……という表現が正しいのかわかりませんが、繰り返し物語を追っていく中で『Roman』や他の作品でも言及されてきた〈生まれる命と生まれる前に失われる命〉というテーマが今回も出てきます。古事記には蛭子(ヒルコ)の話もありますが、なぜこのようなテーマと向き合い続けるのでしょうか?

Revo:今回の場合は〈新しさと懐かしさ〉が僕の中で重要なテーマになっていたから、と言える気がします。これは新作ですが、Around 15周年の記念作品で、パッケージなどはローランのみなさんがご覧になれば随所に“気づき”がすでにあるはずです。生と死にまつわる話、子どもが母親のお腹に宿ったときに〈生むべきか生まざるべきか〉というテーマは「これぞサンホラだよね」と腑に落ちる懐かしさがあると思います。

――確かに。

Revo:でも、だからと言って同じことの焼き直しをやっているのかと問われれば、それはノーで。そこには新しい要素と表現が宿っています。いわば令和版の〈生むべきか生まざるべきか〉問題であり、今ならどういうことを問うてくるのだろうかと。その違いや変化にローラン諸君は何を感じるか、とても興味深く思っています。絵馬に託す願いっていろいろなものがあるじゃないですか、すごく切実なものから、どうしようもない願いまで。ではSHとして最初に絵馬に託す願いは何なのか? それはやっぱり“命”についてだろうなと。生まれてくる子どもの視点もあるし、母親の想いもある。「この子を産むということは母親にとってどういうことなんだろう?」それを考える入り口としてのプロローグであり、これがフル・エディションになったらどうなるのか、どんな問題が関わってくるのか。プロローグなので分かりやすい形を敢えてとっている部分もありますが、そこに今回もこのテーマを扱った理由のひとつがあるような気がします。

――過去作品を知っているからこそクスっと笑えるような要素も盛りだくさんで、まさにそこはAround 15周年記念作品の要素ですね。

Revo:気づく人はもう気づいていると思うけど、もっと言えばSHの20年近い歴史が詰め込まれています。僕の「気づく人だけ気づけばいい」のスタンスは変わらないので、あまり押しつけがましくないように入れたつもりだけどね(苦笑)。

――本当にさらっと触れられていた地平線の数々がたくさんありました。そして今回、CD作品の場合はブックレットに仕掛けを施していた要素が、歌とともに歌詞がアニメーションする形で表現されていました。このインパクトがやっぱりすごくて。

Revo:その部分こそ「大変だった……」という感想の半分以上を占める要素ですよ(笑)。一応は音楽作品なので、真っ暗な画面に曲だけ流しても成立するのでしょうけど、Blu-rayのスペックから考えるともったいないことで。でも僕がやりたいのはあくまでも音楽作品です。映像で表現しすぎても、音楽から生まれる想像力を奪ってしまうので、それは本意ではないんですよね。そして「ブックレットの方がよかったよね」と言われてしまうのも「望まれていないものを生み出してしまった」という思いになるのでそれも辛い。今までやってきたCDのブックレットで表現することを否定するわけでは決してないのですが、そこで足踏みをしていたら、この『絵馬に願ひを!』は絶対に生まれなかった。この領域に踏み込まなかったら……本作に対して従来のようなブックレットを付けるという形をもし選んでしまっていたら、それは「気づいてしまったからには、やるしかない」という僕の思想性とは合致しないものなんですよ。

――その覚悟がすべての起点になっているわけですね。

Revo:そうですね。曲に対して歌詞が動的に変化し続けるということに対して、音楽とのマッチングにおける思考錯誤が続きました。音楽を仮でミックスしてから映像と合わせてみたときに「こうした方がよりマッチするな」と思ったら、音楽の方のミックスを映像に合わせて変えているんです。

――想像しただけで途方もない労力ですね……通常の音楽制作の何十倍の時間と労力がこの1枚に詰まっているんだろうかと。

Revo:SE(サウンド・エフェクト)はより深く映像の影響を受けるので、何度も映像に合わせて当て直したりもしています。そして静止画的な部分で、どういうフォントを選択して、それぞれをどうデザインして、その時の背景は何が相応しいのかを一つ一つ組んでいく。静止画・動画・音楽、そしてSE。それぞれどれかの工程が遅れたら全部が遅れるという状況の中で、僕や各セクションの制作スタッフたちみんなが徹夜の日々を過ごすという状況でした。そして最終的にマスタリングしてオーサリングをするわけですが、そこに至るまでに「すみません、まだ調整がつかず納品できません」という局面があったり、「じゃあここのスケジュールを空けるので夜通し作業しましょう」という夜を経て、やっと完成したのがこの作品です。各セクションは今まで一緒にモノづくりをしてきたお馴染みのチームなのですが、落とし込む先がBlu-rayになるとここまで違うのかと。経験したことのない苦労がいくつも出てきましたね。

――Blu-rayで、コンサートとは違うSHの物語音楽を表現するという、プロジェクトにおいてもプロローグだったわけですね。しかも大変に過酷な……。

Revo:コンサートについてもそうで、基準となるメディアやフォーマットが変わるとすべてのことが変容していくんですよね。この作品を受け取ってくれるリスナーにとっても、SHをより楽しもうと思うえば思うほど、驚きや感動や気づくこと、考えることも大きくなると思います。

――そしてAround 15周年記念祭も目前に控えていますが、今のお気持ちは?

Revo:すでに発表されている通り一部・二部・三部という構成からして今までのコンサートとは違うわけですが。新しい試みとして『絵馬に願ひを!』のパートは、あらかじめ定められたストーリーが存在しないんです。つまりその日次第。その日来てくれた、八百万の神様たち次第です。僕たちは神様たちがどんな選択をしようと、パフォーマンスをする準備をしています。コロナ禍という状況を鑑みてその対策を徹底しつつ、神様たちにも感染防止に対する意識を強く持って、楽しみながら参加していただければと思っています。

取材・文◎冨田明宏

▲『絵馬に願ひを!』(Prologue Edition)

■Sound Horizon Around 15th Anniversary 7.5th or 8.5th Story BD 『絵馬に願ひを!』(Prologue Edition)

Sound Horizon Around 15th Anniversary
7.5th or 8.5th Story BD 『絵馬に願ひを!』(Prologue Edition)
発売日:2021年1月13日(水)
価格:4,500円(税別)
品番:PCXP-50813
総参詣時間:参拾伍分以上
壱道筋乃参詣時間:貴方次第

初回生産封入特典:「連動幸運券〜弐分乃壱〜」(Full Edition発売時まで取っておくと何か良いことがあるかも!)
予約/購入はコチラ ⇒ https://lnk.to/SH_StoryBD_Ema_PE

《予約/購入特典》
7.5th or 8.5th Story BD 『絵馬に願ひを!』(Prologue Edition)のご予約・ご購入頂くと、先着で以下の特典をプレゼント。各店舗、ご用意している特典数量に限りがございますので、お早目のご予約をお勧めいたします。

●Amazon特典:『絵馬に願ひを!』(Prologue Edition) L判絵札
●タワーレコード、アニメイト、HMV、TSUTAYA RECORDS、他全国CDショップ特典:狼欒神社 御神籤

【ご注意】
◆特典は数量限定となるため、発売前であってもご予約状況によっては、先に特典プレゼントが終了する場合もございます。
◆特典を確実に入手いただけるよう、お早めにお近くのCDショップ、WEBショップで特典についてご確認をいただいた上でのご予約をお勧め致します。
※特典につきましては、一部取り扱いの無いCDショップもございますので、詳細を店舗までお問い合わせください。また、ネット販売につきましても同様に、一部取り扱いの無い場合もございますので、各WEBショップの告知をご確認ください。

《『絵馬に願ひを!』(Prologue Edition)レコーディング参加者》
<歌い手>
石田彩夏、香西愛美、清永大心、SAK.、神社関係者、ハセガワダイスケ、廣瀬真平、水野雅和

<楽器奏者>
五十嵐宏治(Key.)、石塚由有(太鼓、神楽鈴、鼓)、大塚惇平(笙、鉦鼓)、大橋英之(Gt.)、熊田かほり(琵琶)、纐纈拓也(龍笛、楽太鼓)、淳士(Dr.)、髙桑英世(篠笛)、中ヒデヒト(Sax)、西山毅(Gt.)、長谷川淳(Ba.)、三浦元則(篳篥、鞨鼓)、本間貴士(箏)、与野裕史(Dr.)
弦一徹ストリングス

<語り部>
Ike Nelson、大塚明夫、沢城みゆき、深見梨加、悠木碧

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■<Sound Horizon Around 15周年記念祭>

第一部:Prologue: 7.5th or 8.5th Story Concert『絵馬に願ひを!』〜大神降臨祭〜
第二部:サンホララボSHK出張所 with Revo
第三部:Re:Vival Cover Live with A15周年記念祭Members

【出演者】
<Organizer>
Revo

<Vocals & Voices>
石田彩夏、香西愛美、SAK.、神社関係者、廣瀬真平

<Musicians>
五十嵐宏治(Key.)、石塚由有(太鼓、鼓)、大橋英之(Gt.)、西山毅(Gt.)、長谷川淳(Ba.)、本間貴士(箏)、与野裕史(Dr.)
弦一徹ストリングス

<Dancers>
佐藤洋介、渋谷亘宏、細木あゆ、松島蘭

<Researchers of the SH Lab>
さやわか、清水耕司、冨田明宏

【日程】
2021年1月19日(火) 東京国際フォーラム ホールA ⇒ SOLD OUT!
2021年2月5日(金) 東京ガーデンシアター
2021年2月6日(土) 東京ガーデンシアター ⇒ SOLD OUT!
2021年2月7日(日) 東京ガーデンシアター
2021年3月30日(火) パシフィコ横浜 国立大ホール
2021年3月31日(水) パシフィコ横浜 国立大ホール ⇒ SOLD OUT!
※会場への直接のお問い合わせはご遠慮ください。

お問い合わせ先:KMミュージック
電話番号:045-201-9999 (平日:月・水・金 11:00〜13:00受付)
http://www.kmmusic.co.jp/

【一般席チケット】
チケット代金 24,200円(税込)/1枚
※全席指定
※未就学児童入場不可
※複数公演申込可
※お一人様1公演につき2枚まで

チケット一般販売詳細:
https://shaxvanniv.ponycanyon.co.jp/news/post/488

<Sound Horizon Around 15周年記念祭>詳細ページ:
https://shaxvanniv.ponycanyon.co.jp/news/concert/180

■『Sound Horizon Around 15th Anniversary Re:Master Production』

一般CDショップ・ECサイトにて購入可能
全タイトルリマスター音源によるUHQCD
※ショップ購入特典は先着のため、各店舗にて無くなり次第終了

2020.07.29 Go Around...
『Elysion −楽園への前奏曲−』 ¥2,727+税 / BZCS-5033 (BELLWOOD RECORDS)
『Elysion ~楽園幻想物語組曲~』¥3,182+税 / BZCS-5034 (BELLWOOD RECORDS)
・ショップ購入特典:yokoyan描き下ろしAround15周年記念イラスト絵葉書 壱乃片 (上記2作品共通特典)

2020.08.26 Go Around...
『少年は剣を…』¥1,545+税 / KICM-2056 (KING RECORDS)
『Roman』¥3,182+税 / KICS-3931 (KING RECORDS)
・ショップ購入特典:yokoyan描き下ろしAround15周年記念イラスト絵葉書 弐乃片 (上記2作品共通特典)

2020.09.30 Go Around...
『聖戦のイベリア』¥1,545+税 / KICM-2057 (KING RECORDS)
『Moira』¥3,182+税 / KICS-3932 (KING RECORDS)
・ショップ購入特典:yokoyan描き下ろしAround15周年記念イラスト絵葉書 参乃片 (上記2作品共通特典)

2020.10.21 Go Around...
『イドへ至る森へ至るイド』¥1,545+税 / KICM-2058 (KING RECORDS)
『Märchen』¥3,182+税 / KICS-3933 (KING RECORDS)
・ショップ購入特典:yokoyan描き下ろしAround15周年記念イラスト絵葉書 肆乃片 (上記2作品共通特典)

2020.10.30 Go Around...
『ハロウィンと夜の物語』¥1,545+税 / PCCA.04968 (PONY CANYON)
・ショップ購入特典:yokoyan描き下ろしAround15周年記念イラスト絵葉書 伍乃片

2020.11.25 Go Around...
『いずれ滅びゆく星の煌めき(ヴァニシング・スターライト)』¥1,545+税 / PCCA.04969 (PONY CANYON)
『Nein』¥3,182+税 / PCCA.04970 (PONY CANYON)
・ショップ購入特典:yokoyan描き下ろしAround15周年記念イラスト絵葉書 陸乃片 (上記2作品共通特典)

■サブスクリプションサービス配信

【Sound Horizon サブスクリプションサービス配信概要】
■Sound Horizon
『Elysion −楽園への前奏曲−』 https://lnk.to/SH_md_al_E
『Elysion ~楽園幻想物語組曲~』 https://lnk.to/SH_4th_Story_E
『少年は剣を・・・』 https://fanlink.to/SH_sg01_S
『Roman』 https://lnk.to/SH_5th_Story_R
『聖戦のイベリア』 https://lnk.to/SH_sg02_S
『Moira』 https://lnk.to/SH_6th_Story_M
『イドへ至る森へ至るイド』 https://lnk.to/SH_sg03_I
『Märchen』 https://lnk.to/SH_7th_Story_M
『ハロウィンと夜の物語』 https://lnk.to/SH_sg04_H
『いずれ滅びゆく星の煌めき(ヴァニシング・スターライト)』 https://lnk.to/SH_sg05_V
『Nein』 https://lnk.to/SH_9th_Story_N

※サブスクリプション配信音源は、過去にCDで発売したオリジナル音源を使用しています。Sound Horizonメジャー作品全11タイトルのハイレゾ配信につきましては後日詳細を発表いたします。

【Revo関連作品 サブスクリプションサービス配信概要】
■霜月はるか†Revo
『霧の向こうに繋がる世界』 https://fanlink.to/HS_R_sg01_K

■Revo&梶浦由記
『Dream Port』 https://lnk.to/R_YK_sg01_D

■Revo
リヴァイアサン Image Album『リヴァイアサン/終末を告げし獣』 https://lnk.to/R_LIA_ls
GUNSLINGER GIRL Image Album『poca felicità』 https://lnk.to/R_GGIA_pf
『BRAVELY DEFAULT FLYING FAIRY Original Soundtrack』 https://lnk.to/R_BDFF_OST

■Linked Horizon
『ルクセンダルク小紀行』 https://lnk.to/LH_sg01_L
『ルクセンダルク大紀行』 https://lnk.to/LH_al01_L
『自由への進撃』 https://lnk.to/LH_sg02_J
『進撃の軌跡』 https://lnk.to/LH_al02_S
『楽園への進撃』 https://lnk.to/LH_sg03_R
『真実への進撃』 https://lnk.to/LH_sg04_S

関連リンク

◆Sound Horizon Around 15th Anniversary Special Site
◆Sound Horizon official website
◆Sound Horizon official Twitter

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