新監督シャビは救世主ではなかった。バルサ、ホームでのドローでCL敗退の危機

新監督シャビは救世主ではなかった。バルサ、ホームでのドローでCL敗退の危機

  • Sportiva
  • 更新日:2021/11/25

チャンピオンズリーグ(CL)第5節。バルセロナのベンフィカとのホーム戦は、ロナルド・クーマンが退任し、暫定のセルジ・バルファンをはさんで新監督に就任したシャビ・エルナンデスにとって、2試合目。CLでは初の試合となった。

グループリーグのE組(バイエルン、バルサ、ベンフィカ、ディナモ・キエフ)は、バイエルンがすでに首位通過を決め、バルサ(勝ち点6)はベンフィカ(同4)と2位の座を争う関係にある。バルサの最終戦の相手は、第1戦、ホーム戦にもかかわらず0-3で大敗したバイエルンだ。

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対するベンフィカの最終戦の相手は、すでに脱落が決まっているディナモ・キエフだ。E組の2位と3位の対決は、バルサのほうが勝っておきたい試合だった。

ところが結果は0-0。バルサにとっては悔やまれる痛い結果となった。グループリーグ突破を逃すとなれば、クラブ史において2000-01シーズン以来史上2度目、21シーズンぶりに味わう屈辱となる。

リスボンのダ・ルスで行なわれた第1戦のアウェー戦では3-0で敗れているバルサにとって、この日のベンフィカ戦が切羽詰まった戦いだったことは理解できる。クラブ史を汚すことになりかねない大一番に臨むシャビ新監督に、重圧がかかっていたことも想像に容易い。

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エスパニョール戦、ベンフィカ戦と、ここまで2試合で指揮を執ったシャビ・エルナンデス(バルセロナ)

だが、シャビがこの一戦に3-4-2-1で臨んでくるとは、こちらの想像を超えていた。5バックになりやすい守備的な3バック。前任者のクーマンも、まれにこれに近い布陣で戦ったことがある。しかしシャビは、バルサのスピリットをクーマン以上に備えた人物と思しきクラブの生え抜きだ。攻撃的サッカーの看板を掲げ、勝利と伝統のスタイルを守りながら、それぞれをクルマの両輪のように追求するものと思われた。

ところが、シャビはそうした期待を完璧に裏切った。従来のバルサ的ではない手法でベンフィカ戦に臨み、その結果、0-0で引き分けてしまった。部外者としても心配になる、バルサらしくない姿を世界的にさらすことになった。

ヨハン・クライフもジョゼップ・グアルディオラも、3バックでよく戦っていた。だが、そのベースとなっていたのはアヤックス型の3バック。中盤ダイヤモンド型の3-4-3だ。4分割にすれば3-3-3-1、3-3-1-3、あるいは3-1-3-3となる。

グアルディオラはリオネル・メッシを0トップに据える3-4-3を好んだが、それは3バックでいる時間の長い3バック、すなわち4バック以上に攻撃的な3バックだった。世界で最も攻撃的な布陣と言っても過言ではなかった。

クライフは5バックで守ろうとする守備的サッカーの監督を「人のことを悪く言いたくないが、趣味の合わない人」と断じ、「そんな戦法を取ってまで勝ちたいのか」と蔑んだものだ。イタリアやドイツで90年代後半に流行ったサッカーがこれになるが、亡きクライフ、あるいはグアルディオラは、ベンフィカ戦に臨んだシャビのサッカーを見て、どう思っただろうか。

それはクレマン・ラングレ、ジェラール・ピケ、ロナウド・アラウホの3人が、常時最終ラインにへばりつくように構え、ユスフ・デミル(右)、ジョルディ・アルバ(左)の両ウイングバックが、単騎でサイド攻撃を仕掛けるサッカーだ。

最終ラインに人数を1人多く割けば、前方で1人分の不足を招く。片側を1人減らすとバランスが崩れるので、左右を各1人減らし、真ん中に1人、人を多くすることになるわけだが、となると、攻撃は自ずと真ん中に偏る。クライフが徹底的にこだわったサイド攻撃は、後半途中、オスマン・デンベレが交代出場するまで、ほぼきかない状態にあった。

しかも遅攻。ボール支配率の高いサッカーだ。この日の支配率は60対40だった。その真ん中でボールを奪われる機会が多い状態は、相手に反撃を食いやすい危険な状態を指す。この日のベンフィカは守備的だったので、反撃を許す機会はさほどでもなかったが(それでも何度か決定的なチャンスをつかまれている)、次戦の相手、バイエルンには確実にそのプレスの餌食になるだろう。このままいけば、クーマン監督のもとで戦った第1戦(0-3)より、その可能性は高いと見る。

シャビはグアルディオラにあらず、だった。グアルディオラは攻撃的な3バックは採用しても、守備的な3バックは1度たりとも採用しなかった。同じバルセロナのカンテラ出身でも、両者の間には水と油と言いたくなるほどの大きな差がある。

かつてのスペインサッカーは、おおむねグアルディオラ的だった。リーガのクラブで指揮を執る監督は、クライフサッカーの信奉者でほぼ固められていた。90年代後半から、守備的な色に染まるイタリア、ドイツとは対照的な攻撃的サッカーを最大の拠りどころに、スペインサッカーは欧州のトップの座に上り詰めた

いまスペインにその勢いは全く感じられない。プレミアリーグ(イングランド)にUEFAリーグランキングで首位の座を奪われたのは昨年になるが、今季もその流れは健在だ。CLではレアル・マドリード、アトレティコ・マドリード、ビジャレアル、セビージャともに、冴えのないサッカーを展開している。レアル・マドリード以外の3チームは、いずれもベスト16入りが微妙な情勢にある。低落傾向も歯止めが掛かるどころか、加速している感さえある。クライフ率いるバルサが旗振り役になった時代は、もはや過去のものになりつつある。

救世主になるかと思われたシャビもダメだった。ベンフィカ戦1試合で結論づけるのは早計だが、これは哲学の問題だ。1試合やってしまった監督は、2試合、3試合とやると考えるのが妥当だ。次戦のバイエルン戦でシャビがこちらの心配をすべて覆すサッカーをするとは考えにくい。バルサの混迷はまだまだ続くと見る。

杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

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