島内宏明の勝利の一打に、僕らは何度助けられているだろう。
直近では8月3日マリーンズ戦、完全試合男・佐々木朗希から逆転タイムリーを放ち、続く4日の試合でもホームラン。昨日のホークス戦でも2発3打点と一人気を吐いた。
昨シーズンは打率.257、21本塁打、91打点で見事初の打点王。今シーズンもここまで94試合に出場し打率.294、10本塁打、54打点(8月5日現在)。HRを2ケタにのせ、打率打点はリーグ3位と順調に成績を伸ばしている。ここまで浅村が4番に座った6月5日と7日の2試合をのぞき、不動の4番打者は島内宏明。
本人は四番打者は一番打ちにくい、なんて発言している。だけど浅村、島内と続く3、4番の並びは安定感が出てきたなあというのが、イーグルスファンの本音である。
そして、島内の打席を盛り上げるのがあの応援歌だ。
ジワリジワリと広がっている“ここ島”応援歌
「ここで島内ー♪ 勝利の一打ー♪ おーおおおおおーおおおー♪」と一見さんでもお子さんでも馴染みやすい歌詞とメロディーライン。
楽パから仙台駅まで15分くらい歩いて帰ろうと思った帰り道。気づけば延々と口ずさんでしまう、GOGOカズキーの田中和基の応援歌と並び、中毒性の高い神曲である。
そして最近SNS上である現象がおきている。
最近この歌詞からとった#ここで島内、#ここ島、というハッシュタグをよく見かけるのだ。パ・リーグTVやスポーツ新聞の公式アカウントでも島内が活躍するたびに“ここ島”ハッシュタグを使用。クワマンこと桑野信義がYouTubeで“ここ島”をトランペットを吹き出す……など“ここ島”応援歌がジワリジワリと広がっているのである。

島内宏明
昨年まで楽天イーグルスの応援プロデューサーをつとめ、野球の日(8月9日)に『野球と応援スタイル大研究読本』(カンゼン)を発売するジントシオ氏に話を聞いた。ジン氏は2019年当時、選手応援歌のリニューアルに伴い“ここ島”応援歌の制作にも携わった。
「(2018シーズンには)レギュラーを獲得し中軸を打ち始めていた島内選手。勝負を決する大事な場面で打席が回ってくるであろうと、そんな思いを込めて応援歌制作チームで作ったのは覚えていますね」
思えば“ここ島”応援歌が公開された2019年を境にファンから見た島内への信頼度も高くなっている気がする。これはもしかすると応援歌のおかげかも。
「いや応援歌を育てるのは選手自身と球場で応援しているファンですよ。応援歌が愛されるのは選手の活躍が前提ですよね。島内選手の勝負強いバッティングが素晴らしすぎるのでしょう」(ジン氏)
この世で一番“ここで島内”と叫んでいるB-モレル氏に話を聞く
おそらくこの世で一番“ここで島内”と叫んでいるオリックスファンで有名な全力絶叫系YouTuber・B-モレル氏はこう言う。
「オリファンの私からすると島内は、オリの天敵オールスターズの一人、なんですよ! ただ、島内という選手自身(敵チームのファンとして)最初全然意識してなかったというか、イーグルスによくいるタイプの生え抜きの左打ちの選手の1人でした。それがあの“ここ島”応援歌と共に成長していったというか、“なんで島内?”ぐらいだったのが“ここで島内!”、にマジで変わっていったのですよね」
決定的だったのが昨年7月7日京セラドームでの試合。3点差で迎えた9回二死。島内はツーストライクに追い込まれるものの最後の一球で“ここで島内”を発動。11号同点3点本塁打で試合は振り出しに。楽天ファンは歓喜、モレル氏は呆然自失となった。
「ホームラン以外ならなんでもありの場面でライトスタンドにぶちこまれました。ほんまに"ここで島内”はないやろ……と。この試合きっかけで、より島内をオリの “天敵”として意識するようになりましたね」
モレル氏いわく皮肉なことに動画再生数も伸びた、というこのオリファンにとって悪夢の七夕の日を境に"ここで島内”が野球界隈で現象と認知されたのではないかと個人的には思っている。
「コメント欄を見る限り島内という選手は(モレルのチャンネルで)視聴者から特別扱いされていますよね。生配信時の同時接続数が通常800人のところ、島内の打席の時だけ1000人に跳ね上がってました(笑)」(モレル氏)
―というかここまで聞いてて思ったんですけど、モレルさんは島内ファン&楽天ファンですか?
「いやいやいや(笑)。私は島内の応援歌、楽天応援歌のファンなんですよ!でも島内がMVPをとった去年現地に行ったオールスターは最高でしたね。オールスターは、合法的に他球団の応援歌を歌えるので、魂込めてここで島内を歌い上げましたよ(笑)。最近は動画の最後に、"今日の島内”というコーナーいれてます。島内が打ったら応援歌を歌うという、ええ……ただ歌いたいだけなんですけど(笑)。」
だけど島内の応援歌を歌い続けていたら、いつの間にか島内自身にも愛着が湧いてきてしまっている気がする、というモレル氏。
「島内の応援歌は、洗練されたメロディーにシンプルな歌詞。島内選手の特徴や魅力が(応援歌に)詰まって凝縮されていて完成度が高いです。楽天ファンの皆さんには、素晴らしい応援団が作った素晴らしい応援歌があるので誇りをもって応援してください!」
そして最後に島内に一言、お願いします!
「島内ィィィー! もうこれ以上、オリックス戦で“ここで島内”はやめてくれよおおお!!!!」
今シーズンが終わって"ここで島内”が今年の流行語大賞になるのであれば、それは楽天イーグルスが日本一になっているときだなとなんだか確信したのである。おおおおーおおおー。
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(ハガ ユウスケ)
ハガ ユウスケ