ユニコーンから社会インフラへ。クラウド人事労務の王者SmartHRの「圧倒的自信」

ユニコーンから社会インフラへ。クラウド人事労務の王者SmartHRの「圧倒的自信」

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/11/25
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発売中のForbes JAPAN2022年1月号の特集「日本の起業家ランキング2022」で1位に輝いた、SmartHRの宮田昇始。

ユニコーンの仲間入りをした、クラウド人事労務を展開する起業家が見据える先とは。

「あれだけユニコーンを意識していたのに、いざなると実感はないですね。出社している時期ならお祝いの会をやったかもしれませんが、リモートだったので、みんな『嘘みたいだよね』と。社内は変わってない。変わったのは、ほかの経営者の方からいじられる機会が増えたことくらいです(笑)」

クラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRは2021年6月、米セコイア・キャピタル・グローバル・エクイティーズなど8社から計156億円の資金調達を行った。このシリーズDラウンドで企業価値は推定1731億円となり、国内6社目のユニコーンに。大いに注目を集めたが、代表取締役CEOの宮田は興奮する素振りを見せずに穏やかに振り返った。

宮田がユニコーンを意識し始めたのは17年だ。ある経営者から、「時価総額1000億円未満の会社は存在していないのと同じ」と言われた。そのころSmartHRは事業開始から3年目で、企業価値は約20億円。宮田は「カチンときた」が、気になって調べてみると、納得する部分もあった。

「誰もが知っていて日々利用している企業は1兆円規模。1000億円だと、一部の地域だけだったり、年に2〜3回利用するかしないかだったりするサービスの会社さんが多かった。僕たちは社会のインフラをつくりたい。1000億円になってやっとスタートラインだという話は一理あると思った」

とはいえ、当時はまだ現実感がなかった。具体的な目標として社内で「ユニコーンになる」と掲げ始めたのは、シリーズBの資金調達を行った18年だ。

シリーズBではSPV(Special Purpose Vehicle)を活用した。SPVは、特定企業への投資を目的とする専用ファンドを通して資金調達するスキームだ。通常は自社で投資家回りをして資金を集めるが、SPVはファンドマネジャーがその役割を担う。このファンド組成を提案したのが、500 Startups Japan 代表兼マネージングパートナーのジェイムス・ライニー(現Coral Capital創業パートナーCEO)だった。

「ジェイムスが示したタームシートの時価総額欄が空欄でした。驚いて尋ねたら、『好きな金額を書いていい』。40億円でも厳しいと思っていましたが、思い切って65億円と書いたら、『SmartHRがユニコーンになると確信している。1000億円になるのだから、40億も65億も誤差の範囲』と返ってきた。自分たちが信じていないことを投資家が信じていた。僕らが頑張らないわけにはいかない」

そこからの快進撃は振り返るまでもないだろう。ARR(年間経常収益)は、SaaSスタートアップの理想の成長曲線といわれる「T2D3」のマイルストーンを達成し続けている。コロナ禍でも21年4〜6月ベースのARR45億円、前年比106%成長と、勢いは衰えていない。

シリーズC(19年8月)では、まだ半信半疑だった。海外の投資家にもアプローチしたが、「日本の起業家は、『グローバルを目指せ』と耳にタコができるほど言われる。僕らはドメスティックなので、興味をもってもらえるかなと」。

しかし、話をしに行くと、ある投資家から「KPIがスーパーヒーローだ」と称賛された。国内法人数187万社のうち同社の顧客は1〜2%。国内市場に限っても成長余地は大きく、ドメスティックであることをネガティブにとらえられていなかった。

宮田も自信がついたようだ。今回のシリーズDでは、「投資家側のほうの期待値が高くて、むしろお断りしなければいけないことが多かった」と明かす。

経営者としての自己評価は60点
ユニコーンになる目標を達成したのだから、この1年はさぞ自己評価が高いに違いない。そう予想して自己採点してもらうと、「会社は90点。でも、経営者は60点」と自身に辛口だった。

「経営者の評価の半分が業績だとしたら、そこは満点でした。一方、残り半分が会社の未来のために何か残すことだとしたら、この1年は新しいバリュー(行動指針)をつくったくらいだった。それはせいぜい10点。業績と合わせて60点です」

ただ、宮田は水面下で残り40点分の働きをしていた。これまでSmartHRは、本体で新プロダクトをつくるか、外部から起業家を呼んで新会社をつくるかというふたつのパターンで新規事業にトライしてきた。いま新たに取り組んでいるのは、創業者が外で新規事業を立ち上げる第三の道だ。

「権限委譲を進めてきたので、本体はもう経営チームに任せられます。僕は新規事業に寄っていく。中身は内緒ですが、来年頭から始めたいと考えています」

中身について聞こうと食い下がると、「SmartHRと少し方向性は違うけど、シナジーはあります。新事業が成功すれば、SmartHRも大きくなるはず。それができたら残りの40点を加えてもいいですね」。

権限委譲した経営チームで本体を育て、自身がつくる新規事業で側面から刺激を与える。うまくかみ合えば、次は企業価値1兆円以上のデカコーンが見えてくる。

「目指しているのは、SmartHRを社会インフラにすること。企業価値はあとからついてくる話ですから」

そうけむに巻かれたが、最後に社会インフラになる自信はあるかと問うと、落ち着いてこう答えた。

「『自信がある』と言うと、少し違う。もう『そうなる』と思ってます」

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