NASAが助成する新型「原子力ロケットエンジン」なら、45日で火星に到着できるかもしれない

NASAが助成する新型「原子力ロケットエンジン」なら、45日で火星に到着できるかもしれない

  • カラパイア
  • 更新日:2023/01/25
No image

人類は今、新たな宇宙探査の時代の真っただ中にいる。月への有人ミッションの後には、火星が控えているのだ。

だが、火星への道のりは長い。従来のロケットエンジンを使用する場合、火星到着まで8ヶ月かかると言われている。

だが、NASAの助成する新型の原子力ロケットなら、1カ月半と大幅にスピードアップするかもしれない。

「核熱推進」と「原子力電気推進」を組み合わせ、さらに特殊な過給機を搭載することで、火星までたった45日で到達できるロケットが実現するという。

【他の記事を見る】NASA、火星への有人飛行に向け「人工冬眠」、「星間移動」や「磁気フィールド」など8つの構想に資金援助

原子力ロケットエンジンとは?

原子力ロケットエンジンには主に2つのコンセプトがある。

1つは「核熱ロケットエンジン」だ。これは原子炉で液体水素を熱してイオン化(プラズマ)し、これをノズルから放出して推進する。

宇宙開発競争がたけなわだった1950年代以降、米ソが核熱ロケットエンジンの開発を試みたが、現時点で実用化にはいたっていない。

そして、もう1つが「原子力電気ロケットエンジン」だ。

こちらは原子炉で発電した電力でホール型推進機(イオンエンジン)を動かし、電磁場を発生させる。これによってキセノンなどの不活性ガスをイオン化・加速して推進力を得るというシステムだ。

原子力電気ロケットエンジンは、NASAが2003~2005年に行った「プロメテウス計画」などで開発が試みられた。

どちらのエンジンも、比推力(燃料の質量流量に対する推力を表す)に優れ、エネルギー密度がほぼ無限であるなど、従来の化学ロケットエンジンに比べて大きな利点がある。

例えば、原子力電気ロケットエンジンなら比推力は1万秒以上、つまり3時間近く推力を維持できるという長所がある。その反面、推力は核熱エンジンはおろか、従来のロケットエンジンに比べてもかなり低い。さらに排熱の問題まである。

一方、核熱ロケットエンジンは、速度の変化が大きなミッションにおいて、初期・最終質量分率をどうするかという問題がある。

No image

image credit:NASA

NASAが助成する、新型原子力ロケットエンジン

NASAは”SFの世界を現実”にするべく、毎年応募されてくる数百のアイデアの中から10件ほどを選んで資金や技術を助成する「NASA Innovative Advanced Concepts(NIAC)」というプログラムを行なっている。

今回の原子力ロケットエンジンは、2023年度に選出されたものの1つで、提案者は米フロリダ大学のライアン・ゴッセ教授ら研究グループだ。

ゴッセ教授らが提案するのは、双方のいいとこ取りだ。

No image

「核熱推進」と「原子力電気推進」を組み合わせ、さらに「ウェーブローター」を搭載するハイブリッドエンジン。火星まで45日で到達できるという / image credit:/Ryan Gosse

アメリカが1960年代に進めた核熱ロケット開発計画「NERVA計画」の原子炉をベースに、原子力電気ロケットエンジンの仕組みを取り入れたハイブリッド設計となっている。

さらに脈動型過給機「ウェーブローター」を搭載するのも特徴だ。これは排気管内の圧力が上昇することで生じる圧力波で、吸い込んだ空気(吸気)を圧縮する技術である。

核熱ロケットエンジンのウェーブローターは、原子炉が燃料を加熱することで生じる圧力で反応物質を圧縮する。

これによってNERVA計画のエンジンと同等の推力を得られると同時に、比推力は1400~2000秒になる。

さらに原子力電気ロケットエンジンを組み合わせることで、比推力は1800~4000秒にまでアップする。

Transforming Future Space Technology

火星まで片道45日を可能にする

このハイブリッド原子力エンジンならば、理論上、火星まで45日で行けるという。これは宇宙の有人ミッションや太陽系探査に革命を起こす可能性がある。

これまでのロケットなら、火星に行くには250日(8ヶ月)かかる。もし現地で1年調査をするのだとすれば、ミッションは3年に及ぶことになる。

だが片道45日(6週間半)で行けるのならば、ミッションは数ヶ月で終えられる。これは放射線や微小重力といった人体へのリスクを考えると、きわめて重要なことだ。

なお2023年度のNIACプログラムでは、原子力エンジンだけでなく、太陽光や風力がいつも利用できるとは限らない場所で電力を供給できる核分裂・核融合ハイブリッド原子炉も選ばれている。

こうした原子力技術の発展によって、いつの日か火星だけでなく、さらに遠くの宇宙を目指す有人ミッションすら可能になるかもしれない。

追記:(2023/01/25)本文を一部訂正して再送します。

References:New NASA Nuclear Rocket Plan Aims to Get to Mars in Just 45 Days : ScienceAlert/ written by hiroching / edited by /parumo

・あわせて読みたい→人類は火星で生き残れるのか?最大の難関は宇宙放射線。そのリスクは未知数(世界研究)

動画・画像が表示されていないときはこちらから

パルモ

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加