ワンピース、ポケモン...「いらすとや」が次々と「大人気コラボ」を実現できるワケ

ワンピース、ポケモン...「いらすとや」が次々と「大人気コラボ」を実現できるワケ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/04/07
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無料でたくさん素材を使ってもらい、認知度とブランドを高め、フリー素材という市場で不動の地位を獲得した「いらすとや」。その戦略は黎明期にモデムを無償で配布して成長したソフトバンクグループを彷彿とさせる。
そんな「いらすとや」は以前の記事で指摘したように、やはり「ユニコーン企業並み」のポテンシャルがあると、1級FP技能士の古田拓也氏は言う。大企業とのコラボも続々決まる「いらすとや」のポテンシャルに迫る。

いらすとやが「フリー素材」の代名詞に?

今年2月末に10周年を迎えると同時に毎日更新を停止した「いらすとや」だが、その勢いは止まるところを知らない。4月1日10時からは、ポケモンセンターオンラインで「いらすとや」のコラボグッズの取り扱いが始まる予定だ(実店舗では4月3日から)。

ポケットモンスターソード・シールドに登場するトレーナーやポケモンがあの独特なテイストでグッズ化されるという大型の企業コラボがスタートする。

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ポケモン公式ツイッターより

思い返せば、1月の「ワンピースコラボ」や3月の「いらすとやドーナツ」(イクミママ)など、「いらすとや」と企業のコラボが続々と実施されている。本来は無料で提供されているはずの「いらすとや」のイラストに、なぜ名だたる大企業は大金が動くコラボを依頼するようになったのだろうか。

そんな「いらすとや」だが、実は筆者は2年ほど前に「いらすとやにはユニコーン企業並みのポテンシャルがある」という主旨の記事を執筆したことがある。執筆した2019年当時も大きな注目を集めた「いらすとや」であるが、今ではそこからさらに注目度を高めている。それを証明するデータが、Googleの検索ボリュームの推移だ。

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Googleにおける検索トランザクションデータを公表する「GoogleTrends」には、驚くべき事実が示されている。今から5年前の2016年当時は、「いらすとや」というキーワードの検索ボリュームは「フリー素材」というキーワードの4分の1程度しかなかった。しかし、足元では「フリー素材」という検索キーワードよりも検索ボリュームが上回る場面が見られてきたことがわかる。

本来であればフリー素材という大分類の中にある「いらすとや」であったはずが、今や「いらすとや」がフリー素材の“代名詞”と化しつつあるといっても過言では無い状況となっているのだ。

例えば「梅干しのおにぎり イラスト」のように、「いらすとや」というキーワードが入っていないワードでも、「いらすとや」のページがトップヒットする検索ワードもある。

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(出所)いらすとや

そもそも、「フリー素材」という検索ワードでも、TOP5以内に「いらすとや」が入っており、イラスト系素材サイトの中ではトップヒットとなっていることから、「フリー素材」の検索ボリュームのうち、相当数が「いらすとや」へ流入しているはずだ。

これらの点も加味すれば、「いらすとや」は、もはや我が国における「フリー素材」の代名詞と言っても差し支えないくらいの支持を集めているといえるだろう。

「無料」は「無価値」ではない

「いらすとや」は自身のサイトを「かわいいフリー素材集」と紹介する通り、原則として誰でも無料で「いらすとや」の素材を使用することができる。しかし、「無料」とは単に支払う金額が0円であるというだけで、「お金を払う価値がない」ということを意味するわけではない。

実は、「いらすとや」のフリー素材に根ざしたビジネスモデルは、今や時価総額20兆円を誇るソフトバンクグループの黎明期を彷彿とさせる。

ソフトバンクが急成長したきっかけは、当時Yahoo!BB のADSLサービスを勧誘していた「パラソル部隊」である。パラソル部隊は、駅前や街角で、本来であれば有料のADSLモデムを無料で配布し、これによりYahoo!BBの加入者を急激に伸ばした。

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(出所)いらすとや

無料でまずは使ってもらうことで顧客層を拡大し、後のBBモバイル、ボーダフォン買収、そして三大携帯キャリア化という成長の軌道を描くことになる。

基本的なサービスや製品を無料で提供し、その後のサービス利用によって収益をあげる仕組みのビジネスモデルをフリーミアムモデルという。先行投資が嵩むことで、当初は赤字になるものの、それにより顧客シェアを獲得して、その後に継続的な収益を上げていくことが目的だ。

ソフトバンクグループは、PayPayでも、大規模な赤字をものともせずにQR決済ユーザーに還元を続けているが、これもフリーミアムモデルの一環で、初期に大幅な赤字が出るものの、これでシェアを獲得することで、「Jカーブ」を描くような急成長を目指している。

「いらすとや」のイラストも原則として無料で使用できるが、それは無価値であることを意味しない。無料でイラスト素材を活用できたユーザーは、再び「いらすとや」のイラストを使用するようになるだろう。

「いらすとや」がソフトバンクと違うのは、ユーザーから直接課金を受けるのではなく、ユーザーの人気(=アクセス数)にあやかって宣伝をしたい広告主や、「いらすとや」のブランドを活用したい企業に課金を促すBtoBに根差したビジネスモデルである点にあるだろう。

「いらすとや」は、フリーミアムモデルを活用することで、いい意味で「タダより高いものはない」を実践しているのだ。

追従サイトは「いらすとや」を破れるか

実は、「いらすとや」が毎日更新をストップしてから、そのビジネスモデルに追従するサイトが雨後の筍の如く出現している。「いらすとや」の正式名称が「かわいいフリー素材集 いらすとや」であることから、サイト名やホームページのメタタグ等に「かわいい フリー素材」などと挿入することで、「いらすとや」のユーザー層を引き継ごうとする動きをする業者も一部ではみられる。

しかし、「いらすとや」のビジネスモデルは、逆説的であるが、「ビジネス」でないからこそ成立する側面もある。

「いらすとや」が開設されて最初の数年は、アクセス数も知名度も高くはない状態であった。運営者のみふねたかし氏が「いらすとや」にかけた時間を人件費に換算し、サイトを運営するためのサーバー代等を加味すれば、多少の広告収入が入ったとしても、はじめは実質的に赤字で運営されてきたものであると推察される。

そして、「ビジネス的」にやろうとすれば本来は利用シーンが見出せないような「電子レンジで卵を加熱したら爆発してしまったイラスト」や「つけ麺の焼き石のイラスト」、「買い物の帰りにレジ袋の中で寄ってしまったパック寿司のいらすと」のような素材に手を回すのは不可能なはずだ。

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なぜなら、このような素材は制作コストに対してアクセス数が見込みづらく、広告費で回収できる見込みが低いと判断されるからだ。

したがって、ビジネス的にフリー素材サイトを運営するほとんどの会社が、「無難で・アクセス数が見込めて・みんなが必要としている」素材作りに終始していたのだ。

そこに10年の歳月をかけて風穴を開けた「いらすとや」だが、上記のようなシュールなフリー素材でもユーザーのリクエストに応じつつ採算度外視で提供し続けてきた結果、それがSNS等で話題となり、今の地位を確立するに至ったのだ。

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(出所)いらすとや

つまり、「いらすとや」のビジネスモデルに追従するのであれば、最低でも5年程度は採算性を度外視して運営を続ける覚悟が必要であるといえる。しかし、一般的な事業計画は最低でも3期~5期以内にスケールしなければ撤退するというのが相場であるため、ビジネスで考えた際にそれだけの忍耐力が維持できるかが問題となる。

「いらすとや」が更新を停止してもなお高い検索ボリュームを維持していたり、数多くの大企業とコラボを実施したりしていることからすれば、追従サイトが「いらすとや」の地位を追い抜くのは、簡単そうに見えて実はかなり難しいと考えられる。

無料で自身の素材を使ってもらい、ブランド力を高め更新停止後も企業コラボが跡を絶たない「いらすとや」。そのソフトバンク的戦略を10年以上前から続けてきた「いらすとや」にはやはり「ユニコーン企業並み」のポテンシャルがあることに疑いの余地はないだろう。

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