ヒラリーの悪夢、再び...? 米国「女性大統領候補」を待ち受ける「イバラの道」

ヒラリーの悪夢、再び...? 米国「女性大統領候補」を待ち受ける「イバラの道」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/10/18
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全米デビューしたカマラ・ハリス上院議員

カマラ・ハリス上院議員が、全米デビューした。10月7日夜(日本時間8日午前)のTVディベートだ。民主党副大統領候補のカマラ・ハリスは、初の女性大統領への第一歩を順調に踏み出したのだろうか。

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大注目のカマラ・ハリス氏 photo by GettyImages

アメリカの大統領選挙2020はいよいよ大詰め。投票日は11月3日に迫っている。9月29日にはトランプVSバイデンの大統領候補同士のディベート(一回目)が行なわれ、泥仕合に終わった。トランプが不規則発言を連発し、討論にならなかった。

そのあとトランプのコロナ感染が判明し、入院。でもすぐ退院し、タフなところをアピールしている。ディベートの二回目(10月15日)は中止になった。三回目(10月22日)が行なわれるか、不透明だ。

カマラ・ハリスVSマイク・ペンスの副大統領候補対決は、前週のトランプVSバイデンよりましだった。少なくとも、討論のかたちになっていた。

会場は、ユタ州ソルトレーク・シティ、司会は、USAトゥデーのスーザン・ペイジ氏。ハリスはステージの左側、ペンスは右側に離れて着席し、アクリル板が両者を隔てている。

全部で90分。コロナ/副大統領の役目/経済/気候変動/中国/最高裁/人種と正義/大統領選挙、の8つのテーマについて、双方2分ずつ発言。そのあと討論を交わす、という流れだ。

副大統領! 私が話してるんですけど

ハリスは厳しい検察官のイメージがあった。そこで、笑みを絶やさず、ソフトな印象を与える作戦をとった。今回初めて、ハリスが話すところを、じっくり観ることになった有権者も多いだろう。おだやかだが、しっかりした語り口だ。

ペンスが話の途中に割り込むと、「副大統領! 私が話してるんですけど」と切り返した。

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photo by GettyImages

おおむね好印象を与えたようで、CNNの事後調査では、ハリス59%・対・ペンス38%と、優勢の数字が出た。ただしこの調査は、CNNの視聴者に電話をかけたもの。もともと民主党寄りなので、割り引いて考える必要がある。

カマラ・ハリスは父がジャマイカ、母がインドの出身。アメリカでは黒人になる。法律を学び、カリフォルニア州で検事をつとめて、州司法長官に当選。そのあと上院議員になった。2019年、民主党大統領候補の予備選に立候補し、いい線だったが脱落。バイデンに指名されて副大統領候補の座を射止めた。

ジョー・バイデンは77歳、トランプより高齢だ。かりに当選しても、二期目に出ない可能性が高い。では4年後、民主党の大統領候補は誰か。副大統領のカマラ・ハリスが、最有力なのは間違いない。というわけで今回、副大統領候補のハリスは、将来の大統領として大丈夫かもチェックされている。

「女性で黒人」は、やはりハンデである。ちょっとどうも、と思う有権者がそれなりにまだいるのだ。ハリス候補はそれを、乗り越えられるか。

黒人にも、いろいろある。ボストンで、ある黒人の教会を訪れたら、自分たちはカリブ海の出身だと言っていた。ボストンは港なので、カリブ海からその昔、港湾労働者が移住して住み着き、コミュニティをつくって教会に集まっている。自分たちは奴隷でなく、自由民としてこの国に来たのだ、というニュアンスだ。アフリカ系の黒人が聞いたら、コチンと来るかもしれない。

ハリス候補はジャマイカの血をひき、アフリカ系黒人でない。インド系でもある。彼女はわれわれの代表だ、と人びとが思うかどうか、微妙なところがある。

ペンスのスピーチは菅官房長官の記者会見のよう

では、両候補のスピーチの出来ばえはどうだったか。『パワースピーチ入門』を7月に出したばかりで、政治家のスピーチに関心のある私は、耳をそばだてて、ディベートの応酬に注目した。

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まずペンス候補。先週トランプが行儀が悪くて評判を落したのを挽回しようと、冷静にそつなくやりとりを進めた。大きな減点なし、である。でも地味で、面白みに欠ける。なんとなく、菅官房長官の記者会見を思わせる。

そして、じっくり聞いてみると、司会の質問をはぐらかし、正面から答えないケースが多い。ハリス候補から、民主党の左派っぽい発言を引き出して、立ち位置をぐらつかせようともした。

ハリス候補は、まだ試運転の段階だ。政策をよく煮詰め、パンチラインをつぎつぎ繰り出すにはほど遠い。先週のバイデン候補の発言と、合わないと思えるところもある(グリーン・ニューディールなど)。外交は苦手なようで、中国は敵か味方かと聞かれたが、答えに説得力がない。

それでも全米デビューは、うまく行った。注目の集まった大舞台を、落ち着いてやりとげた。ハリス候補は元気で、華がある。頭はよいので、政策はこれから勉強し、スタッフとチームを組めばよいだろう。

11月3日の選挙への影響は

今回の副大統領候補ディベートは、11月3日の選挙のゆくえにどう影響するか。

トランプは感染のあと、支持率をなお下げた。バイデンに10ポイント程度、差をつけられている。ふつうなら民主党圧勝だが、まだ予断を許さない。バイデン陣営には熱気がなく、しぶしぶ支持している有権者が多い。コアな支持層を固めているトランプをあなどれない。

今回のディベートは、バイデン有利の流れを、なお確かにしたろう。ペンスはトランプのマイナスを取り返そうとよくやったが、逆転するには決め手を欠いた。

ハリス候補は、2024年の女性大統領誕生に向けて、一歩近づいたのか。たしかに一歩は近づいた。選挙戦終盤の注目の討論会で、有権者にまずまずの印象を残したからだ。だが、この先はまだ長い。そして厳しい。

つぎの一歩は、大統領選でトランプを破ること。ここで負けては、話にならない。

そのつぎの一歩は、副大統領として、しっかり仕事をし、有権者によい印象と信頼感を与えること。4年間は長丁場だ。よく勉強し、経験を積み、失敗しても取り返す技量と精神力が必要になる。

ヒラリーの二の舞になってはいけない

オバマ政権のヒラリーは、だいたい同じ位置にあった。国務長官をつとめ、それなりに仕事もしたが、メイル問題でケチをつけた。権力の中枢にいるうち、清新なイメージが崩れて行った。同じパターンになってはいけない。

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photo by GettyImages

副大統領は、決まった仕事がない。バイデンに、仕事を分けてもらわないといけない。でも、手足となる部下がいない。見せ場をつくり、成果もみせるのは、ハードルが高い。

そのつぎの一歩は、2024年に、バイデンが出馬しないと決めるかどうかだ。ハリスは、年だから辞めなさい、とも言えないし、辞めないで、とも言えない。そこをしくじると微妙なことになる。

さらにつぎの一歩は、民主党の予備選で、ぶっちぎりの好位置につけること。2020年のバイデンは、元副大統領なのに、それなりに苦しんだ。サンダースやウォレンやブティジェッジやハリスなど対立候補の票が割れたので、救われたかたちだ。

2024年に、民主党が一枚岩になって、ハリスを推すかどうか。民主党の指名を受けられるか、である。

そして最後の一歩は、共和党の対立候補を破って、大統領に当選すること。気の遠くなるようなタフな戦いが、これからハリスを待っている。

アメリカで大統領になることの難しさ

アメリカで大統領になることの、何がむずかしいのか。

大きな政府/小さな政府。リベラル/保守。平等/自由。政治理念の対立軸をめぐり、共和党と民主党が争うのが、アメリカの政治だった。

ところが、アメリカ社会の分断が進んだ。宗教右派という岩盤支持層を掘り起こせば、当選できることを発見し、共和党を乗っ取ったのが、トランプ大統領だ。社会主義路線でそれに対抗するのが、サンダース候補やウォレン候補のリベラル左派だ。

リベラル中道や、保守中道が、ふたたび多数派を形成することができるのか。ハリス候補は、リベラル中道に軸足を置く。保守中道やリベラル左派、宗教右派が立ちはだかる。

SNSのフェイクニュースやQアノンの陰謀論を信じる有権者も、無視できない人数になっている。古典的なグラスルーツ(草の根)の政党組織は、ガタガタになっている。

これを立て直して、アメリカの再生をはかること。新しい理念を示すこと。カマラ・ハリス候補が直面する課題は、とてつもない難題なのである。

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