SHERBETS、25周年ツアーで体感したい“透徹した美しい音像” 不動の4人が繰り広げてきたライブの変遷を振り返る

SHERBETS、25周年ツアーで体感したい“透徹した美しい音像” 不動の4人が繰り広げてきたライブの変遷を振り返る

  • Real Sound
  • 更新日:2023/05/26
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結成25周年を記念したSHERBETSの全国ツアー『SHERBETS 25th ANNIVERSARY TOUR「Midnight Chocolate」』が開催中だ。ニューアルバムのタイトルを掲げた今回のツアーでは、バンドの歩みと現在形の両方を体感することができ、すでに最高のライブが展開されている。ここでは、折り返し地点に差しかかっている本ツアーへの期待値をさらに高めるべく、SHERBETSが今までどんなライブを繰り広げてきたのかを綴っていこうと思う。

前身であるアコースティックユニット、SHERBET(ギター&ボーカルの浅井健一、キーボードの福士久美子らが在籍)が発展する形で結成された4人組バンドのSHERBETSは、当初から現在まで不動の布陣である。そのライブの第一歩はちょっと変則的で、1999年、アルバム『SIBERIA』の録音で訪れたサンフランシスコのライブハウスで行われている。

当時のベンジーこと浅井は、破格のバンド BLANKEY JET CITYによってロックシーンを飛び越えるほどの存在だっただけに、SHERBETSについては彼のソロ活動の場として見られることが多かった。その上、最初のシングル曲になった「HIGH SCHOOL」はパンキッシュかつラウドなロックンロールで、世の中的には「ベンジーがもうひとつロックバンドを作ったのか」という認識が強かったはずだ。なお同曲は、ライブの際に福士が唯一ギターを弾く曲として今も認知されている。

しかし実際には、ファルセットの箇所もあるメロウナンバー「はくせいのミンク」、サイケデリックでスローな「シベリア」のように、『SIBERIA』ではベンジーの歌の文学性や少年性がセンシティブに表出する箇所が際立っていた。また、ハードな展開を持つ「ジョーンジェットの犬」のような曲でも、福士のキーボードが果たす役割は絶大。ソロでも活動する彼女は、音の空間を映像的な音色で彩ることができる才人である。

こうした側面はSHERBETSのライブにおいても同様だった。数年前まで身を引き裂かんばかりのシャウトを聴かせていたベンジーが、このバンドではソフトな歌い方をしている姿からは、彼が新たな領域に踏み出そうとしている事実が強く感じられたのである。

BLANKEYが解散した2000年の夏には『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に出演し、暮れにはアルバム『AURORA』をリリースしたSHERBETS。転がるようなビートが続く「グレープジュース」は、ネオアコ系のバンドにも在籍したドラマー・外村公敏の持ち味が出た曲だと言えるだろう。この時期はライブを重ねるごとに演奏の一体感が高まり、メンバー同士の呼吸がどんどん合うようになっていった覚えがある。また、アルバムタイトルからもわかるように、当時のSHERBETSの作品には寒い世界をイメージしたものが多く、そこから発案されたのか、2001年の1月には新宿Flagsでのルーフトップギグを開催。夜の冬空の下の寒さとともに、非常に思い出深いライブだ。

ここから2001年のSHERBETSは『FUJI ROCK FESTIVAL』や『RISING SUN ROCK FESTIVAL』への初出演を挟みながら、シングル3枚の連続リリース、さらにまっさらの新曲で揃えたアルバム『VIETNAM 1964』へと一気に加速し、バンドとしての絶頂期を迎える。そのシングル群の第2弾「カミソリソング」は仲田憲市(Ba)のスペイシーなベースラインが延々と続くアッパーな曲で、この頃のライブのクライマックスに向かう起爆装置として機能していた。当時、The Smashing Pumpkinsに傾倒していた仲田は、かねてからニューウェイヴやポストパンクに通じ、その上にサイケデリックなニュアンスも匂わせる演奏を聴かせるプレイヤーで、バンドにおける存在は大きい。そして『VIETNAM 1964』のツアーでのSHERBETSは、センシティブなバラードも爆音のロックンロールも余すことなくパフォーマンスし、バンドとしてひとつの完成形を見たかのような境地に達した。

その反動なのか、2002年初頭のツアーを終えてからは活動が冬眠状態に入り、ベンジーはスリーピースバンドのJUDEを始動させるに至るのだが、SHERBETSはこうした合間にも水面下での制作を続けていた。その成果は2005年にアルバム『Natural』となって結実。イントロから仲田のベース音が無音の空間に響く「フクロウ」は、まさにSHERBETS以外には表現しえない世界だ。

CMC会員限定配信予告編(フクロウ)

また『Natural』には、ベンジーのナイーブな部分が仲田、外村、福士の感性と最上の形で交わる名曲「わらのバッグ」もある。この年の、夜の『RISING SUN ROCK FESTIVAL』で披露された同曲が感動を与えてくれたことをよく覚えている。

2007年のアルバム『MIRACLE』の中で、とりわけライブの場でなじみ深いのは外村のアクセントのあるドラミングも特徴的な「Rainbow Surfer」だろう。メジャーコードの展開がポジティビティを強く感じさせる曲である。さらに2008年のミニアルバム『GOD』では「小さな花」、同じ年のフルアルバム『MAD DISCO』では「KODOU」といった曲たちが、ライブの空間に灯りを、希望をもたらしてくれた。それぞれに大切な作品たちだ。

SHERBETS - 小さな花(FUJI ROCK 22)

ここからのSHERBETSは、作品を何作かリリースし、しばらくライブを行っては数年間のインターバルを空けるというペースが定着した。それだけに熱烈なファンでもライブを観るのが何年ぶりかになる、というのが通例になったわけだが、2011年の『FREE』にはややイメージの異なる音像が刻まれていた。この時期の代表曲「リディアとデイビッド」に顕著なように、サウンドのファンク成分がほんのりと増しているのだ。おそらくこれには当時ほかのバンドでも叩くことが多かった外村がドラマーとして成長したことが関係しており、パワフルさを備えた彼のビートはSHERBETSのライブにおいてもひとつの魅力となった。その力量は、スタジオ録音ではリズムの強度に転化されており、仲田もこれに呼応するベースラインを繰り出していったのだと思われる。また、2012年の『STRIPE PANTHER』では、あたたかみを求める思いを唄うミディアムバラードの「星空の方があったかい」を収録。静かな中に福士のピアノが響くこの曲を生で聴くたびに、個々人の世界に入っていくオーディエンスも多いのではないかと思う。

SHERBETS「リディアとデイビッド」

2015年の『きれいな血』の中の楽曲では、ライブで聴く時に〈ねぇ 今から歌をうたおう 何でもいい声を合わせたい〉というフレーズをつい一緒に口ずさんでしまう「ひょっとして」が印象深い。翌2016年の『CRASHED SEDAN DRIVE』では、アルバムタイトル曲で重いベースを弾く仲田が、ステージ上でベースを弾かない間に両腕を身体の前でくるくる回すアクションをしたこともあった。

SHERBETS "ひょっとして" (Official Music Video)

また、この時期からのベンジーはMCをすることが多くなり、各メンバーに話を振ったりするなど、ライブでの楽しみもナチュラルに増えていった。SHERBETSのステージは演奏に加え、音響やライティングの微細な演出が魅力的なのだが、4人が素のままで話す場面もこのバンドらしさを感じさせてくれる。そういえば制作にコンピューターを使うことがあっても、ライブではできる限り生で、というのも基本姿勢だ。それもまた、ヒューマンな温もりを表現するこのバンド特有のものだと思う。

この後は2018年にベストアルバム『The Very Best of SHERBETS「8色目の虹」』リリースや、20周年記念のツアーがあった以外はさほど大きな動きが見られなかったが、昨年は6年ぶりにアルバム『Same』を発表。メンバー全員はベテランの域に入っているはずなのに、それでも「Grantham」のようなピュアな感覚にあふれた曲を聴くと、バンドの芯の部分は変わっていないのだと思わせてくれる。

そして今年4月26日にリリースした13枚目のフルアルバム『Midnight Chocolate』では、昨年秋のツアーで得た勢いをレコーディングに反映。「知らない道」のようなストレートな心情を歌う曲に、現在のベンジーの、そして4人のリアルを感じる。そう、リアルでありながら、ファンタジーも歌う。不変でありながら、現在の姿も描く。こうしたところもSHERBETSらしさだと思う。

SHERBETS「知らない道」Music Video

今回こうして記事を書くにあたって振り返った際に、SHERBETSのライブでBLANKEY(およびAJICO)のレパートリーである「ぺピン」や、ベンジーがソロで発表した「WAY」(スタジオ録音にSHERBETSが参加)などが演奏されたことも思い出した。それでもこの4人だけが……SHERBETSだけが表現しうる世界は、たしかに存在する。

なお、この5月からのツアーに合わせて、SHERBETSは新しいMVを制作した。曲は前作『Same』の最後を飾ったバラードの「Lonely Night」で、バンドの25年にわたる思い出のシーンをまとめた仕上がりになっている。ライブに行く予定の方は、ぜひこの映像を堪能して、4人の魅力を再確認してほしい。

SHERBETS「Lonely Night」Official Music Video

今度の旅で4人はどんなミラクルを見せてくれるだろうか。今のSHERBETSだけが到達しうる、透き通った世界。そして、あたたかみに満ちた世界。ツアー後半戦に向けて、大いに期待している。

■リリース情報
SHERBETS
New Album『Midnight Chocolate』
4月26日(水)発売

【初回生産限定盤】4,950円(税込)
・60Pスペシャルブックレット「AUTOMATIC COMEDY」
・アルバムジャケット柄ポストカード12枚封入
・SPECIAL BOX仕様
【通常盤】3,300円(税込)

ダウンロード/ストリーミング
https://sherbets.lnk.to/Midnight_Chocolate_EP

<収録曲/初回生産限定盤、通常盤共通>
1.知らない道
2.Spread City
3.セダンとクーペ
4.HAMMER HEAD BRUNCH
5.Aurora Squash
6.Fantastic
7.愚か者
8.ROLL
9.こわれた大人
10.優雅に行こうぜ

■ツアー情報
SHERBETS 25th ANNIVERSARY TOUR『Midnight Chocolate』
5月26日(金)福岡DRUM Be-1
OPEN 18:30 START 19:00 info / LAND 092-710-6167
5月27日(土)岡山IMAGE
OPEN 18:00 START 18:30 info / YUMEBANCHI(岡山) 086-231-3531
6月3日(土)大阪CLUB QUATTRO
OPEN 17:45 START 18:30 info / 清水音泉 06-6357-3666
6月4日(日)名古屋THE BOTTOM LINE
OPEN 17:15 START 18:00 info / JAILHOUSE 052-936-6041
6月8日(木)東京Zepp Shinjuku
OPEN 18:00 START 19:00 info / SMASH 03-3444-6751
6月17日(土)沖縄Output
OPEN 17:30 START 18:00 / PM AGENCY 098-898-1331

TICKET ¥6,800(TAX IN,1 DRINK ORDER)
<一般チケット発売中>
イープラス
https://eplus.jp/sf/search?block=true&keyword=SHERBETS
チケットぴあ
https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=SHERBETS
ローソンチケット
https://l-tike.com/search/?keyword=SHERBETS

Official Website(浅井健一|SEXY STONES RECORDS)

青木優

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