北大、超薄膜の電気抵抗が厚さに依存して周期的に振動する現象を発見

北大、超薄膜の電気抵抗が厚さに依存して周期的に振動する現象を発見

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/11/25
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北海道大学(北大)は11月22日、室温でも数千倍、低温では10桁にも迫るという、従来のサイズ効果と比較して桁外れに大きな変化を有する、超薄膜の電気抵抗が厚さに依存して周期的に振動する現象を発見したと発表した。

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同成果は、北大大学院 工学研究院の迫田將仁助教、同・丹田聡教授、北大大学院 理学研究院の延兼啓純助教、北大 触媒科学研究所の下田周平技術職員らの研究チームによるもの。詳細は、物理が題材の学術誌「Physical Review」シリーズの物性物理を題材とした「Physical Review B」に掲載された。

電子は、通常の金属中において、3次元方向に自由に動き回ることが可能だが、その自由さに制限がかけられると、さまざまな量子現象につながることが知られている。また、超薄膜、量子細線、または量子ドットを作製することで、電子の動きを制限した低次元系を人工的に創成することができるようにもなってきた。しかし、複数の元素を正確に制御することは技術的に難しいため、数ある元素で構成される化合物の低次元系における特性は未知の領域だとされている。

そこで研究チームは今回、分子線エピタキシー法を用いた原子の安定供給により、高品質のカルシウムとルテニウムの酸化物「CaRuO3」の10nm未満の超薄膜を作製し、人工的に創成した2次元系において発現する現象の開拓を行ったという。

実際に、原子間力顕微鏡を用いてCaRuO3の表面の粗さを観察したところ、199pmと原子の大きさ程度の平坦さが確認されたという。

また、さまざまな厚さにおける電気抵抗率の測定を行ったところ、その電気抵抗率は、膜厚が10.1nmの場合は金属だが、膜厚が薄くなっていくと電気抵抗率は上昇し、8.5nmの場合、4.2Kで2×108mΩcmの電気抵抗率となり、典型的な絶縁挙動を示したものの、さらに薄くなった場合、電気抵抗率の大きさは再び減少し、最初の金属状態に戻ることが確認されたという。例えば厚さ7.1nmと8.5nmというわずかな違いながら、電気抵抗率は室温で3桁、低温で9桁以上の変化を示すことが判明したとする。

より詳細な調査として、0.8~16nmの異なる膜厚におけるCaRuO3の4.2Kおよび300Kでの電気抵抗率が調べられたところ、膜厚に応じて電気抵抗率が2.5nm周期で変動していることが判明したほか、1つの膜をエッチングすることによっても光学強度の周期的な変化が再現されることを確認したともしている。

これまでも、こうしたわずかなスケールの違いによる電気抵抗の変化は、ビスマス材料に代表される量子サイズ効果では、室温で~10%、低温でも数倍程度のものが観測されていたが、今回のような大きな電気抵抗の変化の報告はなかったという。

なお、今回発見された現象のメカニズムは、研究が発表された時点では明らかになっていないという。しかし、これまでの研究における結晶異方性や電子状態の報告などから、研究チームは「モット絶縁体」と「パイエルス転移」が共存する新奇なメカニズムを提唱している。

また、今回の成果について研究チームでは、基礎科学と工学への応用の両方に対して、将来の貢献が予想されるとしている。

波留久泉

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