東京五輪の正捕手に推したい捕手は? 谷繁元信がパ・リーグの捕手を診断

東京五輪の正捕手に推したい捕手は? 谷繁元信がパ・リーグの捕手を診断

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  • 更新日:2021/06/11

谷繁元信のセ・リーグ「捕手診断」はこちら>>

今季のパ・リーグは約60試合を終え、首位の楽天から5位の西武まで6ゲーム差にひしめいている(成績は6月9日時点)。各チームともに決め手を欠き、混戦が続きそうな気配のなか、「捕手」という観点から見ると、一歩リードしているのがソフトバンクだ。

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西武の正捕手の座を掴んだ高卒8年目の森友哉

正捕手の甲斐拓也がここまで全62試合で先発出場。エース千賀滉大やクローザー森唯斗が故障で離脱するなか、チーム防御率3.33はリーグトップだ。盗塁阻止率.424は同じくリーグ最高で、打っても打率.261(リーグ17位)、7本塁打(同10位タイ)、29打点(同12位タイ)と下位打線で存在感を放っている。

甲斐は2010年育成ドラフトで入団し、強肩を武器に球界を代表するキャッチャーに成長した。リード面で課題を指摘されることもあったが、捕手として通算27年間の現役生活を送った谷繁元信氏は、配球面でも成長が見られると語る。

「甲斐のリードを見ていると、こういうふうにバッターを抑えようという意図が伝わってきます。工藤(公康)監督は厳しい目で見るので、『まだまだ』と思われているかもしれませんが、ある程度のレベル以上はできるようになってきました。

以前はシーズン中の"ここ"という場面や勝ちゲームの最後にベテランの高谷(裕亮)と交代していたけれど、それはどこかに"手詰まり"があったからでしょう。今年は最後までマスクをかぶる試合が増えて、チーム内の評価も上がっていると思います」

2017年からチームのメインでマスクをかぶるようになった甲斐だが、当初は試合終盤になると髙谷に代えられることも少なくなかった。しかし今季、髙谷は4月5日に登録抹消となり、甲斐がマスクをかぶったままゲームセットを迎える試合が増えている。試合の最後まで任されるのは、首脳陣の信頼の証と言えるだろう。

ちなみに7月後半に行なわれる東京五輪の野球日本代表でも、甲斐は正捕手の最有力候補だ。谷繁氏が捕手として推すのは、甲斐と梅野隆太郎(阪神)だという。

「体が元気なことも含め、トータル的な判断ですね。甲斐も梅野も今年、そこそこ打っています。ふたりとも肩もありますしね。甲斐は短期決戦の経験があるのも大きいです。オリンピックはベンチ入り人数が限られているので、体が強い選手がほしい。そう考えると、このふたりだという気がします」

話をパ・リーグの捕手に戻すと、他の選手について谷繁氏はどう評価しているのだろうか。

「正直、みんな伸び悩んでいますよね。たとえば、オリックスの若月(健矢)、日本ハムの清水(優心)。高校からプロに入って、なんとかチームとして育てようとして使ってもらったけど、結局そこまで伸びずに今に至っている。もったいなく感じますね。ロッテも楽天も、みんな何かひとつ欠けている」

2013年ドラフト3位でオリックスに入団した若月は、西村徳文前監督時代にメインで使われていたが、昨年5月から中嶋聡監督(当時監督代行)が率いると出番は減少していく。今季は打撃を持ち味とする頓宮裕真と伏見寅威が多くのチャンスを与えられている。

2014年ドラフト2位で日本ハム入りした清水は今季、チームで最も多く先発マスクをかぶっているが、打率.220の打撃が課題だ。宇佐見真吾や石川亮も併用されているものの、いずれもアピールし切れていない。

ロッテは田村龍弘が左太もも裏の肉離れで4月27日に登録抹消され、以降は大卒2年目の佐藤都志也が中心となって起用されている。捕手はさまざまに思考を巡らせることが多いなか、持ち味の打撃をどれだけ発揮できるかもポイントになりそうだ。

楽天は太田光が第一捕手として出場しているが、「打率が低いし(.207)、スローイングも安定性に欠ける」と谷繁氏は指摘する。

そんななか、圧倒的な打力で定位置を掴んでいるのが西武の森友哉だ。

昨季は不振に陥ったものの、今季は3試合をのぞいてすべて先発マスクをかぶり、4月30日に打率.262だったところからリーグ7位の打率.293まで上昇させてきた。8本塁打(リーグ8位タイ)、21打点(リーグ23位タイ)と長打力も光っている。

森は入団から長らく、「守備が課題」と指摘されてきた。今季はリーグワーストのチーム防御率4.17だが、谷繁氏は一定の評価を与える。

「バッティングばかりフォーカスされますが、キャッチャーをすごく一生懸命やっています。キャッチング、スローイング、ブロッキングもまだまだ改善の余地があるのは確かです。リードもいろいろ考えてやっているけど、結果になかなか表われていません。

そこはピッチャーも含めて改善していかないといけないポイントですけど、森を見ていると、バッティングを含めてなんとかしようとする姿勢がすごく伝わってくる」

高卒8年目の森は25歳で、まだまだ成長途上だ。とりわけ捕手は専門性の高いポジションで、とにかく経験を重ねることが大事だと谷繁氏が続ける。

「たとえば、足のステップと、そこからのスローイング。これらを自分のモノにするには、反復練習しかないんですよね。意識しないでも自然にできるようになった瞬間、『自分のモノになった』と僕は思いました。いざという場面で、自然に体が動くようになるレベルにしておく必要があります」

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谷繁氏の場合、プロ入り10年目でその域まで到達できたという。高校1年の夏から本格的に捕手をはじめ、10年以上を要した。

「僕の場合、少し遅かったですね。とにかくキャッチャーは、練習を続けていくことが大事です。自分では『十分にやりました』と思っていても、周囲から見れば、自然と動けるようになるまで努力を続けられていない選手もいる。そこまでやり続けないといけない」

チームにひとつしかない定位置を争い、定期的に出場機会を得るには、秀でた武器が不可欠だ。森のように打撃で欠かせない戦力になれば、首脳陣からチャンスを与えられ、経験を重ねる中で課題を克服していくこともできる。そうした代表例が甲斐で、強肩を武器に育成出身から日本を代表する捕手になった。

いずれも伸びしろを残すパ・リーグの捕手たちは、今季の混戦の中でどんな成長を果たしていくのか。ペナントレースの行方とともに、キャッチャー陣の奮闘も楽しみだ。

中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke

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