コロナ禍で「ペットの飼育放棄」が急増!「棄てない飼い主」になるのに知るべきこと

コロナ禍で「ペットの飼育放棄」が急増!「棄てない飼い主」になるのに知るべきこと

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/04/09
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長引くコロナ禍の癒やしとして、注目を浴びるペットたち。一般社団法人ペットフード協会の「令和2年 全国犬猫飼育実態調査」によれば、2020年に新規に飼い主となった人は、前年度比で犬14%増(46万2000頭)、猫16%増(48万3000頭)と増加した。しかし、ペット需要の高まりは「育児放棄」という新たな問題を生んでいる。
飼い主になるのに覚悟すべき負担や、ペットとの正しい付き合い方とは? 延べ1万1000頭以上のペットの困りごと相談やヒーリングを実施してきたアニマルコミュニケーター大河内りこ氏が説く、「飼い主として知るべき大事なこと」。

コロナがペットの需要を高める

コロナ禍で在宅時間が増えたことに伴い、新たな家族としてペットを迎える人が急増している。人気小型犬種ブリーダーによると、オークションでの仔犬取引価格は、前年比2倍高になっており、体に不具合の見られる個体であっても、顔の気立てが良ければ高値で取引をされることもあるという。

インターネット上に表示されている一般販売価格は、30万円から。中には150万円もの高値が付くケースもある。40万円以下であれば、すぐに買い手が付くような状況。特にメスの需要は高いのだそうだ。

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このように生体価格が高値で推移していても、ペットを迎える確固たる理由が、飼い主側にはある。

まずは、ペットに癒しと安らぎを求めるというもの。ペットと触れ合うことにより人の脳内には、「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌されるため、癒しや安らぎの効果は十分に期待される。

また、オンラインシフトにより人と接する時間が急に短くなり、他者とのつながりをペットに求めることで、孤独感を埋める役目をペットが担っているとも考えられる。犬の散歩や運動のためであれば、飼い主が外出する大義も整う。このようにステイホームでペットが求められるのも、人間側の理には適っている。

コロナ禍で、お払い箱になるペットたち

しかし、ペットブームが起きると必ず懸念されるのが、飼育放棄の問題だ。

ペットを迎えてみたものの、予想以上の手間のかかりようにお手上げになり、1歳にも満たないペットの赤ちゃんが里子に出される、という極端なケースも出始めた。中には、迎えてからわずか2日~1週間で手放す例もあるのだとか。

東京都内の保護団体での犬猫の引き取り数は、コロナ前の約5倍に上る。緊急事態宣言発令直後にペットショップで購入されたと予想される仔犬仔猫が、その半年後の昨年秋頃から持ち込まれるようになった。

動物医療の現場でも、このような声を聞く。

「保護団体が連れてくる犬猫が低年齢化していて、これまでは老犬老猫の病気の治療目的が多かったのに、今、避妊去勢目的が増えているのは、もしかしたらコロナ禍のペットブームの影響かもしれない」と懸念するのは動物看護士。

「安易に迎える人が、安易に棄てる」「コロナだろうが、なかろうが、棄てる人は棄てる」と話すのは、15年のキャリアを持つ保護活動家。

また別の猫保護活動家は、「法規制が厳しくなり、行政が安易な引き取りを拒否する。愛護センター窓口では、考え直すよう説得される。センターへ持ち込みづらくなったら、屋外へ放つ飼い主がいる。猫であれば逃げてしまったように装えばそれまでのこと」と打ち明ける。

ちなみに、動物愛護管理法により、愛護動物を遺棄した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられる。

動物病院も無責任な飼い主の遺棄先ターゲットになるようだ。心臓病で死期の近い猫を、旅行を理由に預けたまま引き取りに来ず、看護師が引き取り最期を看取ったという。

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ペットを迎えるにあたり、飼育用品購入費や医療費等の経済的負担は増える(犬に関する月間支出額平均は1万2020円で、サプリメントを購入する飼い主も増えている)。

住宅環境(東京都内、築5年以内ペット飼育可能賃貸物件は全体の4.9%で、引っ越しシーズンには置き去りも増加)の問題に加え、飼育者の体力(関東地方にある動物愛護団体への持ち込み理由は、飼育者の傷病によるものが、犬で43%第1位、猫で24%第2位)と精神力の消耗など、予想以上の負担を強いられることも飼育放棄の要因となっている。

人の感情が、ペットへ「感染」する

癒しのはずのペットが、飼い主のストレスの源となるのは本末転倒であろう。ペットを飼育し続けるために、人とペットの心理的な結びつきを知っておくと、困りごとが起きた時の解決にも役立つ。

ペット愛好家であれば周知の事実ではあるが、動物にも豊かな感情がある。それは犬猫など、ペットとして一般的な哺乳動物に限らない。手乗りの小鳥が飼い主と戯れるシーンは誰もが見たことがあるだろうし、飼い主の後をついて歩く亀もいる。

また、居住空間に動物がいることへの嫌悪感が強かった夫が、妻のたっての希望で仕方なく室内飼いを始めたペットに、結局、夫自身が魅了されてしまったというケースは珍しくない。

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生活を共にすれば相手に対する情が湧き、時間が長くなれば、その情が深くなるのは、なにも人に対してだけではない。人間側が心を開き、彼らに接すれば、彼らも警戒心を解き、深い愛情を示す。そして、喜怒哀楽の感情を豊かに表現するようになる。今にも、人の言葉をしゃべり始めるのではないかと、思わず錯覚しそうになった飼い主も多いのではないだろうか。

麻布大等の共同研究によると、「人の感情の変化に犬が共感する」という結果が報告されている。飼い主の緊張時とリラックス時、それぞれの心拍数が、犬の心拍数と連動し、飼育年数が長いほど、それが顕著になるというものだ。

イライラが強い人がいる職場で、共に働く人の神経は高ぶり緊張しがちだが、たまたま乗り合わせた電車に、ご機嫌な赤ちゃんが居れば、その場が和み、同乗者の気持ちも安らぐ。

こういった「情動感染」は、人と人の関係においては、誰もが体験したことがあるはずである。その情動感染が、犬と飼い主の関係おいても起きることが、研究により証明されたことになる。

飼い主がイライラすれば、犬は緊張し、その反応として吠えや咬みつきなどの問題行動へとつながることが容易に理解できる。飼い主の気持ちが和めば、犬の心も和むということだ。

飼い主の心理状態が、ペットの行動と体調に影響する

ペットの飼育放棄の大きな理由につながる問題行動。それが人間に起因しているとしたら驚くだろうか。

彼らは理由なく問題を起こしたりはしない。幼い子どもが言葉でなく態度で示すことがあるように、彼らはヒト語の代わりにその動物特有の態度で示して、飼い主に気持ちを訴えている。

「咬みつき犬」のレッテルを貼られた犬の気持ちを、犬の立場になって考えたことはあるだろうか? 犬も理解されない悲しみを抱えるのだ。飼い主がそれに気づき、犬を信頼した途端、咬みつきが収まったどころか、他のどの同居犬よりも深い信頼関係が築かれ、すばらしい相棒へと変容した例もある。

情動感染が起こるのは、犬だけに限ったことではないし、改善が見られるのは行動だけでなく体調に変化が表れることも。飼い主のイライラが、カウンセリングやセラピーによって解消されると、ペットの病状や体調に良い兆しが現れることがよくある。それまで毎日インスリン注射をしていた老齢の猫の糖尿病が、獣医師が完治と認めるような驚くべき結果を出した事例もあるほどだ。

ペットの行動や体調の問題の根源が、飼い主の心理面にあるケースも多いことを知っておいていただきたい。

飼い主とペットの情動感染は、心拍数が変化するという単純なものだけではなく、互いの心の奥深くまで共鳴し合い、それがペットの行動や体調にも現れるというのが、8年以上、延べ1万1000頭以上のペットの困りごと相談やヒーリングを実施してきた著者の現場での感覚である。人が、ペットにとっては環境の一部であることを忘れてはならない。

ペットを棄てた記憶は人を一生悩ませる

行動や体調に問題があり、あらゆる手段を用いて手を尽くしても解決に至らない場合、飼い主自身の心のノイズに目を向けることをお勧めする。

それでも手放す選択が頭を過った時、もう一度考えてもらいたい。ペットは生涯、飼い主を覚えている。新しい飼い主の下で幸せに暮らせていても、前の飼い主を覚えている。

動物でさえ、それほどの記憶があるのだ。人の記憶から手放したペットの姿が、すっかり立ち去ることはない。長年、罪悪感を抱き続けるケースをいくつも見てきた。

幼い頃、何らかの事情により、親がこっそりペットを処分した事実を知った人が、大人になってもそのペットの末を想い、30年以上経てからその罪悪感に対するセラピーを所望することもある。自ら、手を下したわけでなくても、深い悲しみが続くのである。

ペット中毒にも要注意

一方で、「ペットと一緒に、おうち時間」中毒になってしまっていたなら、それも要注意である。今後、在宅から通常勤務へと戻った時、そして、いずれ必ず訪れる別れの時に、飼い主の心理的負担が大きくなるからだ。

飼い主の心が重くなれば、言うまでもなく、ペットもまた然り。1歳未満の仔犬の飼育放棄理由に、留守番が上手に出来ないというものがある。しかし実際は「留守番が出来ない犬」ではなく、「留守番が出来るように育てられなかった」が、正しい。

人にとっては日常生活の中の何気ない習慣も、ペットにとっては大きな出来事となる。これまで飼い主とベッタリと濃密な時間を過ごせていたペットにとって、ある日を境に予告なく半日の留守番を申し渡されるのは、理解が出来ないのである。

しっかりとケジメを付けて生活し、互いの関係において、心の境界線をしっかりと持つことが重要となる。

ペットと素晴らしい人生を歩むために

コロナ禍に初めてペットを迎えた人もいるだろう。それぞれの動物の生態に適した飼育方法を学ぶと同時に、飼い主とペットの間に起きる得る心の力学についても知っておいて損はない。

癒しや安らぎを求めるばかりでなく、ペットを通じて相手への配慮や心遣いなどを学ぶ機会となるに違いない。

ペットの行動や体調の問題が、飼い主の人間性向上への課題として捉えることができたなら、飼育放棄という選択肢が、すっかり頭の中から消えてなくなるだろう。そして、ペットは、人生をより豊かにしてくれる相棒と見え始める。

ペットを棄てるということは、自身の人生の成長のチャンスをも棄てるということにもつながる。

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