
リュウタ / PIXTA
給与が上がらない一方、物価高や社会保険料の負担で国民が苦しむ中、特別職の給与を引き上げる改正給与法が、11月17日の参議院本会議で自民、公明、国民民主党などの賛成多数で可決・成立した。
これは一般職の公務員の給与引き上げに合わせて、特別職の国家公務員の給与も引き上げるもので、総理大臣は年46万円、閣僚は年32万円の給与を増額することが盛り込まれている。
野党からは、民間の賃上げが物価高に追いつかないのに不適切だとの声が相次いだ。政府はこうした批判を受けて、総理と政務三役の増額分を返納することを表明している。
ところで国会議員の収入の内訳がどのようになっているのか、ご存じだろうか。
●国会議員の収入は給与約2,200万円+活動費約1,980万円+α!
国会議員の収入はおおよそ以下のような内訳になる。
【歳費=給与 (議長などの役職についていない一般の国会議員)】
・基本給…年1,552万8000円(月額129万4000円)
・期末手当(賞与)…年約620万円
年額約2,173万円
【活動費】
・調査研究広報滞在費…年1,200万円(月額100万円)
・立法事務費…年780万円(月額65万円)
年額約1,980万円
【その他】
・政党からの支給…国会議員により異なる
・パーティーなどの寄付…国会議員により異なる
これらを合計すると、国会議員は年収4,000万円を超えることがわかるが、税金はどうなっているのだろうか。福留 聡税理士に聞いた。
●国会議員のみの収入で課税対象となるのは「歳費」のみ
「上記に述べた国会議員の収入のうち、『歳費』は国家公務員としての給与であるため、通常の給与所得と同様に所得税が課税されます。
活動費のうち、『調査研究広報滞在費』は、調査や研究等にかかる通信費や交通費に充てるために国から支給されます。また『立法事務費』は、立法に関する調査研究費として国から支給されます。『調査研究広報滞在費』と『立法事務費』はいずれも非課税です。
また、政党からの支給や、パーティーなどの寄付においては、いずれも非課税となっています。」
ーー給与に該当する歳費は年2,000万円以上ですが、確定申告をする必要はあるのでしょうか。そのほか、どのようなときに確定申告が必要となりますか?
「国会議員の給与収入は前述のとおり2,000万円を超えるため、給与等の金額が2,000万円を超える者と同様に、年末調整を行わず確定申告をすることになります。
そのほか、国会議員が政治団体等に寄付(よくあるのが自身の政党へ寄付)し、確定申告により寄附金控除を申告し、所得税還付を受けるケースがあります。」
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国会議員の年収は非課税の手当を含めて4,000万円を超える。給与所得者の平均給与は458万円で、非課税となる手当もないことから、金銭的に優遇されていることがわかる。
ただし、落選すれば無職となるリスクもあるほか、選挙になると選挙費用として数千万円かかるというケースもあるようだ。
国会議員の収入が高いか安いかを一概にいうことは難しいが、国民の信頼に応えられるよう、収入に見合った職務をまっとうしてもらいたい。
【取材協力税理士】
福留 聡 (日本・米国ワシントン州)公認会計士、(日本・米国)税理士、公認不正検査士、行政書士
監査法人で上場企業の監査業務等を経験後、IPO支援、決算支援、IFRS導入支援、日米の法人の税務顧問等を行っている。本、雑誌、DVD等で約50の出版をしており、代表的な著作として『7つのステップでわかる税効果会計実務入門』がある。
事務所名 : 福留聡税理士事務所、福留聡国際会計アドバイザリー株式会社、福留聡クラウド会計給与合同会社
事務所URL:http://www.cpasatoshifukudome.biz/