「容姿なんて、魂がとりあえず入ってる箱です」鳥居みゆきが語る“女芸人”というレッテルの理不尽

「容姿なんて、魂がとりあえず入ってる箱です」鳥居みゆきが語る“女芸人”というレッテルの理不尽

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/02/24

「笑いって関係性だ」と気づき“話し方講座”へ…異端芸人・鳥居みゆきがお笑いに目覚めた原点から続く

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自分が思っていることを相手に伝えるにはどうすればいいのか……話し方講座、劇団を経て、その答えを「芸人」という職業に求めた鳥居みゆき。しかし彼女がどんなに自由な表現を追い続けても「女芸人」というカテゴライズが鳥居を縛った。

「時代錯誤もいいとこですよ」この特集内で、ここまで怒りをストレートに語った人もいない。鳥居みゆきは「女芸人」の何に苛立つのか。(全3回の2回目/#1を読む)

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鳥居みゆきさん

◆ ◆ ◆

労働って、人を狂わせない唯一のものですからね

――鳥居さんはすごくサービス精神が旺盛なんじゃないでしょうか。

鳥居 そんなことないですよ。

――相手が求めていることの逆をやりたくなっちゃうって、相手の求めていることがわかるということだから、人の感情に追いかけられてしまいますよね。

鳥居 そうなんだろうな。

――テレビは良くも悪くも「求められたことをする」場所だと思うのですが、今は少しそこから自由になれたのでしょうか。

鳥居 最近YouTube始めたんですけど、今のフラットな私を、フラットだけど見る人が見たらちょっと変って思うかもしれない、そういう感じでやるのがあってもいいかなと思って。

結局単独ライブがコロナの影響で2回延期になって、寂しくなっちゃったんですよ。「YouTubeやるのはすごく大変だよ」と言われたから、大変ならやろうって思ったのもある。大変なの好きなんですよ。

――追い込まれるのが好きなんですか?

鳥居 細かい作業が好きなんです。内職向き。でも昔ハンダづけの内職で何になるのかわからない基盤にハンダづけして1000個作ったら、1000個のうち10個もちゃんとしたのできなかったから、下手は下手なんだな。

――決められたことをやるのが嫌なのか。

鳥居 嫌なんだと思います。肉に棒を刺すバイトをしてた時は、みんな1人1つ肉を刺して次に流していくんですけど。私自分のところで2個刺して、次の人の手間を減らしてあげようと思ったんです。でもその人、やりがいがなくなっちゃったのかすぐやめて。人材が足りなくなって、結局自分が大変になりました。

――よかれと思ってやったことが、やりがいを奪ってしまった……。

鳥居 たぶん「私何してるんだろう」って、自問自答する時間ができてしまったんだと思う。労働って大事だなと思いますよ、ほんとに。労働って人を狂わせない唯一のものですからね、やっぱりね。

――人間暇だと、ちょっとおかしくなります。余計なことを考える。

鳥居 だから私もうめいっぱい何かしていたいんです。常に何かしてたい。

人間大好きだけど、接し方がわからないんです

――単独ライブはコロナで中止になってしまいましたが、配信という方法は考えなかったですか。

鳥居 はい。だって配信だと、お客さんの声が聞こえないですよね。聞こえなかったら間の作り方がわからない。単独はお客さんの間に合わせてテンポを毎日変えているので。このテンポで言ったら昨日はこんな感じの反応だったからちょっとずらして言おうとか。

そうやってお客さんと一緒に作っていく作業ができないと、私ひとりだけ、コンビの片割れだけ『R-1』出ちゃったみたいな不安な感じです。単独ライブはお客さんの声と間と空気があって成立するから。私、グッズやそれを売ってるロビーも含めて単独だとしてたいんですよ。

――鳥居さん、一見人間嫌いのように見えて、実は人との交流をすごく大切にされているんですね。

鳥居 私人間大好きなんですよ。人間大好きだけど、接し方がわからないんです。わからないというか、合わせるのがめんどくさくなっちゃう時があって。このコロナ禍は「人と会えない」という点では、ラッキーですね。

――飲み会も堂々と「今はちょっとやめとこう」って言える理由ができて、楽なことはありますよね。角が立たない。

鳥居 そう。家でずーっと膝をかかえて1日過ごしてると罪悪感が生まれるんですけど、この時期それ生まれないじゃないですか。

――逆にいいことをしたと。

鳥居 そうなんです。すごく正当化してくれる。私をみじめにさせない、今の期間をフル活用していこうみたいな感じ(笑)。でも今こうして人と会えたのがすごくうれしいなとも思う。やっぱり人を欲してるんですね。

――私もです。リモート取材も多いので。

鳥居 あれ嫌だね~。なんだかよくわからないけど銀河の背景にしてるやつとかいるから。

――(笑)。

鳥居 銀河どういうこと?って思うとすごく気になっちゃう。すごいツッコミどころ多いじゃないですか。

あれもこだわりなんでしょうね。エゴですよ、こだわりの押し付けですよ。人がどう思うかまで考えが及んでない、鈍感タイプ。車とか駐車場に入れる時、絶対ストップの石のところまでいくタイプですね。掃除機かける時も、壁までガンっていくタイプ。

――鈍感な人は嫌ですか。

鳥居 嫌ですね。街とかでさ「じゃあねー」とか言いながら友だちと別れたその笑顔を引きずったままこっち向いてくる人いるじゃないですか。私そういう時「は?」って言ってやるんです。すっごい腹立つあれ。なに笑いの要因引きずってるんだよ、もう切り替えていけって。あっそうだ、女芸人に関して何もしゃべってないんだけど。

――以前のインタビューで「女芸人ってくくられるのが嫌だ」とおっしゃってましたよね。

鳥居 あぁ嫌いなんですよ、私。時代錯誤もいいとこですよ。多様化の時代にまだ女芸人でくくるかと思いますよね。紅白もそうじゃないですか。まだ紅白で分けてるの、まだ対決してんのっていう。そこの勝敗別にそこまで気になってませんけど。

――たしかに毎年どっちが勝ったかわからない。

鳥居 勝った方がなんかもらえてるかすらあやふやじゃないですか。看護婦さんも看護師さんになる時代に、女芸人はまだ女芸人かい、みたいな。マイノリティーだって言いたいんでしょうね。

芸事は男の職業だと思ってる人がいまだにいますよ、先輩にも

――そうか。お前たちはマイノリティーなんだぞって言いたい。

鳥居 男の芸人の中にもそういう、頭の固いやつがまだいるんですけど。そういう人ほんとに腹立ちますよね。芸事は男の職業だと思ってる人がいまだにいますよ、先輩にも。

――鳥居さんも何か言われたりしましたか。

鳥居 私ね、なんにも言われない。怒られたことゼロなんですよ。鈍感だからかな。女芸人とも言われたことないな、なんでだろう。

あとネタのジャンルが似通ってるとライバル扱いされるじゃないですか。私、なんでかわからないけど「鳥居さんは泰葉さんと仲いいの?」とか「ライバル?」とか言われたことがあって。なんで泰葉さん? 泰葉さん、芸人なのでしょうか。

――泰葉さん、生き方は芸人さんぽいけど……。

鳥居 「女芸人は弱者」みたいに思われているのか知らないけど、「恥ずかしい感じになっちゃうから笑ってあげなきゃ」が働いていると思うんですよ。女芸人がネタやる時ね。それって私はいらねぇなと思って。

面白かったら笑って、面白くなかったら笑わなきゃいいだけなのに。忖度というか、「女芸人」という見方がよろしくないなと思う。

――テレビが求めてくる女芸人像みたいなのも、ありますよね。やたら恋愛トークさせたがったり。

鳥居 ある、ある、ある。モテないとかね。結局は、かわいい人や女優がやってる変顔と一緒で歪なものを見せたいのかな。ちょっと変ですよね、というか。

昔、松竹さんのライブに出させていただいた時にTKOさんがいて。ライブで私がボケて木本さんが頭叩いてツッコんだ時に、客席が「えー」ってなっちゃったんですよ。女が男に強く突っ込まれてかわいそうって思われたのか。それすごいこっちが申し訳なくなっちゃうから、木本さんに。

でもああいう時どんなリアクションをしても無理なんですよね。女を叩いてるという事実なので。だからもう難しいなと思う。

容姿なんて、魂がとりあえず入ってる箱なのに

――お客さんが引いてしまう。

鳥居 だから一切そういうことを感じさせない、性別を感じさせないことをやっていきたいなと私は思うけども、でもそうなると女としての利点を生かすような、妊婦のネタとかできないじゃんって思っちゃう。

――たしかに。

鳥居 「意外とかわいいんだ」みたいなのも、それいる?って思いますよね。インスタにあげた写真のそういうコメントだけ抜き出してネット記事作られたりするじゃないですか。インスタの文章はちょっとボケてたりするのに、そこ載せないでコメントの「かわいい」を載せるんかい、みたいな。

――女性芸人なのにかわいいとか、それこそ鳥居さんがずっと言われてきたことかもしれない。

鳥居 ありますよ、それは。私、そんなのどうでもいいのに。容姿なんて魂がとりあえず入ってる箱としか考えてない。別に番号で呼ばれてもいいし。のっぺらぼうじゃないだけだよって感じです。

ドラマの『天国と地獄』も女と男の入れ替わりじゃないですか。あれも視聴者は、どんだけ男っぽくできるか、どれだけ女っぽくできるかのふり幅でしかみてないですよね。そこのふり幅があればあるほど、演技がうまいって評価するんですよ。でもそこじゃないじゃん、みるところって。そこ以外も元々すごいんだよあの2人、って。

――結局その人が持っている「男っぽさ」「女っぽさ」に引っ張られている。

鳥居 だからね、ネタを見るにあたっては「女っぽさ」は排除していった方がいいなと思って。前に事務所でネタ見せがあって、私は見る側だったんだけど、その時に参加してた女芸人のスカートが短くて、スカートの中見えるか見えないかみたいな感じでネタに集中できなかったんですよ。

だから「女のネタだけどこういう視覚的な女の部分は排除していってください」と言ったんです。そしたら「鳥居さん怖い」みたいなのが広まっちゃって、後輩の中で(笑)。

――鳥居さんが言いたかったのは大事なネタが目立たなくなっちゃうということですよね。

鳥居 そう。だけど彼女たちにしてみたら「女芸人だし、女を武器にする時代じゃないですか」みたいなことなんです。だけどそれは違うでしょうと。女としてはもう文字で表しなさいよって感じ。

「女枠」が「フリップ」「一言ネタ」と並列になっている

――女は文字で表現する。

鳥居 そう、そこは脚本で表せばいいだけであって。見た目だったらスパッツ穿いてよ、なんならズボンでいいじゃんっていう。そういう勘違いしてるやつがイラつくんですよ。私最近の『THE W』とかもあんまり興味なくて。

――なぜ興味を持てないのでしょうか。

鳥居 前の『R-1』もそうですけど、なんか枠としてしか考えられてなかった気がするんですよ。男芸人の中のフリップ、漫談、コントとか一言ネタとかのジャンルの中に「女枠」という感じだったと思うんです。そういうの腹立つんですよ。女をひとつの枠として見てんじゃねぇよっていう。

――「フリップ」と「女」が並列になっている、なるほど。

鳥居 私のこと女としてみないでって思ったのが、男芸人の彼女ですね。芸人仲間でどっか行こうという時に男芸人の彼女が「今誰がいるの」「女芸人いるの?」ってすごいうるさい。「いやでも鳥居だよ」って言ったら「あっなら平気か」ってなるのもよくわからんけども。

――「女芸人は男芸人が好き」っていう思い込みをやめてよっていうのは、よく女芸人さんが言ってますよね。

鳥居 好きじゃねぇよっていう。仕事上のライバルとしてしか思ってないから。男だろうと女だろうと。ていうか人は、背景にすぎない。背景というか、書割みたいな。あまりなんとも思わないですね。

私昔一言ネタをやった時期があって。その時 渋谷La.mama のネタ見せで、ネタを見てくれた作家さんに「だいたひかるの二番煎じじゃん」って言われたことがあって。だいたひかるさんとかアンラッキー後藤さんとかそこらへんの時代だったので。

それで、あぁもうめんどくさって思って、そこからコントをやりだした。もう人とかぶることはやめようと思いましたね。めんどくせぇから。違うと言ってもその違いをあんまりわかってくれないじゃないですか。でも自分自身がその時期キャベツとレタスの違いがわからなかったので、傍から見たら私もこうなんだって。

【続きを読む】姉宛の年賀状を庭に埋めていた…鳥居みゆきが語る「コンプレックスとの折り合いのつけ方」

写真=榎本麻美/文藝春秋

姉宛の年賀状を庭に埋めていた…鳥居みゆきが語る「コンプレックスとの折り合いのつけ方」へ続く

(西澤 千央)

西澤 千央

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