「愛は祝福であり、呪いでもある」リサ・ジョイ監督が語る映画『レミニセンス』

「愛は祝福であり、呪いでもある」リサ・ジョイ監督が語る映画『レミニセンス』

  • ぴあニュース
  • 更新日:2021/09/16

ヒュー・ジャックマンが主演を務める映画『レミニセンス』が17日(金)から公開になる。本作は、人間の“記憶”に潜入することができる男が巨大な陰謀に立ち向かっていく姿を壮大なスケールで描いたSFサスペンスだが、その根底には人々を魅了し続けてきた古典的な犯罪ドラマや、ひと筋縄ではいかない愛のドラマが据えられている。脚本と監督を務めたリサ・ジョイはこう語る。「愛というもの自体が祝福でもあり、呪いでもあると言って良いと思う」

本作の舞台は、海面が上昇し、都市のいくつかの部分が海に沈んでしまっている未来。この街では人間の“記憶”を記録し、再現/体験する機械が流通しており、ニック(ヒュー・ジャックマン)は相棒のワッツ(タンディ・ニュートン)と共にこのマシンで日銭を稼いでる。そんなある日、ニックの前に謎の女性メイ(レベッカ・ファーガソン)が現れる。美しいメイに一瞬で魅了されたニックは彼女に近づき、やがてふたりは結ばれるが、ある日を境に彼女は忽然と姿を消し、その後、ニックに“ある事件の調査”が依頼される。

ギャングの抗争が絡む事件の謎を追って、ニックは“記憶”に潜入する中で、あのメイが事件のカギを握る人物として浮かび上がってくる。彼女は一体、何者なのか?彼女はいまどこにいるのか?ニックが捜査を続ける中で、想像もしていなかった真実と巨大な陰謀が浮かび上がってくる。

本作の脚本と監督を手がけたリサ・ジョイは、ドラマ『ウエストワールド』で注目を集めた気鋭のフィルムメイカーだ。彼女は本作を創作する上で、SF的な設定を駆使しつつも、フィルム・ノワール(往年の犯罪映画)のテイストを本作に盛り込んだ。危険に満ちた都市、退廃的なムード、幻影的でスタイリッシュな映像、ファム・ファタルと呼ばれる時に主人公を破滅させてしまう運命の女、そして善悪では割り切れない物語……ジョイ監督はノワールの要素を“新たな方法”で描きたいと考えたようだ。

「いくらかは『黒い罠』(1958年にオーソン・ウェルズ監督が手がけた作品)を参考にしています。そしてノワールではないかもしれませんが、『めまい』(1958年にアルフレッド・ヒッチコック監督によって発表された)から大きな影響を受けています。私はノワール、SF、アクションも含めたこれらのジャンルをまた違った形で再訪してみたかったのです。

ノワールで男性が女性にダマされるのは多くの場合、その女性が“良くない女性”だから、あるいは愛する女性が”良い人間”なので間違ったことをするはずがないからだったりする。でも私は、女性はそれより複雑だし“ファム・ファタル”だとか“完璧な人”で終わるようなシンプルなものではないということを、もう少し自然に見せられるようなものを作りたかったのです。主人公のニックも同じで、ノワールで彼のようなキャラクターはすごくストイックで感情を表に出さないことが多いのですが、私は彼のようなヒーローがプライベートな瞬間を見せたり、ミスしたり、間違えたりするところを見てみたかった。

ノワールはダークという意味(noirはフランス語で“黒”を意味する)だし、もちろんとてもダークなんだけど、その闇を光に転化してみたかった。だから昼は夜で、夜は昼。ノワールにおけるキャラクターの隅々にまで光を当てることに何かあると思ったから」

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リサ・ジョイ監督

そこでジョイ監督は、登場人物たちを"悪女”や"探偵”などの役割で描くのではなく、キャラクターそれぞれの内面を掘り下げる形で描いていった。さらにビジュアル面では“水”が重要な役割を果たしている。街の半分は水没しており、人々は記憶に潜入する際は水の入ったポッドに横たわる。水はすべてを浸し、包み込む。

「水にはとてもロマンティックなイメージを持っているんです。水は自然であり、強く、そして流れるものである。柔らかいけど危険にもなり得るし、すべてを飲み込んでしまうことができる。また、望む形に形を変えることができる。その複雑性を美しいとも、怖いとも思うのです。

私たちは思い出を忘れまいと必死になるけど、そこにも何かがある気がします。誰かの思い出に必死ですがるし、脳裏に描いた通りの人物のまま思い出に留めようとする。でも時間というのは水のようなもの。その流れを止めることはできない。記憶からディテールが洗い流されるのを止めることはできない。かつて愛した人やモノを奪っていくことを止めることすら、私たちにはできない。自然の力だし、止められない。悲しみがあればそれを洗い流してくれるけど、大切な瞬間だって洗い流してしまう。そこには美しさもあると思う」

私たちは誰かを愛し、幸福な時間を過ごす。でも、そんな想いや記憶もいつかは水のように流れて消えてしまう。本作は水や記憶を用いながら、愛や人生のドラマを描き出していく。

「この物語はひとりの探偵の旅でもあるけど、心の旅でもあるの。愛というもの自体が祝福でもあり、呪いでもあると言って良いと思う。必ずラブストーリーには悲しい終わりが待っている。私たちは人間なのでいつかは死んでしまうから。ハッピーな関係を築けたとしても、誰かが亡くなってしまって悲しくなってしまう。だからと言って誰かを愛さないというわけではない。そこには価値があるの。人と繋がったり、愛することは人生にすごく大きな意味があることだし。人生というものには痛みもあるけど、同時に美しくもあって、愛というのもまたひとつの奇跡だと思う」

主人公のニックは事件の謎を追い、そこに潜む陰謀を追いながら、姿を消したメイとの記憶の中を彷徨い、それらが水が流れていくように消え去ってしまうのを止めようともがく。時間は過ぎていく。人はいつか死んでしまう。水は流れていく。それでも主人公は追うことをやめない。それは愚かなことなのか?

本作は、記憶の中に潜む謎を解くサスペンスであり、永遠に解けない、言葉では説明のつかない感情を描いたノワール劇でもある。すべての謎が解けた時、それでも解けない謎が観客の中に深く残ることになるだろう。

『レミニセンス』

9月17日(金)公開

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