弱いことは愛おしい 障害者「だからこそ」探し求めて気づいた価値

弱いことは愛おしい 障害者「だからこそ」探し求めて気づいた価値

  • 朝日新聞デジタル
  • 更新日:2021/11/25
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"ピアカウンセラーのオンライン講座を始めたころの佐藤仙務さん=本人提供"

私は19歳で会社を立ち上げた。もちろん、ただ若くして会社を立ち上げたという話ならよくあると思うが、先天性の重度身体障害で寝たきりという状況の中で起業したことは、私にとって一世一代の大勝負だったのかもしれない。

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会社を立ち上げてから大変なことはたくさんあったが、自分の大変さとは別にもう一つ、私が悩んでいたのは「障害者の仕事づくり」についてだ。

私が立ち上げた「仙拓」という会社は、ウェブサイトや名刺やパンフレットをデザインする会社だ。だから、ITやデザインの知識のある障害者には仕事を提供することはできる。でも、それ以外の障害者に仕事のチャンスを提供することがなかなか出来ずにいた。

どのようにしたら、障害を持っていても、持っている能力を最大限に発揮して、それを仕事に結びつけることができるのか。「障害者でもできる仕事」だけではなく、「障害者だからこそできる仕事」がないだろうかと、四六時中考えていた。

■ピアカウンセリングを仕事に

会社設立から数年がたったころ、私はインターネットでとある人物を見つけた。今から7、8年前のことだ。その人は、自分で立ち上げた東京の会社で、リモートのカウンセリングサービスを提供していた。

今でこそコロナ禍になり、リモートやオンラインという言葉が当たり前になってきたが、当時はリモートワークなんてものはまだまだ世の中に浸透していなかった。ましてや、リモートでサービスを提供しようとする会社も皆無に等しかった。

私はその会社の代表に連絡を取り、リモートでのカウンセリングサービスに大変興味があるという話をした。すると、その代表から「ピアカウンセリング」というものがあると教えられた。

ピアカウンセリングとは簡単に言うと、障害者が同じ障害者にカウンセリングを行うというものだ。「ピア」には同じ立場の者同士という意味がある。

その話を聞いて、私は直感的にピンときた。その理由は自分自身もこれまでの人生、自分と同じような障害を持った仲間たちに支えられてきたからだ。

重度の身体障害者という決して恵まれていない環境で生まれてきた中でも、腐らずにくじけずに前を向いて生きてこられたのは、仲間たちが支えてくれたからだ。特に、一緒に起業した幼なじみも私と同病だった。会社を立ち上げた当時、彼が悩みや迷いを真摯(しんし)に聞いてくれたからこそ、私は前に進むことができたと思っている。

だから、ピアカウンセリングの存在を聞いた瞬間、「これは面白い」と考えた。

■立ちはだかった壁、それならば

だが、実際にピアカウンセリングをビジネスとして成り立たせるとなると、そこには大きな課題もあった。

それは、世の中で行われる多くのピアカウンセリングは、基本的にボランティアとして行われている点だ。

カウンセリングというデリケートなサービスの特性もある。それに、障害者の多くはお金を受け取ることに抵抗を示す傾向がある。私の知り合いの障害者にも「いつも私はみんなのお世話になりっぱなしだから、お金なんて受け取れないよ」という人もいる。

でも、私は障害のあるなしに関わらず、人が人の役に立つことをして、それを喜んでもらうことができたのなら、自信を持ってお金を受け取るべきだと考えている。

ピアカウンセリングは、障害を持っている方やその親御さんであれば、比較的に取り組んでもらいやすいと思った。だが一方で、仕事としてカウンセリングを行う以上、クオリティーをどう上げるのか、が悩みどころであった。

まずは、しっかりと技術を磨き、お金を受け取れるスキルを身に付けてもらう必要がある。ところが、スキルを磨く学校は数多くあるのに、車椅子の障害者たちが通える適当な学校が見つからなかった。

それなら、障害者がカウンセリングのスキルを磨けるリモートの講座を自分で作ってしまおうと思った。リモートでカウンセリングサービスを提供している代表を誘い、ピアカウンセリングを身に付けて、民間資格を取得するための講座を構築した。

講座は2014年にスタートして、今も毎年続けている。講座を修了した生徒の中には、大手企業に勤める障害者の方に、カウンセリングサービスを提供した方もいる。最近は、ピアカウンセリングだけではなく、障害者が高齢者の方の認知症予防としてリモートでお話をするサービスも行っている。もちろん、これはコロナ禍以前から始めていた。

まだまだ契約をしてくださるお客様は多くはないが、それでも、このサービスを導入してくれている老人施設の職員の方々からは「介護業界が人材不足で大変困っている中、職員の代わりに利用者様とゆっくり話をしてもらえるのが助かる」や、ときに80歳を超えた利用者様からも「これが今、私にとって生きがいだ」と言ってもらえることが何よりうれしい。

私は自分自身が会社を立ち上げるまで障害というものに対し、どこかネガティブな印象を持っていた。マイナスなところばかりに目を向けている傾向にあった。

だが、実際に仕事を始めてみて、私は気付かされた。「障害者がどうしたら活躍できるか」と真剣に考えた結果、「人の本当の価値は弱点の中に眠っているもの」だと知った。

今、私は自分の「弱さ」が愛おしい。弱さこそ大切にしていきたい。今はそう思っている。(アピタル・佐藤仙務)

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