アレルギー拠点病院の設置に地域差 宮崎や大分など11道県でゼロ

アレルギー拠点病院の設置に地域差 宮崎や大分など11道県でゼロ

  • 西日本新聞
  • 更新日:2020/10/16
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生活環境の変化によって食物アレルギーや鼻炎などのアレルギー疾患患者が増える中、医療体制の地域間格差が広がっている。国は2015年施行のアレルギー疾患対策基本法に基づき各都道府県に拠点病院の指定を求めているが、宮崎、大分両県を含む11道県が未指定のままだ。背景には専門医の都市部への偏在がある。

アレルギー疾患を巡っては12年、食物アレルギーのある東京都調布市の小学5年の女児が給食を食べてショック死する事故が発生。文部科学省の13年の全国実態調査によると、食物アレルギーのある公立小中高校生は約45万4千人で全体の4・5%。04年から4割近く増えた。基本法施行後に策定された国の基本指針は「国民の2人に1人が何らかのアレルギー疾患を有している」と指摘している。

基本法に基づく拠点病院はアレルギー疾患を扱う内科、小児科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科の五つの診療科が設置され、重症患者の治療にも対応するほか、専門医の育成や研修、情報提供などの役割を担う。国は21年度までに各都道府県に原則1、2カ所の指定を求め、全国ですでに64病院が指定されている。

アレルギー専門医は日本アレルギー学会が認定。10月2日現在、全国で計4142人。九州では福岡県が142人で最も多く、最も少ない宮崎県は13人にとどまる。

宮崎県によると、県内で五つの診療科がある病院にはアレルギー専門医がおらず、大半は開業医。県は21年度中の拠点病院指定を目指して昨年度から県内の医療機関と協議しているが、調整は難航しているという。同県健康増進課は「専門医がいない総合病院を拠点病院に指定した上で、開業している専門医と連携する形も想定している」と話す。大分県も「本年度中の指定を目指し協議中」という。

基本法制定に携わった福岡病院(福岡市)の西間三馨名誉院長は「住む地域によって標準的な治療すら受けられずに症状が悪化する患者もいる。福岡などから宮崎に定期的に専門医を派遣するなどブロック単位で診療体制を整えるなどの対策が必要だ」と話している。

(本田彩子)

【アレルギー疾患対策基本法】気管支ぜんそく▽アトピー性皮膚炎▽アレルギー性鼻炎▽アレルギー性結膜炎▽花粉症▽食物アレルギー―の6疾患について、国や地方自治体が医療機関の整備や、予防法と治療法の開発、学校での教育に取り組むことを定めている。厚生労働省は基本法に基づき17年3月に基本指針を作成し、同年7月に各都道府県に拠点病院の整備を求める通知を出した。

受診に制約、他県に通院も

専門医の偏在により医療体制の地域間格差が大きいアレルギー疾患。症状は近年、適切な治療や指導を受ければ日常生活への支障がない程度に緩和できるとされるが、それも専門医が身近にいてこそ。専門医の“過疎地”に住む患者は不利な環境を強いられている。

宮崎県都城市のアレルギー専門医で小児科医院を営む児玉隆志さんは年間約150人の食物アレルギーの子どもを診察している。患者は県内各地のほか、隣の鹿児島県からも来る。

医院ではアレルギーの原因食物をごく少量から食べさせて症状の有無を調べる「食物経口負荷試験」を行う。何がどの程度なら食べられるか、正確に把握するためだ。試験は半日がかり。一般の診察や予防接種などと並行して行うため、1日に1~2人が限度。インフルエンザが流行する12~2月は感染予防のため中断せざるをえない。

宮崎県内の専門医13人のうち小児科医は5人。うち4人が開業医だ。受診予約が取りづらいだけでなく、情報不足から原因食物を完全除去する従来型の診療にとどまっている患者が多いとみられる。また開業医では入院が必要な重症患者には対応できず、県外の医療機関を頼らざるを得ない。

専門医には栄養学などの知識も必要で、育成には3~5年程度かかるという。だが県内には専門医を育成する場もない。児玉さんは「現状では県内の専門医同士が連携を深めて積極的に研修などを行うことが大切だ」と指摘する。

「専門医と出会って世界が変わった」。長男(4)が卵と乳のアレルギーがある福岡県大牟田市の会社員中嶋実優さん(28)はそう話す。生後半年でアレルギーが判明。以来、原因食物を完全に除去し、母乳もやめた。昨年、かかりつけ医の紹介で専門医のいる熊本市の熊本医療センターを受診。負荷試験に基づく食事指導を受け、少量の卵と牛乳を食べられるようになった。

熊本市まで通院に車で片道約2時間。「負担はあるけれど、ホットケーキもお好み焼きも食べられるようになった。息子も大喜びです」

(本田彩子)

西日本新聞

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