「ロシアを追い詰める『西側』の陰謀を撃退し...」プーチン大統領がいま考えていること

「ロシアを追い詰める『西側』の陰謀を撃退し...」プーチン大統領がいま考えていること

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2023/03/19
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なぜ戦争が起きるのか? 地理的条件は世界をどう動かしてきたのか?

「そもそも」「なぜ」から根本的に問いなおす地政学の新たな入門書『戦争の地政学』が話題になっている。

地政学の視点から、ロシア・ウクライナ戦争を分析して見えてくることとは——。

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「ロシアの国家としての存続をかけた戦い」

ロシアのプーチン大統領が、次のように発言したというニュースが流れた。

「我々にとってこれは地政学的な課題ではなく、ロシアの国家としての存続をかけた戦いであり、国と子どもたちの将来の発展のためである」

これはどういう意味だろうか。

どうやらプーチン大統領は、「西側」諸国を追い詰める権力政治ゲームをしているが、ロシアは国家総動員体制で自らを守っている、と国民を鼓舞しているようである。

ロシア人は、ナポレオンとヒトラーの侵略をロシア/ソ連が撃退した戦争を、それぞれ「祖国戦争」「大祖国戦争」と呼んでいる。プーチン大統領としては何とかして「今ウクライナで起こっている戦争も大祖国戦争だ」ということをアピールしようとしているわけだ。

他人の国に侵略戦争を仕掛け続け、自国の領土への攻撃を控えてもらっている状況で、「よく言うな」という話だ。もっとも、これくらいの強心臓でなければ、他人の国に侵略戦争を仕掛けるはずもない。今さらプーチン大統領の厚顔無恥に驚いても仕方がない。

「『西側』の陰謀を撃退して祖国を防衛する」

ロシアの本格的なウクライナ侵攻が1年を迎える直前の2月21日、プーチン大統領は、ロシア連邦議会の議員たちを前にして、1時間40分にわたる大演説を行った。

英語の全訳を見る限り、徹底して「ロシアを追い詰める『西側』の陰謀を撃退して祖国を防衛する」という物語を披露したものだ。

ウクライナ領内のロシア国境近接部にNATOが秘密の軍事・生物工場を作って戦争ゲームをしている、といった妄想めいた内容も散りばめつつ、「西側」はユーゴスラビア、イラク、リビア、シリアで犯罪行為を行ってきた、といったお馴染みの物語も駆使した。

中には、「西側」は貧困対策に600億ドルしか使っていないのにウクライナに1,500億ドルの軍事支援をしている、といったプーチンらしいウンチクに満ちた糾弾もあった。

プーチンの「歴史認識の壮大さ」

プーチン大統領によれば、現在起こっている戦争の犠牲者に対する責任は、キーウのウクライナ政府を操っている「西側」にある。プーチン大統領の演説によれば、キーウの政府は、外国の利益に奉仕し、自国民の利益を忘れている。

目を見張るのは、歴史認識の壮大さだ。プーチン大統領によれば、「西側」のロシア苛めは19世紀から始まった。なぜならオーストリア=ハンガリー帝国とポーランドが結託して今のウクライナの領土をロシアから奪おうとしたからだ。この試みは、1930年代にナチス・ドイツによって繰り返された。

この大演説からわかるのは、プーチン大統領が19世紀「オーストリア=ハンガリー帝国」、「ポーランド」、20世紀「ナチス・ドイツ」、21世紀「アメリカ」を、全部まとめて「西側(The West)」という概念に押し込んでいることだ。

この壮大な「西側」なる怪物に立ち向かうロシアも、しかし、やはりすごい存在であろう。プーチン大統領によれば、「ロシアは一つの国であると同時に、一つの確固たる文明である」「祖先たちから現代のロシア人たちが受け継いだ」この「一つの文明としてのロシア」を守るために、プーチン大統領は「西側」という怪物に立ち向かう。

壮大ではあるが、あまり深遠とは思えない見え透いた「怪物としての『西側』に立ち向かう文明としてのロシア」のロジックは、国内向けだろう。国際的には、あまりアピール力があるようには見えない。

つづく「プーチン大統領の主張は『妄想』に近い…その『文明』論の限界を指摘しよう」では「文明の衝突」や地政学の視点から、さらにプーチンの思考の分析をしていく。

(ブログ「『平和構築』を専門にする国際政治学者」より一部編集のうえ転載)

新刊『戦争の地政学』では、「英米系地政学」と「大陸系地政学」という地政学の二つの異なる世界観から、17世紀ヨーロッパの国際情勢から第二次大戦前後の日本、冷戦、ロシア・ウクライナ戦争まで、約500年間に起きた「戦争の構造」を深く読み解いている。

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