“人喰い”の真相が明らかに...?邪悪の根源に揺れ動く「ガンニバル」第6話レビュー

“人喰い”の真相が明らかに...?邪悪の根源に揺れ動く「ガンニバル」第6話レビュー

  • MOVIE WALKER PRESS
  • 更新日:2023/01/25
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村の大男にボコボコに殴られ続ける大悟の“その後”も気になる [c]2022 Disney and its related entities

ディズニープラスの「スター」にて独占配信中の「ガンニバル」。柳楽優弥が主演を務め、『岬の兄妹』(19)、『さがす』(22)の片山慎三が監督、『ドライブ・マイ・カー』(21)の大江崇允が脚本を務めるなど、日本のトップクリエイターが集結したオリジナルシリーズだ。山間に位置し、外界から隔絶した供花村に赴任した駐在員、阿川大悟(柳楽)。「人が喰われているらしい」という恐ろしい噂が囁かれるこの村で、ある事件の捜査をきっかけとして、徐々に狂気の世界へ陥っていく。MOVIE WALKER PRESSでは、圧倒的クオリティと実力派ぞろいの俳優陣で贈る、野心的な本作の魅力をレビュー連載でお届けする。第6話は、ライターの須永貴子が担当する。

【写真を見る】生まれたばかりの赤ん坊を…不気味な笑みを浮かべる後藤銀の凶行

※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

「八ツ墓村」のモデルにもなった事件とのつながりに期待値も上昇

“人喰い村”と噂される供花村。その駐在所に赴任してきた阿川大悟と地元住民の会話に「ぼっけえ」という形容詞が登場し、パトカーに“岡山県警”の文字を見かけた時に、このドラマに対する期待値と信頼度が一気に高まった。「八ツ墓村」のモデルにもなった津山事件(1938年)が起きた岡山県の、架空の限界集落が舞台といわれたら、ホラー好きなら食指を動かさずにはいられない。

そこから第5話までを視聴して、その期待がまったく裏切られていない。 土着の風習や祭事、呪われた家の血脈、住民の閉鎖性や排他性、二面性などといったヴィレッジ・サイコスリラーというジャンル特有のカードを切りつつ、主人公の大悟もまた特殊なキャラクターであるがゆえに生じる軋轢や混乱によって、このジャンルにおいてポーカーでいうところの最強かつ新たな“役”を作り出したといえる。

村で唯一の助産師だった後藤銀の邪悪さが浮き彫りに…

第5話までをざっと整理しておこう。大悟は前任の駐在、狩野(矢柴俊博)の失踪が供花村を牛耳る後藤家に関連していると読み、独自に捜査を続けている。オカルト系ジャーナリストから、供花村では死産が多すぎることを教えられた直後、村の中心的存在であるさぶ(中村梅雀)の娘、加奈子(山下リオ)の子どもが死産だったことを知る。第6話は、大雨のなか、駐在所の前に立つ加奈子を捉えた第5話のラストシーンを引き継ぐ形でスタートする。

加奈子は大悟に衝撃の告白をする。数年前に加奈子が出産した際、後藤家の当主で村唯一の助産師でもある銀(倍賞美津子)が、「この子、息がねえ」と言って、生きている赤子を連れ去ってしまったと。その告白を回想する映像で、これまでは遺影から睨みつけていた銀が、初めて動体として視聴者の前でその邪悪さを露呈する。加奈子の目線が捉えたショットは、動いている赤子の手と、連れ去る時にほくそ笑む銀の横顔。「待って銀さん!」と必死に抗う加奈子を父親のさぶは全力で制し、銀に加担したのだ。

供花村の人たちが後藤家の言いなりなのは、林業で生計を立てている村にとって、後藤家が所有する土地が生命線だからという説明が第4話であった。だからといって、孫の命を後藤家にくれてやるというのはどう考えても常軌を逸している。そこで大悟と視聴者の脳裏をかすめるのが、供花村の人々が恐れ、後藤家の人間が畏れる“あの人”の存在だ。後藤銀と“あの人”の、ずっと粗かった解像度が一気に高くなるのが、この第6話なのである。

供花村の闇に引きつけられる大悟の凶暴性

最大の情報は、銀の死因への言及だ。大悟は頼りにしている監察医の中村(小木茂光)から呼び出され、銀は食人の風習があるパプアニューギニアのフォレ族の風土病「クールー病(通称・狂い病)」だったと告げられる。元駐在の狩野が、銀を中村の診察室に連れてきた時の回想シーンで、食人によって感染する脳疾患に侵され、狂ったように笑いながら暴れ回る銀を、まるで獣のように体現する倍賞美津子が圧倒的だ。中村は過去のカルテをさかのぼり、供花村でクールー病にかかった人物がもう1人いたと大悟に報告する。1951年当時6歳だった少年で、生きていれば現在75歳。大悟はこの人物こそが、第2話で自分に襲いかかってきた巨大な老人で、村の人々が畏れる“あの人”だと確信する。

得体の知れなかった邪悪ななにかがその実像のようなものを明らかにした瞬間に、作品の“魔法”が突然効力を失ってしまうことがある。しかし本作では、銀と“あの人”の実像がクリアになればなるほど、後藤家や供花村という共同体の闇が、渦のように視聴者を巻き込んでいく。その闇に誰よりも引きつけられている人物こそが、主人公の大悟である。職業的な正義感はもちろんあるだろうが、“暴力警官”というレッテルを貼られるほどの凶暴性を孕む大悟は、特に初期は己の暴力性を吐き出す口実を求めて後藤家に執着しているようにも見えた。供花村の人たちが村の掟で大悟の精神と肉体を締め付けようが、彼は目を爛々と輝かせ、生命力を増していく。供花村の男を返り討ちにした大悟を見て、妻の有希(吉岡里帆)が放った「あんたさ、なんか楽しそうじゃない?」という一言に、共感した人は多いのではなかろうか。

後藤家当主であることに苦悩する恵介からも目が離せない

供花村に、年に一度の奉納祭が近づいてきていた。大悟は来乃神神社の次期神主である神山宗近(田中俊介)から、この村ではかつて、祭の際に人間を生贄として奉納していたと聞き、加奈子の赤子が生きている可能性に気づく。その頃、銀の孫で次期後藤家当主の恵介(笠松将)が、子どもたちを閉じ込めた極秘の地下牢に弟の洋介(杉田雷麟)を連れて行く。そして「本家に生まれた者が通る道。“あの人”に捧げるための義務じゃ」と、子どもたちの世話を命じる。

続く第7話はシリーズ最終話。銀と“あの人”が人を喰っていたとして、恵介も後藤家の当主になったら人を喰わなければいけないのか。かつて交際していた前駐在の娘である狩野すみれ(北香那)から「赤ちゃんができた」と告げられた恵介は、親になり後藤の血を子に継承させるのか。そもそもなぜ“あの人”に生贄を捧げなければいけない(奉納を断絶できない)のか。またしても後藤家に捉えられてしまった大悟はどうなるのか。明らかに揺れ動いている後藤洋介が、ゲームチェンジャーとなるのか。そもそもこれらの疑問が、すべてラスト1話で解決するのか。

ただ一つ確かなのは、本作の主人公は大悟だが、(性別はさておき)ヒロインは恵介だということ。当主としての苦悩を袂に隠し、紋付袴とざんばら髪で「今日からわしが当主だ」と宣言した恵介の惚れ惚れするような麗しさにそう確信した。彼が土地の呪いから解放されるのか、それとも土地と心中するのかは、大悟の肩にかかっている。

文/須永貴子

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