ぼったくりバー、閉店セール、GPS置き引き......悪趣味YouTube、無限ループの罠(トリプルファイヤー吉田靖直)

ぼったくりバー、閉店セール、GPS置き引き......悪趣味YouTube、無限ループの罠(トリプルファイヤー吉田靖直)

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  • 更新日:2020/09/17
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ソリッドなビートに、なんとも形容し難いユーモラスな歌詞で人気を誇るバンド「トリプルファイヤー」。作詞を担当するボーカルの吉田靖直は『タモリ倶楽部』や大喜利イベントに出演するなど、独特なキャラクターを活かして幅広いフィールドで活躍している。

そんな彼がYouTubeでつい観てしまうのが、「ルールを破ってのうのうと生きている奴を正義で叩こうという発想の動画」だという。ぼったくりバー、閉店セール、GPS置き引き……なぜ我々はこういった動画の無限ループにハマってしまうのか。

ルールを破ってのうのうと生きている奴を正義で叩こうという発想の動画が嫌なのだが……

コロナ禍で家を出るのも憚られる空気のなか、ひとりでやるべき作業がたくさんあってもなんとなく身が入らないまま、本を読む気力もなく、ダラダラとYouTubeばかり観ていた。

『ニューヨークのニューラジオ』を流しながら、『天鳳』(オンライン麻雀)をやるのが至福の時間だった。ほかに観るのも、『ジャルジャルタワー』や、『よろチキチャンネル』など芸人のものが多い。

【ゲスト:ななまがり&鬼越トマホーク】ニューヨークのニューラジオ特別編#9 2020年3月10日(火)

『角刈りのくせにリモートでもクラスのメインになろうとする奴』

ナダルを盗撮したら某食品企業の悪口を言い始めました、、【デスソース】【激辛】【ドッキリ】

以前はなんとなく苦手意識を持っていたが、ここ数年は専業のYouTuberのチャンネルもちょいちょい観る。すしらーめんというメントスコーラの発展系みたいな実験をしている人は、子供のころにやってみたかったことを叶えてくれているようでワクワクする。

【Billie Eilish – bad guy】俺から出る音だけで完全再現するチャレンジ

(芸人でもあるが)フワちゃんのチャンネルを観ると、常人離れした陽気さに少し感動してしまう。

【物価鬼】セブ島で1万円爆食するまで帰れま10!!

最近はYouTuberヒカルの「【カメラ止めろ動画出したら訴えるぞ】毎日嘘の閉店セールしてる店の闇暴いたら逆ギレしてきてブチギレ口論になった…」という煽情的なタイトルの動画が話題になった。

何年間もずっと閉店セールをやっている店というのがたまにある。すべての商品を売り切るまでが閉店セールだという店側の理屈があるとしたら、商品を買い占めれば本当に閉店するのか?という多くの人が抱いたことがあるような疑問を実際に試してみた、というのがこの動画だ。

【カメラ止めろ動画出したら訴えるぞ】毎日嘘の閉店セールしてる店の闇暴いたら逆ギレしてきてブチギレ口論になった…

ヒカル氏は商品を買い占めた数日後に再び店を訪ね、相変わらず営業していることを確認する。「閉店セールで閉めるって言ってたのは嘘やったんですか?」と問い詰めると店員と口論になるが、その達者な話術でオーナーに閉店の約束を取りつけさせる。翌日も店を見に行き、本当に閉店しているのを確認した、というのが動画のあらましだ。

その後の動画で閉店セールの動画はやらせだったと述べられていたが、事の真偽は私にとってはわりとどうでもいい。私は、ルールを破ってのうのうと生きている奴を正義で叩こうという発想の動画が嫌なのだ。しかしそうは言いながらそのような動画に時間を忘れるほど熱中し、趣旨の近い関連動画を辿っているうちに数時間が経過していた経験が多々ある。

「心が曇ることは絶対にしてはいけない」というミルクボーイ内海氏が自室の壁に掲げていた言葉にグッときた

社会の嘘や闇を暴く系のYouTubeは視聴回数を稼ぎやすい王道のジャンルとして確立されているようで、いろいろなYouTuberが同じ構造の動画を撮っている。

今までに観たもので印象に残っているのは、喫煙所からはみ出てタバコを吸っている人を「ここ喫煙所じゃないので」と注意し、たまに従わない人や言い返してくる人がいると「頭おかしいんじゃねえの」「ダメだこいつ、話通じねえ」などと煽りを入れ、ケンカを誘発する動画。

あと、GPSの入った荷物を置いたまま路傍で寝たふりをして、計算どおり置き引きに遭ったあとで犯人を追跡し、住所を突き止めて警察に突き出す動画など。

動画の中で批判されている対象は確かに悪いのだが、わざわざ自分からトラブルに巻き込まれに行き社会的な正義を味方につけた上で悪を晒し上げ、ボコボコにして気持ちよくなっているYouTuberに憤りを感じる。彼らが頭の悪いキッズから大変な人気を博し、数千の応援コメントを集めているのを見ると暗澹たる気持ちになる。

ただし、そういう私自身の中にも悪を懲らしめてスカッとしたいという感情があるのは否定できない。

YouTuberと弁護士が客としてぼったくりバーに入店し、法外な値段を請求する店側に対し法律の知識で論破する動画を観て思わず「いいぞ、もっとやれ」と思ってしまった。そこからぼったくりバー関連のYouTubeを貪るように観た。私も過去に大した額ではないがぼったくりバーの被害に遭い、すべてのぼったくり店が滅びるべきだ、と憎悪の念を抱いたことがある。

ぼったくりバーに芸人が潜入したらありえない金額を請求されて口論になったけど最後にミラクル起きた

今でもぼったくり店は必要悪とすら思えないが、そんなものを観て気持ちよくなっているようでは、マナーの悪い喫煙者を晒し上げるYouTuberの取り巻きキッズと大して変わらない。正義で悪を殴る気持ちよさに酔ったら頭が悪くなる。その一念で自分に歯止めをかけようとしていても、たまに危ないときがある。

というか私はなぜ、嫌いなタイプのYouTubeをそんなに熱心に観ているのだろう。嫌だったら観なければいい。そもそもああいうYouTubeのメインターゲットは分別のついていない10〜20代で、30を越えて同級生が所帯を持ったりしているなかで、未だ悪趣味なYouTubeを見つけてどうこう言っている自分が悲しいとは思う。

そういえば、私は『Yahoo!ニュース』で下劣なコメントがつきそうなニュースを見つけたらついコメント欄をチェックしにいってしまう悪癖もある。見ているだけでストレスが溜まり、頭が悪くなり、運気が下がっている実感があるがやめられない。

去年の『M-1』の背景を追った番組の中で、ミルクボーイの内海氏が自室の壁に掲げていた「心が曇ることは絶対にしてはいけない」という言葉にグッときて、今年はその言葉を実践していこうと決めたはずだった。2020年もいつの間にか終わりに近づいている。せめて最後だけでも、心の曇る動画を観るのをやめ、自分のやるべき仕事をまっとうしたい。

吉田靖直

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