「母に注ぎ込まれた愚痴や悪口が私の土台」。30代シングルマザーが感じるプレッシャーの正体

「母に注ぎ込まれた愚痴や悪口が私の土台」。30代シングルマザーが感じるプレッシャーの正体

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  • 更新日:2023/01/25
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小学生の頃から、母親に父親の愚痴を聞かされて育ったという女性。家を出ても、母親の執拗なまでの電話攻撃で愚痴を聞き続けてきたという。

両親を見て結婚に希望を抱かなくなった女性は(男性も)少なからずいる。子どもは、自分の両親しか夫婦のモデルを知らないのだ。

子どもに愚痴を垂れ流す母

「私の母は、常に父の悪口を言っていました。確かに父は浮気もギャンブルもしていたし、家に給料をほとんど入れない時期もあったようです。私が小学生のころ、母は『うちにはお金がないから笛やハーモニカを買えないと先生に言いなさい』と言っていました。それはあまりにもかわいそうだと、伯母が買ってくれたこともあります。子どもを不安にさせる名人でしたね、母は」

苦々しい顔でそう言うのは、ユウミさん(37歳)だ。両親と兄の4人家族だったが、6歳年上の兄が親をどう思っていたか彼女にはさっぱりわからない。ただ、彼女自身はいつも母から父の愚痴を垂れ流されていた。

「当然、おかあさんがかわいそうと小学生のころは思っていましたよ。父が母を怒鳴るところも見ていましたし。だけど中学生くらいになると、母がわざわざ父を怒らせるようなことを言っているのもわかった。高校生になると、母の物言いは人の神経を逆なですると私自身も感じるようになりました」

母はいつも人をネガティブに見ていた。たとえ誰かに親切にされても、「親切の裏には下心があるんだよ」という具合。人の好意を素直に受け取ることもなかった。

「母はパートで働いていましたが、私が小学校6年生のある日、なぜか忘れたけど夕飯になってもいないことがあったんです。心細くなって友だちの家に電話をしたら、その家のおかあさんが『うちにご飯食べにおいで』と言ってくれた。

メモを残して出かけると、その後、母が迎えにきた。帰りながら母は『みっともないからよその家でご飯なんか食べるんじゃない』と怒りだして。おかあさんがいなかったからと言ったら、『人の家の子にご飯を食べさせるなんて、あの家は何か魂胆があるんだ』と。心から感謝することを知らない人だなと子供心にもわかりました」

だから大人になるにつれ、母と物理的にも精神的にも距離をとった。それでも母は父の悪口を毎日のように言った。高校を卒業していち早く社会に出た彼女は、さっさと独立したが、母はたびたび電話をかけてきた。留守番電話にしておくと、「あんた、いるんでしょ。あんたが聞いてくれないから、私は生きていてもしかたがない」と言い出す。脅しているだけだとわかっていても、受話器を取ってしまった。

離婚をしたら「できそこない」と言われ

ユウミさんは20代前半に仕事をしながら大学の二部に通った。6年かかったが無事に卒業、大卒資格を得て給料も上がった。

29歳のときに友人の紹介で知り合った3歳年上の男性と結婚し、娘も産まれた。ところがこの夫が、結婚生活が長くなるにつれ彼女を見下す発言をするようになった。

「結婚するとき、私が育った家庭のことを話したんですが、夫はきちんと聞いていなかったのか、心に響かなかったのか、そんなに重視していなかったみたい。だけど結婚したら、母の電話攻撃などに驚いたみたいで。私は留守電にして知らん顔していますが、夫には親からの電話に出ないなんて考えられない。だけど出れば嫌なことを言われるのはわかっている。だから話さないのがいちばんなんですよ。

でも夫は『どうしてきみとおかあさんは、そんなに仲が悪いの?』『親子の情というものがないわけ?』と私を責める。だから~と、母の実態を告げても『そんな親がいるとは思えない』って。自分の価値観を曲げないんですよ。母も私の夫にはいい顔していましたから、母の本当の姿は見せていなかった」

なぜかユウミさんが悪者になってしまう。本当のことを言っても信じてもらえないなら、伝えるだけ無駄だと彼女は夫に事実を知らせることを諦めてしまった。そのため、夫には妻への不信感が芽生えていったようだ。

「で結局、夫が浮気して結婚生活は終わりました。夫は軽い気持ちだったと言ったけど、私は夫の悪口を娘に吹き込むような母親になりたくなかった。だから憎む前に別れたいと告げたんです。『きみという人間がよくわからない』と夫には言われましたが、私だって、妻より妻の母を信じたがる夫のことがわからなかった」

引き取った娘は現在6歳。この春から小学校に上がる。元夫とは娘のことでよく連絡をとる。憎み合う前に別れてよかったと感じるという。

「私が離婚したとき、母は『みっともない。結婚生活もまっとうできないなんて』と言いました。私は『夫の悪口を娘に吹き込みながら結婚生活を続けているより、離婚して協力しながら娘を育てるほうが、よほど娘のためにはいいと思うけど』と言いました。母は怒って、『だいたいあんたは我慢というものを知らない』とまで言っていましたね。

散々、父親の愚痴を言われたけど、私は我慢して聞いていたけどねと言い返しました。でも母に言い返すと、あとで自分のことが嫌になる。相手が親だからというわけではなく、人と揉めるのがそもそも嫌いだから、言い合いをすると気持ちが沈んでしまうんです」

今は実家から1時間ほど離れたところで暮らしているが、それでもときに母からの嫌味をまともに受けて気落ちすることがある。娘にだけは悪影響を及ぼしたくないと、ユウミさんは前を向いて明るく生きようと頑張っているという。

「ただ、どうしても私の中には母から注ぎ込まれた“愚痴”や“父の悪口”が土台のように生きている。下手すると私自身も、そういうネガティブな言葉を娘に投げつけそうになるんです。それだけはしてはいけないと今は何とか踏みとどまっていますが、明るく前向きに振る舞うことのプレッシャーが人一倍あるのかもしれませんね」

自分が強くあらねばと思えば思うほど、母への憎悪が募ることがある。母からしっかり刺されてしまった毒矢を簡単に抜く方法はないのかしらと、ユウミさんはつぶやいた。

亀山 早苗プロフィール

フリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))

亀山 早苗(恋愛ガイド)

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