厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を読み解く

少し前の冷え込みも嘘のように暖かくなってきましたね。もうすぐ各地で桜の開花の便りも聞こえてきそうです。
今回は、みなさんがどのくらい厚生年金や国民年金をもらっているのか、また増やす方法があるかを考えてみたいと思います。
厚生労働省年金局が毎年発表し、2022年12月に最新版として発表されたのが「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」です。
こちらには公的年金についてのデータが記載されており、厚生年金(老齢厚生年金)や国民年金(老齢基礎年金)の受給額に関する金額も確認できます。
受給額については中央値の記載がありませんでしたが、平均値の記載があります。
こちらの資料より、リアルな年金受給額を見ていきましょう。
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1. みんな公的年金をいくらくらいもらっているか
令和3年度の厚生年金の受給者の平均額は、老齢基礎年金も含めて1人あたり月額14万5665円、老齢基礎年金の場合は1人あたり月額5万6368円となっています。
おひとりの方も、ご夫婦の方でも決して多いという金額ではありません。
特に自営業の方が20歳から60歳まで40年間、国民年金だけに加入して保険料を払っていた場合、満額でも月額6万6250円です。
夫婦でも13万2500円と考えると、生活するのは大変な金額といえます。
すでに年金を受給されている方が年金を増やすことは難しいのですが、年金をもらうまでに時間のある方は、少しでも増やす方法があります。
2. 年金を増やす方法1. 厚生年金に加入して働く
いろいろな働き方がありますが、社会保険(健康保険や厚生年金)に加入することで、将来の年金を増やせます。
正社員でも派遣社員でも、アルバイトであっても一定の要件を満たせば厚生年金に加入することができるのです。

出所:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
給与や賞与が多ければ支払う保険料は高くなりますし、将来の年金も増やすことができます。
さらに給与収入以外にも厚生年金の加入期間が長ければ、厚生年金の金額が増えます。
厚生年金の受給額は以下の計算式で計算するため、1ヶ月でも長く働くことで、将来の年金は増やせるのです。
平均標準報酬月額 × 5.481 / 1000 × 月数 × スライド率 (1.0)
自営業などで国民年金だけに加入中の方は、厚生年金の上乗せ部分がありません。
そこで厚生年金に代わる上乗せも考えましょう。
国民年金の保険料を払うことが条件になりますが、その上でできることを見ていきます。
3. 年金を増やす方法2. 国民年金の付加保険料を払う
毎月、国民年金の保険料に400円を上乗せして払うことで、65歳以降に払った月数 ×200円を受け取ることができます。
単純に金額だけで考えると、2年以上もらうことで金額を増やすことができます。
例えば、国民年金だけに加入し40年間付加保険料を払った場合、19万2000円を追加で払いますが、65歳以降1年間でもらえる年金額は9万6000円です。
2年で元が取れる点、また少ない金額で始めることができる点からも、実行しやすいと思います。
4. 年金を増やす方法3. 国民年金基金
付加保険料で年金額を増やすことはできますが、40年間払ったとしても1年でもらえる金額は9万6000円、1ヶ月で考えると8000円です。
8000円と聞くと少なく感じる方、さらにもう少し支払える余裕がある方は、国民年金基金を利用しても良いですね。
加入時の年齢により保険料は違いますが、65歳以降の年金を若い時から準備することができます。
この後に記載する iDeCo (個人型確定拠出年金)との大きな違いは、 下記3つです。
65歳から受け取りが始まる
基本は終身年金で受け取ることができる
自分で運用しなくても良い
年額18万円(15年保証付き)A型終身受け取りで加入した場合、掛け金は40歳0ヶ月で終身型は月額12万555円ですが、60歳まで掛けたとして301万3200円の支払いです。
82歳まで受け取れば、支払った以上の年金をもらうことができますが、国民年金と同じで終身受け取りができるメリットがあるということも大きいのではないでしょうか。
国民年金基金は、終身型でも保証期間の有無を選ぶことができ、保証期間をつけなければ掛け金を少なくすることができます。
65歳からの終身型以外にも、60歳からもらえる年金や期間の決まった確定年金を選ぶこともできます。
5. 年金を増やす方法4. IDeCoに加入する
厚生年金に加入の方も国民年金に加入している方でも、将来の年金に不安のある方は、iDeCoを使って自分で運用できます。
IDeCoは、自分で利用する金融機関や運用する商品(預金や投資信託など)を選ぶ必要がありますが、自分で運用することができます。

出所:iDeCo公式サイト「iDeCoってなに?」
若い方は運用期間が長くなるため、積極的に運用することで将来の年金を増やしやすくなります。
また、年齢が高くなり年金を受け取る時期が近くなると、積極運用から安定運用に切り替えても良いでしょう。
国民年金基金と違い、受け取りは原則60歳または65歳からです。また自分で運用することができるというメリットもあります。
勤務先で企業型確定拠出年金の制度がある方は、勤務先の制度を利用することもできます。
6. 年金アップに向けてできることを考えよう

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日本では高齢化のため、社会保障費の伸びが進んでいます。それに伴い、年金額が少なくなることは予想にかたくありません。
老後を考えると収入の中心は公的年金ですが、公的年金だけでは生活できないというのは、今の世の中を見ても明らかです。
しかし、今気づいている方はこれから準備をすることで、将来の年金を増やすことが可能です。
今は元気に働くことで、生活をすることができますが、いざ働くことができなくなった時に頼ることができるのは、年金と自分が準備してきた貯蓄や運用の成果なのです。
今から準備することで将来の資金を準備することができますし、今回ご紹介したものは、社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除があるため、所得税や住民税を節税することもできます。
他にも、生命保険やNISAなどで老後資金を増やしている方もいると思います。
老後のことが少しでも気になる方は、早めに準備しましょう。
参考資料
厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
厚生労働省年金局「令和5年度の年金額についてお知らせします」
香月 和政