日本女性の政治代表、海外水準を「著しく逸脱するほど不公平」 小選挙区制がジェンダーバランスの壁に?

日本女性の政治代表、海外水準を「著しく逸脱するほど不公平」 小選挙区制がジェンダーバランスの壁に?

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  • 更新日:2021/10/14
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衆院選の当選者に占める女性比率(AERA 2021年10月18日号より

導入されて25年が経つ「小選挙区比例代表並立制」。与野党対立の構図が固定化し、「人」を選ぶことができないという問題点が指摘されている。さらに毎回同じ顔ぶれが争いを繰り広げ、政界のジェンダーバランスの壁も生み出している。AERA 2021年10月18日号で、制度が抱える問題を取り上げた。

【写真】女性の政治代表が著しく不公平な水準にあると指摘していた議員はこちら*  *  *

自公協力は「勝てる候補」として現職優先や世襲が幅をきかせているが、野党共闘も似た構造だ。立憲、共産の間では、それぞれ現職の選挙区では9割近くが一本化されているが、新人の調整は後回しで競合が多く残る。

一本化された現職より立候補の段階で当選のハードルが高くなっているのだ。もちろん現職が小選挙区で勝ち抜けば、その分、新人も比例復活当選の可能性が高まるが、有権者が新しい人材を国会に送り込む道のりは遠い。

とくに大きな影響を受けているのが、国会のジェンダーバランスだ=上のグラフ。

議会選挙の候補者を出来る限り男女同数にするよう政党に求める「候補者男女均等法」が18年にできて初めての衆院選となるが、男性が多い「現職」の優先が女性候補を増やす壁になっている。

「野党にどんどん女性を出して頂いて。うち(自民党)は残念ながら動かすだけの(空白区などの)キャパがない」

均等法を推進していた自民党の野田聖子幹事長代行(当時)は昨年11月、記者団に白旗を揚げた。

野党第1党の立憲も「3割以上」という数値目標を掲げたものの、「支部長がいるところは変えられない」(幹部)として2割にも満たない状態が続いている。

立憲では今春、空白区の公募を女性に限定する案が浮上したが、空白区は、当選回数を重ねた自民党の大臣経験者や、強い地盤を持つ世襲議員がいる場合が多い。

「候補者を立てられず残った選挙区をまとめて女性に押しつけるというのは、ご都合主義ではないか」

という異論が出て、見送られた。小選挙区制を導入する公職選挙法改正案の審議でもこうした課題は指摘されていた。

「小選挙区比例代表並立制にしても、女性の政治代表の増加が促進されるかは疑問で、むしろ、1人しか立てられないのなら男性をという発想に帰着することがないように、強い合意をこの際形成しておく必要がある」

93年11月、衆院の特別委員会。参考人として出席した猪口邦子・上智大教授(当時、現・自民参院議員)は「女性の政治代表は、他の先進民主主義国の水準を著しく逸脱するほど不公平な水準にある」と指摘し、比例名簿で男女を1人おきにいれるような工夫をするべきだと提案していた。

しかし、こうした提案は男性中心の国会では、かえりみられることがなかった。

自民党は05年、郵政民営化の賛成・反対で分裂した「郵政選挙」で、女性候補を比例名簿の上位に載せて当選させた。比例東京ブロック1位になった猪口氏もその一人となり、当選1回で少子化・男女共同参画担当相に起用された。

■カネがかかる弊害には効果 選択は狭まり国政に閉塞感

しかし、自民党に逆風が吹いた09年の衆院選ではそうした措置は消えた。猪口氏は1期で不出馬に追い込まれたのだった。

09年衆院選では、46人の女性を擁立した民主党が40人を当選させるなど、54人の女性議員が当選。衆院議員の女性比率が1割を超えたが、その後、民主党は分裂。小選挙区導入から25年間で、志のある女性が世襲でなくても当選を重ねられる環境を作ることができず、日本のジェンダーギャップ指数低迷の大きな要因になっている。昨年9月の日本政治学会でも議論になったが、小選挙区制の導入論議で欠けていたのは「多様性」だ。

最初の小選挙区選挙の後、細川、村山内閣でそれぞれ首相補佐官を務めた田中秀征氏と錦織淳氏が対談本『この日本はどうなる』(近代文芸社、97年刊)で次のように語っていた。

錦織氏「中選挙区と比べた場合、1対1の対決になり、有権者が非常に肩身の狭い思いをする。どっちを選ぶのかというプレッシャーをかけられ、非常に嫌な思いをする」

田中氏「重苦しくなる」

錦織氏「中選挙区だと5人、10人とたくさん出ますでしょう」

田中氏「お祭り騒ぎのような明るさもあったね」

小選挙区制の導入は、同じ政党の候補者同士がサービス合戦となってカネがかかる中選挙区制の弊害を改める効果はあった。しかし、政権を競い合う政治の中身が定まらないままに「政権交代可能な選挙制度」へと突き進んだ政治改革は、党執行部の権限を強めるばかりで、有権者の選択は狭まり、国政の閉塞感を強めている。

今回の衆院選は「自公」と「野党共闘」の2大ブロックを中心とした選択となるが、有権者が時宜にかなった「人を選べる」仕組みを取り戻すことが必要だ。まずは公認候補を決める候補者の予備選を導入するなどの工夫をし、将来的には選挙制度自体の見直しをするべきだ。(朝日新聞政治部・南彰)

※AERA 2021年10月18日号より抜粋

南彰

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