実は危険!? 整形外科でもらった湿布を家族に分ける行為。貼り薬の意外なリスク【薬学部教授が解説】

実は危険!? 整形外科でもらった湿布を家族に分ける行為。貼り薬の意外なリスク【薬学部教授が解説】

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  • 更新日:2023/09/19
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【薬学部教授が解説】病院で処方された薬を、自分以外の人に譲ったり使わせたりしてはいけませんが、どのようなリスクがあるのでしょうか?

Q. 整形外科でもらった湿布、孫に使わせるのはいけないのですか?

処方薬を人に譲ってはいけないことは、多くの人が理解されていると思います。しかし飲み薬ではない湿布などの貼り薬は、「家族に一枚くらいあげてもいいだろう」と安易に考えてしまう方もいるようです。

なぜいけないのか、どのような危険があるのか、解説します。

Q.「孫が足をくじいたので、整形外科でいつももらっている腰痛用の湿布を使わせようとしたところ、子どもに叱られました。湿布くらいよいだろうに……と思いますが、譲ってあげてはいけないのでしょうか?」

A. 処方薬を譲ってはいけません。貼り薬であれ、本人以外が使うのは危険です。

湿布には、単に冷やしたり温めたりするだけのものもありますが、整形外科で処方された腰痛用の湿布には、間違いなく「痛み止めの薬」が含まれているはずです。

市販の湿布薬の中には、家族で使えるようなタイプのものもありますが、処方されたものをお孫さんに譲るのはお止めください。

そもそも自分が病院を受診して出してもらった薬は、どんなものでも、人に譲ってはいけないのです。薬局で買える一般用医薬品は、比較的安全性が高く、多くの人が同じように使えるからこそ、店頭販売されているのです。

一方で、病院で処方される、薬局などでは手に入らない医療用医薬品は、使ってよい人と使ってはいけない人がいます。用法用量の設定が難しかったり、副作用が強かったりするため、店頭販売はできないのです。

医師が、あなたに適すると判断して処方した薬は、他の人にも適した薬とは限らず、危険です。飲み薬でも外用薬でも同じです。

また、特に痛み止めの湿布薬については、幼いお子さんには使用が禁止されているものがあるので注意しなくてはなりません。

理由の一つは、湿布薬には、温感や冷感を生じるためや有効成分を皮膚に浸透しやすくするために、多くの添加物が入っているからです。

子どもに大人用の湿布を貼ると、皮膚にかゆみや発赤、ただれなどを生じやすいです。湿布を剥がすときに皮膚が傷ついてしまうこともあります。幼い子どもは、大人より肌が弱いということをしっかり認識しておいてください。

もう一つの理由は、痛み止めの薬の中には、使用年齢に制限があるものがあるからです。たとえば、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクなどが該当します。

どのくらいの年齢で使えるかは薬ごとに違います。医薬上は15歳以上であれば成人と扱いますので、15歳以上であればすべての湿布薬を使えますが、7歳未満のお子さんに対しては原則湿布薬は使いません。

どうしても必要な場合は、医師の判断で、そのお子さんに適したものに限って処方されます。年齢制限が設けられている理由はさまざまですが、主に安全性が確認されていないからです。

「自分は問題なく使っているから」という理由だけで安全性を判断せず、処方薬はご自身だけで、安全に使用するようにしてください。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)

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