2020年8月・9月は122人ずつ コロナ禍で若者の自殺者数が急増していた

2020年8月・9月は122人ずつ コロナ禍で若者の自殺者数が急増していた

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/01/14

政府は1月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、緊急事態宣言を発令した。期間は2月7日まで。

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前回の緊急事態宣言時に若年層の自殺が増加

前回の緊急事態宣言時には、その影響からか、20歳未満の自殺者が増加した。特に2020年8月の「学生・生徒等」の自殺者は100人を超えた。全国が一斉休校となり、不安が高まったり、生活のリズムが崩れたりした背景もあった。今回は一斉休校の要請こそないものの、不要不急の外出自粛や飲食店の時短、テレワークの強化などにより、若年層や女性のメンタルヘルス悪化が懸念される。

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昨年の宣言は4月7日で、対象は7都府県だった。4月16日には対象を全国に拡大。期間も5月31日まで延長した。3月2日からの全校一斉休校の措置と緊急事態宣言による外出自粛によって、年度末から年度始めに学校に行けず、卒業式や入学式が十分に行えなかった。6月1日から休校措置が解け、新しい学校やクラスでの学びや部活が始まったが、部活動の大会も中止が相次いだ。

新型コロナウイルスの心理面への影響

新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」(厚生労働省、調査期間2020年9月11日~14日、15歳以上、10981件回収)によると、「何らかの不安等を感じた」人が半数程度いた。特に2020年4~5月は63.9%と不安を感じた人の割合がもっとも高く、中でも女性は「そわそわ、落ち着かなかった」と34.2%が回答。「神経過敏に感じた」のが30.7%で、いずれも男性よりも比率が高かった。

こうした生活の変化は、自殺者の動向にも変化をもたらした。警察庁の公表分をまとめた厚生労働省の自殺対策推進室の資料によると、男女ともに2020年10月が最多で、男性の自殺者は1320人、女性の自殺者は879人だった。20歳未満の自殺死亡率(10万人あたりの自殺者)はもともと上昇傾向にあった。2019年は3.1だったので、1989年の1.6と比べて倍になっている。2020年はさらに上昇していると思われる。

東日本大震災以来の100人超えとなった「学生・生徒等」の自殺者

若年層は、年度が終わる3月や、夏休みが明ける9月に自殺が多いことが知られている。厚生労働省の「地域における自殺の基礎資料」によると、「学生・生徒等」の自殺者数は2020年8月と9月にいずれも122人だった。月別で100人を超えたのは、東日本大震災のあった2011年5月の101人以来となる。

「学生・生徒等」で顕著なのは中高生だ。2010年からデータを見てみると、中学生の月別自殺者数は2020年8月がもっとも多く16人。過去10年間の8月分を比べても、2013年8月と同数でもっとも多い。このうち、女子中学生の8人も、2013年8月と並んで最多。前年同月比で4倍だ。高校生の場合、8月は47人。過去10年間で月別では最多。女子高校生は24人で過去10年の月別で唯一、20人を超えた。前年同月比では7倍になっている。

大学生も2020年8月は自殺者が多く、46人。東日本大地震のあった2011年3月と同数。過去10年間で8月の自殺者が40人を超えた年はなく、やはり最多だった。ただ、大学生での最多は2020年9月で55人だ。女子大学生の自殺者数もやはり同様で、8月の自殺者が12人。8月に10人を超えたのは、東日本大震災があった2011年以来になっている。そして、9月には大学生の総数としては55人。単月で50人を超えたのは2011年の4月と5月、9月、2012年の2月、3月だけだ。

夏休み明けに子どもたちの自殺が増える現象は、いわゆる「9月1日問題」と呼ばれている。2020年は夏休みのスケジュールが変則的で、8月中に夏休みが開けた地域が多い。夏休みが前倒しになったことで、「9月1日問題」も前倒しになったのではないか、という見方もある。警察庁の統計でも、2020年8月は、20歳未満の自殺についての「原因・動機」でもっとも多かったのは「学校問題」だ。

今回、文科省は一斉休校の要請はしない方針

今回の宣言にともなって、文科省は一斉休校の要請はしない方針だという。1月5日、萩生田光一文部科学大臣は会見で、「児童生徒の発症割合や重症割合は他の年齢に比べて極めて小さい。感染経路も家庭内感染が多く、現時点では学校を中心に地域に広がっていない状況のため、文科省から学校に対して、一斉の休業を要請することは考えておらず」などと述べた。また、文科省等は「小学校、中学校及び高等学校等における新型コロナウイルス感染症対策の徹底について(通知)」を出したが、以下のような措置を求めている。

「地域一斉の臨時休業については、学校における新型コロナウイルス感染症のこれまでの感染状況や特性を考慮すれば、当該地域の社会経済活動全体を停止するような場合に取るべき措置であり、学校のみを休業とすることは、子供の健やかな学びや心身への影響から、避けることが適切です。 児童生徒や教職員の中に感染者が発生した場合に、感染者が1人発生したことのみをもって、学校全体の臨時休業を行うことは、控えてください」

外出自粛で家庭内でのDV事件が増加

2020年度の学校の授業は、多くの地域で6月1日から始まった。特に新入生は学校に馴染むタイミングが遅れた。学校としても12ヶ月分のカリキュラムを実質的に10ヶ月で終えなければならなかった。再び一斉休校になれば、さらに期間が短くなり、ストレスの蓄積も膨らみかねなかった。それを避けることができたことになる。ただ、新規感染者数が減らない場合、今後どのような措置をとるかは未知数だ。

長期にわたる不要不急の外出自粛は、子どもだけでなく、親にもストレスが及ぶ。そのため、家庭内でのストレスが溜まりやすい。警察庁によると、DV事件も増加した。DVが増えるということは、配偶者間暴力から派生して、子どもへの身体的虐待(暴力)や子どもへの心理的虐待(面前DV)が増える可能性も秘めている。

地域差があるのは産業構造の違いからか

地域差も考慮すべきだろう。都道府県で自殺件数のピークが違っている。30歳未満で見てみると、例えば、大阪と愛知は2020年8月、宮城と東京、福岡は9月、北海道は10月、広島は11月がもっとも多い。8月は全体として自殺者は多い。

7月以降、著名人が複数、自殺した。著名人が自殺したとき、過度に繰り返したり、センセーショナルな報道などがされると、一時的に自殺が増えると言われている。これは「ウェルテル効果」と呼ばれるが、地域差があることを考えれば、それだけで説明しきれない。産業構造が違っているからだと思われる。

若年層への細やかな配慮が必要

今後は、学校内や家庭内のストレスからメンタルヘルスが悪化し、自傷行為や自殺企図に向かうことが心配される。そのため、子どもたちのSOSを受けとめるための相談体制を整備、充実する必要がある。

厚生労働省は、2017年に起きた座間市男女9人殺害事件で、白石隆浩死刑囚と被害者がTwitterでつながったことから、SNS相談事業を開始し、NPOなどに運営を委託している。コロナ禍の影響からか、アクセスが増えているという。しかし、アクセス数のうち、実際相談できている比率は多くはない。また、「死にたい」と思ったり、誰かと繋がりたい時間帯は深夜や早朝だったりする。こうした若年層の声をいかに聞くか、細やかな対応が求められる。

【悩みを抱えた時の相談窓口】

「日本いのちの電話」
▽ナビダイヤル「0570-783-556」午前10時~午後10時
▽フリーダイヤル「0120-783-556」
毎日:午後4時~午後9時、毎月10日:午前8時~翌日午前8時
東京自殺防止センター(電話相談可能)https://www.befrienders-jpn.org

(渋井 哲也)

渋井 哲也

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