HRキング独走中の大谷翔平かゲレーロJr.か...熾烈なMVP争いに米メディアが論争合戦

HRキング独走中の大谷翔平かゲレーロJr.か...熾烈なMVP争いに米メディアが論争合戦

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  • 更新日:2021/07/22
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エンゼルスの大谷翔平(写真/gettyimages)

MLBオールスターゲームから1週間が過ぎ、遂にシーズン後半戦が始まった。現地では引き続きエンゼルスの大谷翔平が話題の中心にいる。大谷に関する後半戦の話題といえば、なんといってもMVP争いだろう。

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大谷は7月18日(現地時間:以下同)に本拠地で行われたマリナーズ戦で第34号本塁打を放った。その前日の試合では珍しく5打数無安打4三振と、オールスターでの疲労も懸念されたが、この一発で現地の不安を一掃した。

6月30日にホームラン争いの単独トップに躍り出て以降、両リーグトップを突っ走る大谷。日本人初となる本塁打王の期待もかかる中、現地のメディアでもタイトル予想合戦が再び活発になっている。というのも、本塁打数で現在ア・リーグ2位にいるブルージェイズのウラジミール・ゲレーロJr.が、後半戦開始直後から3本塁打を放つなどの猛追でリーグを盛り上げているからだ。

オールスターゲーム前の7月3日に『MLB.com』が掲載したMVP予想記事では大谷は断トツの一番人気であったものの、ここ最近はゲレーロJr.にその人気が傾き始めている。

7月16日に『ヤフー・スポーツ』が報じた記事によれば、MVP予想のオッズで大谷の人気が落ち始め、反対にゲレーロJr.の人気が上がっていると述べられており、大手スポーツメディアの『スポーツ・イラストレイテッド』も19日の記事で、三冠王獲得のチャンスがあるゲレーロJr.の方がMVP争いでも優勢だと予想する。

ゲレーロJr.は19日現在、打率と打点で両リーグトップという成績を残している。大谷は打点こそ74打点とゲレーロJr.に次ぐ2位だが、打率では両リーグで38位の位置にいる。さらに詳しいデータを見ても、ゲレーロJr.はOBP(出塁率)とOPS(出塁率と長打率を足し合わせた値)で大谷よりも若干上にいる。このまま順調にゲレーロJr.が優秀な打撃成績を残すことができれば、MVP獲得は決して難しくないというのが同紙の予想だ。しかもゲレーロJr.は今年のオールスターゲームでMVPを獲得している。純粋に“打者”としてみれば、ゲレーロJr.の方が全体的に優秀だという意見が現地で出てきているようだ。

とはいえ、大谷がMVPを獲得する可能性が全くないというわけではない。打率の問題で打者三冠は難しいかもしれないが、先述の通り、大谷は現在も本塁打ではトップ、打点では両リーグ2位という好位置につけている。つまり、逆にいえば大谷が打者タイトル二冠を獲得する可能性もある。しかも、大谷は二刀流として投手も担っており、選手としての能力をみればゲレーロJr.にはないものを持っている。そして、この能力は現地でも十分に考慮されている。

6月30日にエンゼルスの地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』も「大谷がMVP予想で好かれる5つの理由」という記事を掲載し、大谷のMVP獲得のカギとなる5つの能力を次のように紹介している。

まずは大谷の打撃角度だ。大谷は「バレルゾーン」と呼ばれる「打者が打球を長打、またはホームランにできる確率がもっとも高い速度と角度」の中でボールを捉える能力が非常に高い。この能力はリーグでもトップクラスで、引き続きホームランや長打を打つことができれば、MVP選考でも優位に立てると主張されている。

さらに、ボールを見極める力の向上もプラスになっている。今季は、昨季以前に苦手としていた外角のコースに手を出すことが極端に減り、その結果、出塁率が.364(6月30日時点)に向上したと指摘する。出塁率が上がっていけば、ゲレーロJr.の成績を上回ることも可能で、もちろんこれもMVPの選考に良い影響を与える。

もちろん、投手としての活躍も見逃せないと同記事は主張する。まずは制球力の向上だ。投手として本格的な活躍を見せている大谷だが、今季は制球力も安定していると指摘されている。6月30日のヤンキース戦では投球が乱れることもあったが、全体的に見ればフォーシームのコントロールは抜群で、ストライク率も最初の3試合では23%であったのに対し、それ以降は27%に上昇していると述べられている。

さらに武器の多さも魅力だという。大谷はその速球以外にも、多くの変化球を多用している。例えば、伝家の宝刀スプリットでは被打率. 086という記録を残しているし、他にスライダーやカーブ、さらに今季から新たに加わったカットボールという武器もある。これらを最大限活用しており、大谷は投手としても非常に優秀であると同記事は断言している。

そして、最後は走力だ。本塁打の数ばかり注目されているが、大谷は走力でもリーグ上位である。また、今の大谷はシーズン20個以上のペースで盗塁を記録している。大谷を“打者のみ”として見ても、本塁打を量産するパワーだけではなく、優れた走力を持っていることから、大谷の方が優勢ではないかと述べる。

こうした大谷の高い能力から、今季のMVP予想は現地メディアにとって非常に難しいものになっているようだ。もし、最終的に両者の成績で勝負が決まるのであれば、今月末以降その争いはさらに激しくなるだろう。それもゲレーロJr.が所属するブルージェイズが、7月30日から約2年ぶりに本拠地であるカナダのトロントに戻ることが決まっているからだ。

これまでブルージェイズはカナダ政府が敷いた入国制限の影響で、地元に戻ることができなくなっていた。その代わりとして同球団は、昨季から今年7月までホームゲームを全てアメリカ国内にある同球団のキャンプ地やマイナーリーグの球場で実施していた。だが、このほどカナダ政府から例外規定を受けて、ようやく本拠地で試合が開催できるようになった。本拠地の変更で、ゲレーロJr.の本塁打ペースが落ちるかもしれないという懸念もある一方、今のペースが維持されるだろうという予想もある。

それも、ブルージェイズの本拠地ロジャース・センターはメジャーリーグ全球場の中で最も本塁打が出やすい球場とされているからだ。『ESPN』が掲載しているパークファクター(本塁打やヒット、得点など球場ごとの偏りを表す指標)のデータ(2019年版)によれば、平均的な本塁打数を1.0とすれば、ロジャース・センターは1.317であった。これは、大谷が所属するエンゼルスの本拠地の1.081よりも多い。

余談だが、今季ブルージェイズがシーズン前半戦で仮本拠地としていたTDパーク(フロリダ州ダニーデン)は1.456、セーレン・フィールド(ニューヨーク州バッファロー)は1.225で標準よりも高い数値であった。ちなみにエンゼルスの本拠地は1.298で2019年よりも若干は増えている。

話を戻すが、ブルージェイズのカナダ凱旋でもう一つゲレーロJr.にとって追い風になりそうなのは本拠地開催を心待ちにしていたカナダのファンの熱烈な声援だ。前出の『スポーツ・イラストレイテッド』も、「約2年ぶりの凱旋はMVP選考の有権者に強烈な印象を残すかもしれない」という予想をしている。いずれにしてもこのカナダ凱旋がゲレーロJr.になんらかの好影響を与える可能性は大いにありそうだ。

今季のMVPは大谷になるのか、ゲレーロJr.になるのか、もちろん今はまだ分からない。だが、後半戦は両者の激しい争いで大いに盛り上がることは間違いないといえる。今年のメジャーリーグは最後まで見逃せない。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)

澤良憲/YOSHINORI SAWA

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