ジェネシス招待最終日、勝敗を分けたもの【舩越園子コラム】

ジェネシス招待最終日、勝敗を分けたもの【舩越園子コラム】

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  • 更新日:2021/02/22
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キャディのジョー(左)とホーマ(右)|撮影:GettyImages

タイガー・ウッズ(米国)が大会ホストを務める「ジェネシス招待」は、腰の手術後のウッズ自身がリハビリ途上のためプレーできず、活躍が期待されていたローリー・マキロイ(北アイルランド)、ジャスティン・トーマス、ブライソン・デシャンボー(米国)、それに松山英樹らは、こぞって予選落ち。そして3日目は強風によるサスペンデッドというマザーネイチャーの悪戯もあったが、最終日は実に面白い展開で目が離せなかった。

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初日から単独首位を独走していたのは24歳のサム・バーンズ(米国)だった。バーンズと言えば、思い出されるのは2018年「ホンダクラシック」最終日のことだ。ビデオゲームの中でしか見たことがなかったウッズと初めて同組で回ったバーンズは、臆することなく「68」をマークし、戦線復帰したばかりで「70」を喫したウッズの肩を、まるでベテランが新人の健闘を讃えるかのようにポンポンと叩いていた。

そんな自信家のバーンズが首位を独走していたのだから、そのまま逃げ切って初優勝を挙げるというのは最もシンプルなシナリオだった。大会ホストのウッズも「彼はとても安定したプレーをしている」と絶賛していた。

しかし、シナリオ通りにはいかないのがゴルフだ。初優勝への期待と意識は、そこへ近づけば近づくほど強まり、手元を狂わせるものなのだろう。バーンズは前半4バーディを奪いながら、後半は12番、14番、15番で続けざまにボギーを喫し、17番を奪い返してプレーオフ進出に望みをつないだが、18番はパーに終わり、万事休した。

優勝争いは30歳のマックス・ホーマ(米国)と31歳のトニー・フィナウ(米国)の2人によるサドンデス・プレーオフへもつれ込んだ。どちらも、すでに米ツアー1勝を挙げているが、初優勝ではなく2勝目であっても、その期待と意識は、やっぱり手元を狂わせる。

この日、一気に7つスコアを伸ばしたフィナウは絶好調だった。しかし、2016年の「プエルトリコ・オープン」で初優勝を挙げて以来、トップ10入りが37回、トップ5入りが20回ありながら、すべて惜敗し、今年1月も2試合連続で惜敗したばかりのフィナウにとって、優勝の二文字は陽炎(かげろう)のような存在と化していた。その意識が邪魔をしたのだろう。プレーオフでは、肝心のパットを沈めることができず、またしても惜敗に終わった。

勝利への意識で手元が狂っていたのは、ホーマも同じだった。72ホール目で1メートルのバーディパットを沈めていたら、その時点で優勝だったが、わずかな力みでカップに蹴られ、プレーオフにもつれ込んだ。
その1ホール目の10番。3番ウッドのティショットは運悪くグリーン左の立木の根本にくっついて止まったが、フェースを被せながら打ってピン3メートルへ寄せたチップショットは、あまりにも見事だった。

あの窮地でパーを拾い、生き残ったことは、あのチップショットの狙い方と打ち方をその場でアドバイスしたキャディのジョー・グレイナーのおかげだった。「ありがとう、ジョー」と感謝するホーマの声に力が漲った。「ゴルフは二人三脚」とは、こういう戦い方のことを指すのだと思った。

カリフォルニアで生まれ育ったホーマは、幼いころから毎年のようにリビエラを訪れ、ウッズのプレーを眺めてきたそうだ。6歳のころ、近所のゴルフ場で出会い、仲良くなったゴルフ友だちが、現在の相棒キャディのグレイナーだ。「ジョーは、いつも僕をポジティブにしてくれる」という言葉通り、最終日のホーマはグレイナーと言葉を交わすたびに、ほっとした表情になり、笑顔さえ見せていた。

最終日の朝、ホーマの妻は「ミスしても、ミスした自分をすぐに許してあげてね」と声をかけた。だからこの日、ホーマは何があっても「OK!OK!」と自分に言い聞かせ続けながら戦っていた。

初優勝、あるいは2勝目、いやいや何勝目であっても、プレッシャーを感じて手元が狂うのは誰もが同じであろう。勝つか負けるかは紙一重。だが、最後の最後に勝敗を分けるものは、往々にしてゴルフの技術ではない別のものだ。

故郷カリフォルニアの「一番好きなコース」で臨んだ優勝争い。絶対的な信頼を置くキャディや妻からの助言がホーマの最大の力になった。2019年「ウェルズ・ファーゴ選手権」に続き、2年ぶりに上げた通算2勝目。

リビエラはホーマにとって「生涯忘れないコース」になった。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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