◇第95回選抜高校野球大会第1日・1回戦 東北1-3山梨学院(2023年3月18日 甲子園)

昨年末、響が自宅に戻った際の姉妹ツーショット
【素顔で君にアイラブユー】声出し応援が4年ぶりに戻った聖地。連載「素顔で君にアイラブユー」では球児を支え、声援を送る人々を紹介する。第1回は東北・佐藤響主将の双子の姉で、クラーク仙台女子硬式野球部で投手を務める衣吹(いぶき)さん(17)。懸命にプレーした弟と、野球に懸ける思いは同じだ。
甲子園から約630キロ離れた仙台市。自宅のテレビで観戦した東北・佐藤響主将の双子の姉、衣吹さんのスマホにメッセージが届いた。
「今度は(衣吹さんが)頑張ってよ」
敗戦の悔しさを抑え、姉を激励する文面に「本当によくやったよ」とつぶやいた。衣吹さんは、クラーク仙台女子硬式野球部のエース格。23日開幕の全国高校女子選抜大会出場を控え、現地での応援は控えた。朝練を終えて急いで帰宅。弟のプレーを見守りながら、父・俊幸さん(45)、母・東美(とみ)さん(47)が応援のために現地へ出発する際に伝えた言葉を思い出した。
「響は甲子園の土を踏んだので、私も夏の(女子硬式野球)選手権で決勝に行って甲子園のマウンドを踏みたい」
弟とは仙台市の福岡小1年の時に、一緒に福岡リトルモンスターズで野球を始めた。お互いにユニホームを泥だらけにしながら、競うようにエースの座を争った。当初はけんかが絶えなかったが、野球の奥深さを知るにつれキャッチボールなどで高め合ってきた。中学からは別々のクラブチームに所属したが、野球への思いはいつも同じ。12日には徹夜でつくった部員とスタッフへのお守りと、弟用に主将の「主」の文字を施した特製お守りを手渡し、聖地での活躍を祈った。
高校進学後、弟とは「両親に苦労をかけている分、結果で恩返ししよう」と誓い合った。今春、お互いにかなえた全国大会出場。夏の聖地が、2人の次の目標になる。(伊藤 幸男)