『賢い医師生活』最終回直前のS2第11話 5人の医師の専門分野に彼らの問題と対処法が浮上

『賢い医師生活』最終回直前のS2第11話 5人の医師の専門分野に彼らの問題と対処法が浮上

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  • 更新日:2021/09/16
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『賢い医師生活』(tvN公式サイトより)

シーズン・フィナーレまで残すところ2話となった『賢い医師生活』第11話は、前シーズンから積み重ねてきたものを大きな触媒によって変化させる“動”のエピソード。S1から想いを募らせていた2組のカップルが関係を前進させ、大団円に向かっているように思えるが……。

参考:『賢い医師生活』S2第10話 2度目の配信休止前のクリフハンガーとファンサービス

バンド演奏曲の「Running in the Sky(空を駆ける)」は、韓国の人気シンガーソングライター、イ・ジョクが2003年に発表した楽曲。

イ・ジョクは、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』の使用楽曲の中でも印象に残る曲「Don’t Worry(心配しないで、君)」をカバーしていたアーティストで、ドラマ内で彼の楽曲をバンドで演奏するという粋な恩返しになっている。

大病院に勤める優秀な医師たちと患者や家族との交流を丁寧に描いたS1に対し、S2では問診や施術の経過がエピソードをまたいで描かれているため、医師たちの業務よりもプライベートの問題がクローズアップされがちな印象を受ける。第3話のレビューで、5人を表す“5無”は他者の目からみた断片的情報に基づくもので、15話分の時間を共にした視聴者はそれらがミスリードだと見抜いていると書いた(参考:『賢い医師生活』シーズン2第3話、転換点となる『刑務所のルールブック』からのカメオ出演)。

それから7話分の時間が経過し、担当患者への対応から5人を悩ませる問題が浮かび上がり、数ある医療専科から彼らの専門が設定された理由が推察できる。

このエピソードでの例を挙げると、脳神経外科医ソンファ(チョン・ミド)の患者たちの施術に、彼女をずっと蝕んでいた問題と対処法が暗喩される。第6話でバイク事故により硬膜下出血を起こした女性は、手術後もリハビリを続けている。患者の脳は状況を把握しているが、言葉で発することができない。リハビリ中の患者のフラストレーションは、ここ数話のソンファが怒りっぽいとの指摘と重なり、言葉を絞り出すように歪める表情は、青春時代の傷のリハビリを見るようだ。もう一人、髄膜腫の疑いのある患者は、検査で眼動脈瘤が発見される。腫瘍除去手術は眼動脈を傷つけ失明の恐れがあるため、患者は手術を拒む。ソンファやチーフレジデントのソクミンが患者と家族に説明する病状と治療方法を、動脈瘤を恋愛、眼動脈を友情と置き換えて聞くと、S2でずっとソンファを躊躇させている問題がわかってくる。動脈瘤を放置するのは頭に時限爆弾を抱えている状態で、他の迂回路が発達していれば、もしも出血し眼動脈を塞いだとしても視力を失わずに済む。

同じように、ソッキョン(キム・デミョン)が対応する心拍動異常を起こした妊婦の分娩では、胎児の首にへその緒が三重に巻きついて産まれる。ソッキョンは妊婦に「がんばって5回力んでみましょう」と励ます。ソッキョンの専門が産婦人科に設定されている理由がこのシーンから想像できる。産婦人科医は、母体と胎児を切り離し、個別の生命体として誕生させる職種。強烈な個性を持つ母、亡くなった妹、元妻の三重の首枷とともに生きていたソッキョンは、ミナの4度の告白によって独立した人間として立つことができるようになり、最後の1回は自分で言葉にする。

この視点で見ると、小児科医のジョンウォン(ユ・ヨンソク)は、家庭内暴力を働く父親によって失われてしまったギョウルの子供時代を守るように、抜糸を嫌がる子供の自主性を尊重し、親ではなく子供自身の口から症状を説明させるよう促す。ジョンウォンが病気を治療する子供たちにかける言葉は、ギョウルのように心や体を傷つけられた人々へのメッセージとなっている。生体移植である肝移植の名医イクジュン(チョ・ジョンソク)は、彼の周りの人々の“肝”を移植するように仲を取り持つ。第5話で肝移植手術を施した親子は、第8話で心内膜炎を発症し心臓外科医のジュンワン(チョン・ギョンホ)の患者として病院に戻ってくる。まさに、イクジュンの機転で再会したジュンワンとイクスンの今後が、ジュンワンの手に託されているように。そして、第1話から継続して登場していた心臓疾患を持つ子供たちの補助人工心臓には限度があると、心臓移植を勧めている。これは、遠距離恋愛中のジュンワンとイクスンが文明の機器・携帯電話でいくらコミュニケーションを重ねても、補助でしかなかったことを表しているようだ。S1第3話で、ジュンワンが胸部外科を目指した理由が描かれていたが、心臓外科医の手には、止まった心臓を再び動かす力が宿っている。

また、S2ではインターンやレジデントなど後輩の成長に多くの時間が割かれた。S1のみの出演と伝えられていたアン・チホン役のキム・ジュンハンが、脳神経外科の同期としてカメオ出演している。アン・チホンはS1を通して苦い役回りだったが、「仲間がいたからがんばれた」というドラマ全体のテーマにも通じるようなシーンでの再登場は、物語が結末に向かうにあたり必要な贖罪だったのかもしれない。

S1で患者への不誠実な説明をソンファに叱られたソクミンは、手術を拒む患者に対して丁寧に時間をかけて説得する。ソンファは彼を「完成形ではなく、進行形なところが長所。努力する姿がすてき」と褒める。S1で想いを告げたミナとイクジュンは、それぞれの相手が願う方法で最善の関係を築く努力を惜しまなかった。S1第8話でソッキョンが「責任感のある人が好きだ」と言ったことに対し、ミナは失敗しながらも誠実に仕事と向き合う。このエピソードで、S1第8話同様に同期のミョン先生が職務を放って消えてしまうが、ミナは最善を尽くし対処する。第1話でソンファに「告白しないで」と言われたイクジュンは、友情の一線を超えないように彼女を支え励まし最善を尽くしてきた。

シーズン2第11話までのドラマ内カレンダーは、2019年12月から2021年5月の18カ月間。そして、2020年3月の韓国での放送開始から18カ月。『賢い医師生活』と同じ監督・脚本による『応答せよ1994』の第13話のタイトルは「1万時間の法則」で、ローマは1日にして成らずと同義の「1日3時間10年間、1万時間を練習・勉強・努力に費やした人が栄光を掴む」という法則を鍵に物語が進む。「努力は目に見えない、見えるのは結果だけだ。だから他人の成功は天賦の才もしくは幸運として片付けられる」のナレーションは、家族や友人さえも“遊んでばかりいるのに優秀”と決めつけるイクジュンのことを表しているようだ。もっとも、視聴者はこれもミスリードだと知っている。第11話でS1とは逆告白を受けるミナとイクジュンが、想いを告げた頃から平均睡眠時間約7時間を除いた1日17時間を最善を尽くす人間として生きると約1万時間となる。

『応答せよ1994』でこの法則を体現する野球選手のチルボンは、今作ではジョンウォン役のユ・ヨンソクが演じ、ニューヨーク・ヤンキースのヨギ・ベラの言葉を引用し結んでいる。「終わるまではまだ、終わっていない」。

次週の最終回でユルジェ病院の人々は大団円を迎えるのだろうか。それとも、シン・ウォンホ監督と脚本家のイ・ウジョンが作ってきた過去のドラマのように、ビタースイートな後味を残すのだろうか。医師たちは「施術は患者の選択です。もし、自分の家族だとしたら……」と繰り返し告げてきた。ドラマの受け取り方も、それぞれに託されている。韓国の一部メディアでは、最終回は異例の長時間放送になるという報道がある。

『賢い医師生活』第12回は、9月16日深夜配信予定。(リアルサウンド編集部)

平井伊都子

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