『すずめの戸締まり』で「けんかをやめて」が再注目の河合奈保子、支持される納得の理由を“奈保子博士”が熱弁!

『すずめの戸締まり』で「けんかをやめて」が再注目の河合奈保子、支持される納得の理由を“奈保子博士”が熱弁!

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  • 更新日:2022/12/01
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シャンソン歌手・ソワレ。河合奈保子への愛と知識量で右に出る者はいない 撮影/近藤陽介

What's「未来へつなぐ昭和ポップス」?今、若い世代からも、また海外からも熱い注目を浴びている昭和ポップス。昨今では、音楽を聴く手段としてサブスクリプションサービス(以下「サブスク」)がメインで使われているが、必ずしも当時ヒットした楽曲だけが大量に再生されているわけではなく、配信を通して新たなヒットが生まれていることも少なくない。

今回は、'80年代アイドルとしてシングルのみならず、アルバムでも20作前後のTOP10級ヒットを飛ばした​河合奈保子に注目。抜群のルックスやプロポーション、さらには歌唱力にも定評のあった奈保子だが、アイドル後期には作曲もこなすシンガーソングライター、ミュージカル女優としての才能も開花させた。奈保子本人は現在、オーストラリア在住とのことなので、今回はシャンソン歌手のソワレに登場してもらった。

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ソワレは歌手、イベントプロデューサーでありながら新宿エリアで数店舗の飲食店を経営、さらには元宝塚歌劇団の歌手・越路吹雪の作品解説や監修も手がけるなど多岐にわたって活躍しているが、実は、自身で『河合奈保子トリビュートライブ』も行えるほど、大の“奈保子博士”としても有名なのだ。なお、インタビューには'00年代からの数多くの河合奈保子作品を制作してきた日本コロムビアの衛藤邦夫ディレクターにもご同席いただいた。

ちなみに、ソワレ自身はレコードとYouTubeが中心で、まだ音楽ストリーミングサービスは使いこなしていないものの、店のスタッフがプレイリストを作っているのを面白く感じているという。まずは、ソワレが奈保子の楽曲に出合ったきっかけから語ってもらった。(以下、ソワレによるコメントは「ソ」、衛藤氏によるコメントは「衛」マークを付記)

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愛らしいルックスと確かな歌唱力で人気を博した河合奈保子('82年)

小学生のソワレ少年を骨抜きに! 河合奈保子が“推し”になった瞬間とは

ソ「ひと言でいえば、ひと目惚れですね。うちは父が音楽業界にいて、(仕事上、非売品のレコードをもらえたりするので)家には(奈保子所属の)日本コロムビアじゃないメーカーのレコードがどっさりあったのです。八百屋さんが野菜を買わないように、レコードは買わないものとして育ってきました。

だから、テレビで奈保子さんを見たときに“この人は、きっとすごいぞ”と思いつつも、まるで隠れキリシタンのようにこっそり注目していたのですが、忘れもしない1981年の8月! 人気音楽番組『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)で『ムーンライト・キッス』を歌っている奈保子さんを見た瞬間に、彼女のレコードを買おうと決めました。当時、まだ小学生だったから、“レコードなんて買うもんじゃないよ”という親の言いつけを守っていたのですが、“あぁ、これはもうダメだ……”って、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。

自分でもおかしいんですけど、今でも新曲を初めて聴いた番組のことをよく覚えているんです。『愛をください』は『ヤングおー!おー!』(毎日放送系)だったり、『エスカレーション』は『レッツGOアイドル』(テレビ東京系)だったり……。シングルでいちばん好きな曲は、やっぱり『唇のプライバシー』ですね!」

早くも興奮冷めやらぬソワレとともに、ここからは令和のストリーミング人気曲を見ていきたい。

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人気映画への登場で「けんかをやめて」が「スマイル・フォー・ミー」をリード

Spotify第1位は、「けんかをやめて」。第2位は「スマイル・フォー・ミー」と、この2作は毎月のようにデッドヒートを繰り返していたが、11月に入って「けんかをやめて」が急増中だ。

衛「これは、長編アニメーション映画『すずめの戸締り』の中で使ってもらっている影響ですね。新海誠監督が、“このシーンには河合奈保子さんの『けんかをやめて』がピッタリだね”ということで使用されることになったようです。それで、このタイミングで、プレイリスト上に『けんかをやめて』の当時のジャケットが表示されるように改めて配信しました」(※それまでは、アルバム『ゴールデン☆アイドル』や『ゴールデン☆ベスト』の収録曲としてアルバムジャケットが表示されていた)

この公開を記念したプレイリスト『新海誠 音楽の扉』の効果によって、冒頭のランキング表を作った2週間後(11月中旬)には再生数が5万回も増えており、年内には奈保子初のSpotify100万回再生も突破しそうだ。

ソ「『けんかをやめて』は初めて聴いたとき、“こう来たか!”って思いましたね。振付もないし、歌詞の内容があまりに個性的で……。でも、奈保子さんが“私のために争わないで”と歌っているからこそ、フェミニンな曲に仕上がって人気になったんだと思います」

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「けんかをやめて」のジャケット写真。初々しい奈保子が自分を取り合う2人の男性に向けた歌詞を歌い上げ、話題をさらった

確かに、作詞・作曲を手がけた竹内まりや本人も“奈保子ちゃんが歌うとすごく可愛いのに、私が歌うと、ひどく傲慢(ごうまん)な女性に聞こえるのはなぜだ?(笑)”とコメントするほど、彼女の表現力を高く評価している。「スマイル・フォー・ミー」はどうだろうか。

ソ「こちらは最初から大好きでした。この曲以前に発売されたアルバムの中には、1stアルバム『LOVE』に収録された表題曲など、元気ハツラツな爽やかポップスがあったのですが、シングルでは、そういう展開の曲がなかった。歌詞も、スマイルという言葉が奈保子さんにピッタリですね! オリコンの週間ランキングで一気に17位から5位に上がったのも、うれしかったな~。ほかにも、雑誌『オリコン・ウィークリー』で最初にカラーの表紙号になったのは奈保子さんだとか、スタンドマイクが2種類あったとか、この歌はネタが尽きないですね」

ちなみに初登場17位となったのは、月曜日発売だったため、前週の週末からフライングで仕入れていた店舗の売り上げが前週チャートに約1.2万枚、漏れてしまったことによる。もし、この売り上げを同じ月曜日発売の中森明菜「DESIRE」や少年隊「デカメロン伝説」のように1週間内に収めていたとしたら、初動売上は4.5万枚で週間3位と、その2年後の「エスカレーション」で達成した順位が、早々に実現していたかもしれない。それほど最初から大きく支持されたのだ。

いろいろな意味で話題をかっさらった「エスカレーション」が人々を魅了するワケ

そして、Spotify第3位は、当時のレコード売り上げ最大のシングル「エスカレーション」。これまで奈保子作品の解説も手がけてきたソワレだが、本作については“ファンは喧々諤々(けんけんがくがく)”と語っている。その背景を尋ねてみた。

ソ「理由としては……髪型をバッサリと短くしたイメージチェンジによるところが大きいですね。初期からのファンの方は当然、保守的になるでしょうから、ご自身の河合奈保子像がそれぞれにあって、ショックだったんじゃないでしょうか。ひとつ前のシングル『ストロー・タッチの恋』が、“青空が回るほど抱き上げるなんて無理だろ!”とか、“片方のヒールを渚に隠したら熱くてたまらないだろ!”とか、歌詞へのツッコミどころ満載のドリーミーな曲だったのに、今作は歌詞も音もビジュアルも刺激的で、ことごとくイメージを覆しています。だから、まさかこんなに売れるとは思っていませんでした(笑)! オリコンだと34万9000枚でしたからね」

衛「ちょうどこのころ、(早見)優ちゃんの『夏色のナンシー』、KYON2(小泉今日子)の『まっ赤な女の子』、そして奈保子の『エスカレーション』と、筒美京平作品で個々のステップアップを図ったものが、時代の波に乗ったんでしょうね」

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衛藤ディレクター(写真左)の分析に、ソワレも興味津々 撮影/近藤陽介

とはいえ、そういったインパクト重視のいわゆる“出落ち型”ヒット曲は、時が過ぎるとさほど支持されないものも多い中で、Spotifyでも第3位と健闘している。つまり「エスカレーション」は、ちゃんと“記録にも記憶にも残るヒット曲”になっているのだ。

ソ「ただ、'15年のファンの方による投票型ベストアルバム『私が好きな河合奈保子』では9位ですし、コアなファンの間では、今でもそこまで人気が高くないのかも……。でも、改めて考えてみると、有線放送では『けんかをやめて』が最高12位だったところ、『エスカレーション』で9位と、初めてベストテン入りしているんですよね。しかも、発売から2か月もたってからランクイン。当時の女性歌手の有線ヒットは、演歌か聖子、明菜、ときどき(柏原)芳恵くらいのイメージだったので、本当にビックリでした。それを考えると、(コアファンではなく)大衆的に支持されるチカラが根底にあるんでしょうね!」

衛「ここまでの3曲が50万回再生を大きく上回っていて、ほかの楽曲と広がり方がまったく違うのがわかりますね」

ソ「ラジオ番組『決定!全日本歌謡選抜(※)』でいうところの、第1グループですね!  “第1グループは、けんか、スマイル、エスカレーションでした~♪”なーんて(笑)」(※ '76年~'90年に文化放送系列で放送されていた伝説の大型リクエスト番組)

「唇のプライバシー」は、Spotify4位に納得、ソワレ的には1位にしたい名曲

そして、第2グループ(?)は「唇のプライバシー」「デビュー~Fly Me To Love」「大きな森の小さなお家」の3曲。ここまでが10万回再生を突破している。「デビュー」は世界的なシティポップ・ブームの第一人者でもある林哲司の作曲、「大きな森の~」は、デビュー曲としてプレイリスト的に有利、とそれぞれ理由が考えられるのに対し、「唇のプライバシー」は当時、売り上げ18番目で、後年には伝わりづらいノンタイアップ曲。その本作がここまで上位なのは、かなり意外にも感じられる。

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「唇のプライバシー」のジャケット写真。初期よりも奈保子の髪がぐっと短くなり、大人の色気を感じさせる

ソ「これは最初、発売1か月ほど前の“よみうりEAST”(当時恒例となっていた、『よみうりランドオープンシアターEAST』で行われた奈保子のバースデー・ライブ)で聴いたのですが、もう絶対にヒットする!! と思いました。『エスカレーション』で(挑発的な歌詞への)免疫もついていたし、振付も左右だけでなく、とうとう前後に奈保子さんが動き出して、ホントにカッコよかったです! 曲もスピード感があって、歌詞は相手を挑発しつつ、切ない歌にもなっていて多面性がありますよね。だから、オリコンで(週間順位)4位、4位、7位と来て、一気に20位まで落っこちたときは本当にショックでした」

衛「でも、近年のベスト盤で俺も選曲を考えるんだけど、『唇のプライバシー』のほうが、(それよりシングルセールスの多い)『UNバランス』や『コントロール』よりも印象に残っている気がするなぁ。『紅白歌合戦』での歌唱や『日本レコード大賞』の金賞受賞など、年末にたくさん聴いたからかな?」

ソ「鷺巣詩郎さんのアレンジが光っていて、音のブレイクも効果的に使っているので、ノリやすくて、最近のリスナーも好きな感じだと思いますね。だから、当時の18位よりも、Spotifyでの4位のほうが正当な順位だと思います! ギャランティーク和恵ちゃん(音楽ユニット『星屑スキャット』のメンバー)も、イイ曲だからとライブで歌っていますから、さまざまなフックがあるのでしょうね。それと、出だしのEVEによるコーラス部分は、雑誌『明星』の歌本では“Pain in Lips”と書かれていますが、ライバル誌『平凡』の歌本や奈保子さん自身の解説では“Pretty Lips”になっているので、当時は編集者が耳コピしたんじゃないかと」

ちなみに、ソワレが'04年に出演したテレビ番組『タモリ倶楽部』の特集『“河合奈保子”振り付け祭りの特訓現場に潜入!!』(笑)という放送回で、ソワレは「唇のプライバシー」を1位にしていた。この理由も改めて尋ねてみた。

ソ「振りとしては『ジェラス・トレイン』のほうが面白かったのですが、インパクトの大きさもあって『唇のプライバシー』を1位にしました。そういえば、番組からテレビ的になじみのある『けんかをやめて』をベストテンに入れてくれ、と言われて、渋々『涙のハリウッド』と入れ替えました(笑)」

林哲司作品が大きくランクアップ! デビュー曲はカップリング曲にも注目

続いてSpotify第5位は、初のシングルチャート1位(累計売り上げでは14番目)となった「デビュー~Fly Me To Love」で、レコード売り上げより9ランクアップ。林哲司作品は、ほかにも17位の「ラヴェンダー・リップス」が4ランクアップ、「涙のハリウッド」も5ランクアップと、総じて当時のレコード売り上げよりも今のストリーミングのほうが相対的に人気となっている。奈保子×林哲司作品の聴きどころを語ってもらった。

ソ「僕は、アルバム『LOVE』の表題曲(Spotify41位)や、アルバム『あるばむ』収録の『砂の傷あと』(Spotify36位)など、林哲司メロディーならではの爽快感が奈保子さんにピッタリだと思います。そして、サビのロングトーンも、奈保子さんのいい歌唱法を引き出してくださっていますね。

さて、ここで問題です! 林哲司さんといえば、菊池桃子楽曲の作曲者としても有名で、奈保子さんも彼女を妹のように可愛がっていたというエピソードがありますが、奈保子さんが桃子ちゃんの大学入学祝いにプレゼントしたものはなんでしょう? ヒントは、桃子ちゃんが言っていた“毎日、奈保子さんにいただいた〇〇で学校に通っています!”というコメントです」

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奈保子への愛がほとばしり、ついにはクイズまで出してくれたソワレ 撮影/近藤陽介

正解は次回の記事に掲載するので、検索せずに自由に考えていただきたい(笑)。そして、第6位はデビュー曲の「大きな森の小さなお家」。デビュー曲ということもあり、ベストアルバムの1曲目に収録されていることに加え、数々の奈保子関連プレイリストで上方に置かれることも多く、ストリーミングでは上から順番に再生する人も多いため、やや有利な再生回数となっている。

前述した'15年のファン投票ベスト『私が好きな河合奈保子』で本作は、シングル部門6位。対して、そのカップリングである「ハリケーン・キッド」は、カップリング&アルバム部門で2位。コアファンの中ではA面候補と言われていただけあって、この曲の人気もかなり高い。

ソ「僕自身も『ハリケーン・キッド』派ですが、もしこちらがA面だったら、とても強気な女の子と見られてしまったかもしれないし、その後のことを考えると、ここで『大きな森の小さなお家』をA面にしたのが大正解だったと思います」

ちなみに「ハリケーン・キッド」は、Spotifyでは現時点で48位と、まだ多くは聴かれていない“隠れ名曲”扱いだ。今後、ソワレやコアファンの方の推薦効果でどこまで伸びるのかにも注目したい。

それにしても、ここまでの6曲でも、作詞は竹内まりや、竜真知子、売野雅勇、三浦徳子、作曲は竹内まりや、馬飼野康二、筒美京平、林哲司、編曲も清水信之、大村雅朗、鷺巣詩郎、馬飼野康二と、作家陣の幅広さに驚かされる。

ソ「奈保子さんが一般的なアイドルと大きく異なるのは、その真ん中に“歌唱力”という持ち味がドーンとあって、どれを歌ってもうまいことなんです。当時は、若かったことやビジュアル面がすばらしすぎて、そこにスポットが当たらなかったけれど、今こうして徐々に幅広く聴かれるようになったのはうれしいですね」

この幅広さを3~5分間の歌物語として1曲ごとにフィクションととらえて聴くか、ひとつのアイドルイメージを強く抱いて聴くか。その聴き方の違いからも、ファンの意見は大きく分かれそうだが、ソワレが語るように、歌唱力に集中して聴けば、ひとりの歌手の成長物語として大いに楽しめそうだ。

ソワレの余りの熱弁から、たった6曲で文字数を大幅にオーバーしているが(笑)、続くインタビュー第2弾では、河合奈保子の自作曲やアルバムオリジナル曲について、ソワレや衛藤氏とともに考察してみたい。

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Spotifyでの河合奈保子アーティストページも要チェック!(数字は2022年11月23日現在の累計再生回数) ※画像をクリックするとこの写真と同じページにジャンプします

(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)

【PROFILE】
ソワレ ◎シャンソン歌手。シャンソンに精通しCD作品などの監修やシャンソン歌手の育成に取り組むかたわら、イベントプロデュースや新宿界隈の飲食店のオーナーも務める。越路吹雪に多大なる影響を受け、作品解説や監修も手がけている。また、河合奈保子の大ファンでトリビュートライブを行うほか、ベスト盤『しんぐる・これくしょん』の解説、アルバムコンプリートBOX『Naoko Premium』『Naoko Live Premium』『ゴールデン☆ベスト』の制作協力と解説も担当。

【INFORMATION】
・2枚組CD『Masaaki Omura Works〜大村雅朗作品集〜』2022.9/21リリース!
・タワーレコード限定SACD/CD ハイブリッド盤『スカイ・パーク』『サマー・デリカシー』『スターダスト・ガーデン千・年・庭・園― (+1)』『スカーレット(+4)』2022.11/23リリース!
・アナログレコード『COLLECTION Vol.1 1980~1984』『COLLECTION Vol.2 1985~1993』2022.12/3リリース!
・タワーレコード限定SACD/CD ハイブリッド盤『LIVE(+5)』『NAOKO IN CONCERT(+2)』『ブリリアント<レディ奈保子 イン・コンサート>(+2)』『NAOKO THANKSGIVING PARTY (2枚組)』2023.1/25リリース!

臼井孝

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